ジブリ映画の中でもストーリーが難解だとされる「もののけ姫」。
そのため、制作側の意図を観客が誤解してしまうシーンも少なくはありません。
そこでこの記事では、「カヤとの別れのシーンでなぜアシタカが良い笑顔をしているのか」や「カヤからもらった小刀をなぜサンに渡してしまうのか」などを解説していきます。
より深くもののけ姫の世界観を楽しみたいという方は、ぜひ参考にしてください。
もののけ姫の冒頭、アシタカとカヤの別れのシーンでアシタカが笑う理由とは?
今、アシタカがサンに、と言って渡したのはカヤから「私の身代わりに」と言ってもらった小刀の飾りですよね……なんかカヤのことを思うと切なくなっちゃう私です・・・😢#アシタカ #サン #カヤ #もののけ姫 #小刀の飾り #秋のジブリ #kinro #秋のファンタジー祭り pic.twitter.com/1fgZue98s9
— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
村を出ていくことになったアシタカですが、こっそりと涙ながら見送りにきたカヤに対し、アシタカはとても良い笑顔。さらには旅立つアシタカに合わせて、壮大なBGMも流れ始めます。
これらの一連の流れに関して、観客は「なんでアシタカは笑っているの?」「カヤとの別れはそんな重要じゃないっていうこと?物語がここからスタートするって感じのBGMも流れるし」というように考える人が多かったようです。
しかし、このときのアシタカの笑顔も壮大なBGMも宮崎駿監督をはじめ、制作側はかなり思い入れのあるシーンだった模様。
というのも、別れのシーンでアシタカの心の内側は実はドロドロなのだと宮崎駿監督は言っています。
親しみ深い村を守るための行動で結果的に追放され、「なんでこんな目に合うのか」「自分は悪いことなんて何もしていないのに」と、怒りや悲しさでとてもやりきれない気持ちでいっぱいなアシタカ。
それにも関わらずカヤに心配をかけないよう、自分のみっともない姿を見せないよう、必死に笑顔を作る。だからこそあのシーンでのアシタカは不似合いとも思えるほど、明るすぎる笑顔になっているのだそうです。
また、壮大なBGMについても「そんな風に必死に踏ん張れる格好良い男のために元気づけられるような音楽をプレゼントしたい!」といった宮崎駿監督の思いから生まれています。
もののけ姫のクライマックス、なぜカヤからもらった小刀をサンに渡したのか?
カウンターテナー歌手🎙米良美一さんが歌う「もののけ姫」主題歌。
「アシタカのサンへの気持ち」を歌っているものです。アシタカの心の中の声をイメージして宮崎駿監督自身が書き下ろしました😉
→続く pic.twitter.com/H42HBiWH0Y— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
よく「婚約者からもらったものを新しい女に渡すとは何事か!」というように物議をかもすこのシーン。
これについてはカヤとサンの声優を担当した石田ゆり子さんも物申したそうですが、そのときに宮崎駿監督からは「男なんてそんなもん」と返されたという逸話が有名ですね。
ただこちらについては現在では明確なソースがないため、なんともいい難いところ...。
また、先に解説したとおり制作側としてはアシタカをとても男気ある人物として描いています。
それだけに、ろくに何も考えずにサンへと小刀を渡したとは考えにくいでしょう。
アシタカとしてはとても大切なお守り的存在だからこそ、同じく大切なサンに持っていてもらいたい(自分よりもサンを守ってほしい)と思ったのかもしれません。
ただ、男らしさと女心を理解しているかはまた別の問題なので、結果的に女性からしてみると理解できない行動になってしまっていると考えると、なんともリアルではないでしょうか。
もののけ姫のテーマは恋愛ではなく、「生きる」ことそのもの
カウンターテナー歌手🎙米良美一さんが歌う「もののけ姫」主題歌。
「アシタカのサンへの気持ち」を歌っているものです。アシタカの心の中の声をイメージして宮崎駿監督自身が書き下ろしました😉
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ここまでで解説した2つのシーンはどちらも恋愛的なシーンであり、もののけ姫はこのようなシーンが記憶に残りやすい人も多いでしょう。
しかし、もののけ姫の主題は「自然と人」。さらに深く掘り下げるなら「生きる」ということそのものです。
ちなみにもののけ姫はもともと「アシタカせっ記」というタイトルがつけられようとしていたのだとか。
せっ記とは宮崎駿監督による造語なのですが、簡単にいうとアシタカせっ記は「アシタカという一人の男の伝記」。
つまり、アシタカの人生をとおして「生きる」ということを描いた映画なのです。
もののけ姫は子ども向きでないとされるが... 子どもに向けて作られている
「もののけ姫」制作にあたって宮崎駿監督🎬が書いたエボシの設定についてのメモには、こんな記述があります🤗
“海外に売られ、倭寇☠️の頭目の妻となり、頭角を現し、ついに頭目を殺し、その金品を持って自分の故郷に戻ってきた”
こんな過去を生き抜いてきたからこそ、
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もののけ姫はこれまでのジブリ映画の中ではかなり異色といえるほどグロテスクなシーンも多く、物語の結末も決して完璧なハッピーエンドではありません。
そのため、「子ども向けでない」と評されることも多いのですが、宮崎駿監督は子どものために作ったと取れるような発言をインタビューにてしています。
宮崎駿監督曰く、これまでのジブリ映画は子どもたちにエールを送るために作ってきたとのこと。
しかし、実際のところ子どもたちは大人が思うよりももっと賢く、世界の根本的な問題にも気づいているし、本能的にそれを知りたいと願っているものだと感じていたのだそうです。
そして、その思いに応えないことには、エールを送っているだけでは「私たちはこの先、仕事をできない」と考え、その結果できあがったのがもののけ姫だといいます。
また、「小さな子どもたちも映画のメッセージを直感的に理解してくれるだろう」といったこともインタビューで答えている宮崎駿監督。
大人はどうしてもすぐに「こんなものを子どもに見せたら悪影響!」というように考えてしまいがちですが、子どものほうがもっと素直にもののけ姫の芯のメッセージ性を理解しやすいものなのかもしれません。
映画が終わったその後、アシタカとサンはどうなる?
(サン)アシタカは好きだ
でも人間を許すことはできない
(アシタカ)それでもいい
サンは森でわたしはタタラ場で暮らそう
共に生きよう#kinro #もののけ姫 #サン #アシタカ #ヤックル #山犬 pic.twitter.com/tdAmEAMba2— アンク@金曜ロードSHOW!公式 (@kinro_ntv) October 26, 2018
映画、もののけ姫の幕が降りた後、アシタカとサンはどう生きていくのかという話について、宮崎駿監督は「二人はずっと良い関係を続けていくだろう」と答えています。
サンは森にずっと住み、そんなサンを守るためにアシタカは奮闘する。でも、同時にタタラ場の人たちも必死に生き抜かなくてはいけないからどうしてもサンと衝突する。その度にアシタカはボロボロになりながらも両方を守るために頑張り続ける。
こうしてみるとサンはまさしく自然の象徴であり、アシタカとの関係性は人と自然が共生するための大切さと大変さを教えてくれているようです。
そしてその大変さこそが、開発により便利になる反面、自然を脅かしてきた結果としてさまざまな環境問題を抱えているこの世の中で「生きる」ということなのでしょう。
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