『Lemon』『Flamingo/TEENAGE RIOT』に続き、米津玄師の10枚目シングルとして発売された『馬と鹿』。池井戸潤原作のドラマ『ノーサイド・ゲーム』の主題歌として書き下ろされ、初回限定ノーサイド版にはドラマを連想させるホイッスルが特典として付いたことも話題となりました。
一見すると、利口でないことを指す言葉である「馬鹿」を表現されているように思えますが、実際にはどんな意味が込められているのでしょうか。インタビューを紐解きながら、詳しく考察していきたい思います。
曲名の由来は?「馬と鹿」とは何を指す?
新曲をYouTubeに投稿しました。よろしくお願いします。
米津玄師 MV「馬と鹿」Uma to Shika https://t.co/fcPTVhvMLm
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) September 3, 2019
『馬と鹿』というタイトルはどういう経緯で付けられたものなのでしょうか。ナタリーのインタビューの発言から察するに、どうやら、初めから「馬鹿」という言葉をテーマに制作した訳ではないようです。というのも、「我を忘れるような熱狂的な瞬間」を切り取り表現することを目指して制作をした結果、米津氏が最終的に曲から連想した言葉が「馬鹿」だったそうです。
「歪んで傷だらけの春 麻酔も打たずに歩いた」
「鼻先が触れる 呼吸が止まる 痛みは消えないままでいい」
歌詞の一部です。痛みや傷を受けても自分の身を顧みないその姿勢は愚かだと評価することもできますが、一方で目標を成し遂げるために一心不乱に進む姿勢には美しさも感じます。
『馬と鹿』というシンプルな曲名ですが、そのシンプルさゆえ、聴く側も曲に込められたメッセージを素直に考え、受け取ることができるのでしょう。
我を忘れるような、熱狂に対する憧れ
新しいシングルが発売になりました。今回で10枚目のシングルらしく、もうそんなに出したのかと感慨深いです。どうぞよろしく。 pic.twitter.com/75XCeLp8bf
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) September 11, 2019
『ノーサイド・ゲーム』はラグビーや企業スポーツ、企業間における政治的な要素など、一見するとこれまでの米津玄師の曲の世界観とはあまり共通点のないモチーフが多いように感じますが、実はこの1〜2年で彼自身とスポーツとの距離がグッと縮まっていました。というのも、去年のW杯の頃から暇さえあればサッカー観戦をしているような状態であった米津氏。『ノーサイド・ゲーム』の主題歌の話がきたことは何かの示し合わせのようにも感じたとのことです。
サッカーにのめり込むにつれて、短い現役生活のためにフィジカルトレーニングを怠らず、いざ試合になると何万人が見守る中で熱狂を生み出し喜び合う選手たちに「羨ましさ」を感じたといいます。
さらに、先ほど触れたインタビューでは『馬と鹿』が生まれた背景の1つとして、「我を忘れる」ことの重要性について語っています。
後悔や肉体的な苦しみを抱えながらも、道の先にあるものを目指して歩みを止めない姿が表現されている『馬と鹿』ですが、生まれた背景には彼自身が置かれていた状況が強く反映されていたようです。
圧倒的、普遍的事実としての愛
新譜の度に恒例になりつつある曲について喋ってるやつを投稿しました。よろしくお願いします。
馬と鹿 radio https://t.co/bLOMe2zdkQ
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) September 12, 2019
米津氏は新しいシングルを出す度に、その曲の背景や意味について語るWEBラジオを公式YouTubeチャンネルで公開していることをご存知ですか?今回のラジオ番組では『馬と鹿』のモチーフの一つとなったスポーツの中に存在する愛について語っています。
『vivi』や『アイネクライネ』など、これまでも愛をテーマにした曲はありましたが、恋人との愛を語るこれらの曲に対して、仲間への愛を歌っている『馬と鹿』。ラグビーでは試合後に敵味方の区別をなくし互いに称え合うノーサイドという瞬間がありますが、米津氏はサッカーで感じた「仲間へ向ける愛の美しさ」をノーサイドという瞬間にも見出したのかもしれません。
何ものにも代え難い「愛」と「我を忘れる」ことの尊さを歌った曲
本日最終話です。どうぞよろしく! https://t.co/J2oHYmZOsF
— 米津玄師 ハチ (@hachi_08) September 15, 2019
インタビューとラジオ番組を読み解くと、この曲のタイトルにもなっている「馬と鹿」、つまり馬鹿とは、自分を顧みずひたすらに前進する力強さと、仲間への愛を兼ね備えた美しい人物なのだと想像することができます。
ラジオでは『馬と鹿』だけでなくカップリング曲についても本人が解説しているので、興味がある人はぜひ聴いてみてください。
『Lemon』に引き続き『海の幽霊』『馬と鹿』と立て続けに名曲を生み出している米津い氏から、これからも目が離せません。
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