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なぜ人は衝撃的な映像を観てしまうのか、社会心理学者に聞いてみた

「あと1年で地球が滅亡してしまう」「ロボットが街を破壊する」「最後に誰も生き残らない」
このような設定の映画を観たことはありますか。ハラハラドキドキして、決してハッピーエンドではないのに、どうして人は衝撃的な映像をつい観てしまうのでしょうか

答えのヒントが、この映像作品にありました。amazarashi「命にふさわしい」のミュージックビデオ(以降MV)は、PlayStaiton®4用アクションRPG「NieR:Automata」との共創プロジェクトとして「200体もの人形が様々な方法で破壊されていく」という大きな特徴をもった映像作品です。

衝撃的な映像ですが、『命を投げ出すに値するほど、大切なものは何か』というテーマということもあり、MVのYouTubeコメントには「MVを見入ってしまう」「そのテーマは考えさせられる」といった意見が見受けられます。

今回はMVを観た感想による性格診断(リンク)を作成した、社会心理学者 川島洋先生に、疑問について聞いてみました。

心理学と音楽

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―ご専門の社会心理学について教えてください。

「一般的に心理学は心ってなんぞやを解明する学問ですけど、私がやっているのは人の心と社会との関わりですね、人がどういうふうに社会や他人から影響を受けていて、どう自分に作用しているのか、個人個人の心がどう社会に作用しているのか、流行現象など集団にどう影響を与えているかを研究する分野です」

「音楽も社会心理学のテーマではあるんですよね。音楽はなぜあるのとか、音楽自体が社会にどういう役割があって、といったテーマもあって。音楽は一つの大きなテーマですね」

―ご自身もギターを演奏されるそうですね。

「今もやってます、いまもやってます。昔は本格的にもやっていて。ジャンルは元を正すとハードロックで、ちょうど流行っていたんですよね。今はこだわらずにやってますけど」



希望と絶望

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―『amazadashi』のMVを観た感想を教えてください。

「実はよくわかってなくて(笑)、自分も。逆に先入観がないほうがいいんですよ、知っていると自分の先入観が入ってしまうので。でも、あとあと調べましたよ、自分で」

―どういった印象をお持ちになりましたか。

「まあ私は映像を見てすぐ連絡したんですよ。それは希望と絶望。映像が絶望を表していて楽曲が希望を表しているんじゃないかと、私は感じたとお伝えしたんですね。そしたら返信が来て、確かにその通りだといっていて、光と影といってましたね。言ってみればそれは希望と絶望ですね、といっていてよかったと(笑)」

―決して1つの回答ではないということでしょうか。

「そうです、結局人の性格とは1つじゃなくて色んな面があって。本来は心理検査っていうのはその側面の度合いを測るんですよ。あなたはこれですよ、ってはめ込むんじゃなくて、8個の度合いを調べるんですね。その中で一番数値が高い部分が、そもそも性格の特徴としては一番目立つ部分、という風な形で考えるんです。だから、すべての要素があってもおかしくないしゼロってのもあるかもしれないけど。でもみんなすべて少しは要素をもっているはずなんですね」

「決めてしまうのは、学問的な形で言うといけないんですよ。自分自身は良いんでしょうけど、例えばそういう風に人を見てしまったらよくないんじゃないですか。あなたはこうだからこうです、て決めつけちゃうと偏見につながっちゃうから」

「性格をはめ込んで考えるやり方を類型論というんですね。じゃなくて特性論というのがあって、8つの特性の度合いを測る、そっち側で見なきゃいけないよ、というのが心理検査のやり方なんですけど。学術的に言うとそういう形があるんですよ」

不安定が当たり前

―心理テストは結果が変わるものなのですか。

「そうなんです。今回とは違う心理検査なんかでは例えば5つに分けるんですね、リーダータイプみたいなタイプがあったりするんですね。学生なんかにやらせると、ほとんどリーダータイプって人はいないんですね。なぜかといったらまだリーダーになったことないんですよ。だいたい学生は情緒不安定とかになっちゃうんですよ、ほんとに。まだ固まってないからね。それが卒業して就職してある程度責任のある立場でリーダーみたいになってくると自然とそのタイプになってくるんですよ。そうするとそのときに心理検査やると全然違う結果になるとこが普通にあるんですよ」

「不安定が当たり前ですよ。自分の人生が不安になってくるのが、割と30前半にあるんですよね。一番転職を考えるのは多分30代前半なんですよ。変わるのがまだそこなら変われる、30代前半って。そこから先になると、できますけどだんだん厳しくなってくるじゃないですか。そうすると実際のホントに自分の人生の転機って、逃すんですよ」

―そのようなときに心理分析を行うのが効果的なのでしょうか。

「そのとき必要になるかもしれませんね。ただ、心理テストってある程度自分が固まらないとうまく出てこないっていうか。子供にやってもしょうがないんですよね。自分が固まってないと毎回結果が変わってしまうし、いい加減になってしまうので本当の部分てのがなかなか出にくくなってしまうんですよね」

「1つの心理テストをやっても、それがすべてじゃないし一面を見るだけ。ただ、自分自身って分からないじゃないですか。それを少しでも知るための材料ですよね、客観的な。そして、実は自分自身で答えを出していくものなんです」

安心感の中で観る破滅

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―なぜ人は破滅的な映像作品を観るのでしょうか。

「死とか、タブーとされてるじゃないですか。それに対する好奇心がありますよね。今の時代、死を隠す傾向にもあるので、余計に刺激を求めたくなる部分もあります。キリスト教でも終末論があるわけで、終わりっていうことに興味があるんですよね。それって人って生命には終わりがあるって知っているからですよね。だからあの世が気になるんですよ、その先が。死んだ後も生きたいんですよ」

「映画はスリルとか不安感とかありますよね。本気にしてはまずいんですけど、どこか「そんなことはないだろう」という安心感の中で破滅を見るってのは、もしかしたらちょっとすっきりするのかもしれませんね」

「悲しい時に悲しい音楽を聴くとすっきりするじゃないですか。不安な時に、世の中が混沌としたときに、そういうのが流行ると言われているんですよ。だから架空の破滅を見て、安心、安全とか幸せを再確認するっていう意味もあるんですよ。『自分じゃないし、こうはならないだろう』と」

「ハラハラドキドキも大切な要素ですよね。ホラーとかお化け屋敷とか、人って快楽を得たいんですよ。アドレナリンとか出したいという気持ちが強いんで、興奮したいと。死とか破滅は非現実的な要素が余計に強いので、求めるんですよ。心を動かしたいって気持ちが強いんで、泣きたいときに泣ける映画に行くじゃないですか、揺さぶられたいんです」

真面目な人ほど笑わせられる!?

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amazarashi NEW SINGLE「命にふさわしい」

―ちなみに笑わせたいときはどんな心理状態になるんでしょうか。

「笑いや怒りは情動と言うのですが、長くは続かないけど心の激しい動きなんですね。反射的ですね。落語はストーリーを聞いていないと笑えないので今は流行っていないですが、現在は瞬発的なものが面白いとされていますね。動画なども1分くらいがいいんでしょうね」

「早いほう、すぐに結果が出るようなものが。メディアそうなってますよね。テレビは30分見てられますが、スマホだとずっとは見られないから、自然と短くなっていったんでしょうね」

―そうすれば笑わせるんですね。

「ただ、情動が激しい人は不安定なので(笑)真面目に仕事していれば情動ってそんなに動かないんですよ。だから動かすためにドラマや映画を見たりするんですね。真面目に仕事をしている人のほうが情動を求めるんですね」

―ありがとうございました。

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自分の一面を知るヒント

先生のお話を聞き、衝撃的な映像を観たりどこか美しいと感じたりすることは、何かおかしなことではなく、人間の自然な行為と言えるのかもしれません。私はどこかちょっと安心しました。

映像を観てどう感じたのかを分析することで、自分を深く知るための材料にもなります。お互いの感想を言い合うことで、もしかしたらこれからの自分に役立つヒントが見つかるかもしれませんね。

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