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『13の理由』の魅力とは?見入ってしまうその魅力を解説

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Netflixオリジナルドラマ『13の理由』。8月にシーズン3が配信されました。2017年にシーズン1が配信されると、内容が話題を呼び、ツイッターで2017年に最もツイートされたドラマとなりました。

ハンナとクレイが中心の原作に対し、ドラマ版ではハンナの周りの人たちや教師、親など様々な立場の心情についてより深くフォーカスされており、より見応えのあるドラマになっています。

今回はドラマの中と現実世界との共通点、様々な多様性の面から『13の理由』大ヒットの理由について探っていきたいと思います。

1. 意図せざる展開の連続

物語は自殺してしまったハンナからクレイ宛へカセットテープが届いたところから始まります。テープを聴くにつれ、ハンナに何が起こったのか露わになっていき、クレイは犯人を探し出そうとしますが、ブライス以外、犯人は誰でもないことに気がつきます。ハンナに起こったことの多くは意図しないイジメです。

高校のイケメン男子とデートに行ったところ、撮られた写真を悪友によってSNSにアップされてしまった、体について書かれた、など人によっては気にしないかもしれないような些細なことがきっかけになったということがわかります。

特に象徴的なのが、お尻についてのリストです。ハンナは「最高のケツ」で、ジェシカは「最低のケツ」でした。アレックスがジェシカに振り向いてもらうため書いたのですが、結果的にジェシカの怒りの矛先はハンナに向いてしまいます。

別の思惑があったのに、勘違いで全く別のことに受け取られてしまう恐ろしさもありますが、一度書いてしまった、言ってしまったことは取り消せないのです。



2. 盲目の恐ろしさ

クレイはハンナのことを真に受けるあまり、だんだんと物事を信じられなくなっていきます。物事を考えるとき、私たちは常に公平、中立でなければなりません。しかし、クレイはテープを完全に信じきっています。テープはハンナのもの、つまり100%主観的なものなのです。しかも、死んでしまっているので真偽は永遠にわかりません。たとえ、嘘をついていてもわからないのです。また、テープなので自分にとって都合の悪いことは隠している恐れがあるかもしれません。

「テープが本当に正しいと思う?」

クレイはそう周りの人たちから問いかけられます。そこで私たちも思い始めるのです。一体本当は何があったのだろうか?もしかしたら、クレイがハンナに死の決定打を与えてしまったのだろうか?と。

3. リアルすぎる死の瞬間

シーズン1の最終話ではハンナが自殺を実行し、命が消えるまでのシーンが克明に描かれました。見ていて痛々しく、気分が悪くなるのですが、浴槽で自分の手首を切り血まみれになっていく様子や、母親が彼女を発見した時の苦しみの様子など一連のシーンを見せることで自殺を否定する姿勢を表していました。

しかし、物議を醸しこのシーンを見たことで自殺してしまったという人も現れたため、2019年9月現在、自殺の瞬間は編集されています。編集されてしまいましたが、逆にこのことは世界に与えた衝撃の大きさを示しているのではないでしょうか。

自殺のシーンをはっきりと描くのが正解かどうかは誰にもわかりませんが、リアルを追い求めたことは何かしら議論を生むと思います。

4. 現実の社会問題とのリンク

ハンナは死の直前にスクールカウンセラーと面談をし、心の中で助けを求めますが、気づいてもらえなかったと感じてそのあと自殺をしてしまいます。実はスクールカウンセラーのポーター先生は兆候に薄々と気づいていたと思います。ところどころ描写があり、ブライスを校内の廊下で脅かすなど、後悔の念を滲ませるようなシーンがありました。

日本でも教師などがSOSに気付けず自殺してしまった、というニュースを耳にする機会が増えました。教師はどこまで生徒に介入していいのか。その線引きはかなり難しいと思います。

また、クレイがハンナのテープを公開したことで事件が世間に知れ渡り、裁判でのブライスへの追及など性被害に対するムーブメントが沸き起こります。特にシーズン3ではジェシカを中心としてグループ運動や抗議活動が行われます。

これらの活動は2017年に起こったハーヴェイ・ワインスタインなどを訴えた、『Me too運動』に通ずるものを感じます。

また、同じくシーズン3ではトニーの家族の強制送還について描かれました。これは2016年に就任したトランプ大統領の移民排斥の強化によるもので、前はアメリカへの滞在が2週間以内の移民のみ、裁判を経ずに直ちに強制送還できる制度がありましたが、2019年7月現在、拘束された場所に関係なく、アメリカに2年以上続けて滞在していると証明できない移民の、即時強制送還が可能になっています。

ある日突然、家族が忽然と消えているのです。コンロに火をかけたまま、テレビをつけたまま。私たち日本人には強制送還の苦しみを感じることはできません。

だからこそこうした描写を通して、本当にこのことは必要なことなのか、正しいのかなど考えを深めていかなくてはなりません。

5. 女性だけの問題ではないショッキングなシーン

もしかしたら、全シーズンを通してこのシーンが最もショッキングだったかもしれません。シーズン2の最終話でタイラーがブライスの悪友にトイレでレイプされるのです。しかも、殴られたり、モップの柄をお尻に突っ込まれたりします。ハンナやジェシカのレイプシーンの遥か上を行くようなシーンでした。

それまで私に男性のレイプという概念はありませんでしたが、そもそも性被害は女性だけと勝手に思い込んでしまっていたことに気付かされましたし、ニュースや記事での取扱いが少なすぎるのではないかと思いました。もっと理解が必要なのです。

6. ブライス・ウォーカーの人間性

本作で唯一の完全な悪人として描かれるブライス・ウォーカーですが、シーズン3でそのイメージが少し変わります。

ブライスは祖父、父親が女性に対し差別的な考えを持つ人で、ブライスは影響を受けて育ちます。シーズン3でブライスは必死に母親を守り、さらに転校先の高校でイジメを受けます。そして、孤独感に襲われるのです。

初めてブライスに感情移入し、可哀想とさえ思ってしまうのですが、忘れてはいけません。あくまでブライスは加害者です。ここではいかにして彼の人格が形成されたかが描かれるのです。ドラマではゲイの両親や、息子に無関心な親など様々な家庭が出てきます。そして、家庭環境がどう人に影響を与えたかが描かれるのです。

7. 無意味な死と勇気を出すということ

これまで泣き寝入りしていた女子生徒たちはヒエラルキーの頂点にいる運動部の男子を訴えるなどの運動を始めます。シーズン1と比べるとかなり環境が大違いですが、何より被害を受けたジェシカとタイラーは立ち直り、カミングアウトをするなど変化をもたらしています。

一方、ハンナは死者です。つまり、彼女は何も変化を知ることができないし、何もすることができないのです。シーズン1と3はハンナの破滅に対し、ジェシカやタイラーなど被害者の再生が描かれコントラストを生み出していて、死は無意味だというメッセージが隠されています。

タイラーやジェシカはもともと勇気を備えていて、周りも支えたので再生できました。一方、ハンナは自ら前に進む勇気を持てませんでしたが、もし周りの人が異変に気付いて、勇気を出して声かけをしていたらどうなっていたでしょうか?ほんの小さな勇気を持つということは難しいですが、大切なことだと訴えかけているように思います。

最後に

本作は様々なキャラクターだけでなく、家族や家族の抱える問題など多様性にあふれたドラマとなっていて、自分は本当にこのままでいいのだろうかなど、多くのことを考えさせてくれます。

『13の理由/現代が抱える闇を考える』という番組もありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。

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