さて、そんな世相を反映してか、Twitterではこんなツイートが話題になりました。
何らかの事情でホームレスになった人は区役所や図書館、寺で手に入る、『 路上脱出ガイド』を入手しろ!
「食べ物がない」「体調がわるい」「泊まる所がない」「仕事を探したい」「今すぐ仕事がしたい」「生活保護を申請したい」などと思ったときどうすればよいか?や支援先が具体的に書かれているぞ! pic.twitter.com/E9YAW1sD39— 桜井🌺5.31生きづらさバーマイノリティハウス (@sakurai7715) 2018年4月7日
この「路上脱出ガイド」ですが、実物を取り寄せてみたところ、たしかにツイートの通りの内容がまとめられていました。
福祉的な支援を受けられる場所から、仕事探しの場所、各種の支援制度の申し込み方法まで――まさに「社会復帰までのガイドブック」といった内容のこの小冊子ですが、一体どんな人たちが、どういった経緯で作ったのでしょう?
冊子の奥付に書かれていたのは「認定NPO法人ビッグイシュー基金」という団体。手がかりをもとに、コンタクトをとってみました。
「路上脱出ガイド」ができるまで
今回、私たちの取材に応じてくれたのは、NPO法人ビッグイシュー基金東京事務所の永井悠大さんと保井力さん。
早速ですが、そもそもビッグイシュー基金というのは、一体どういった団体なのでしょうか。この質問に、永井さんが答えます。
ビッグイシュー基金は、ホームレス状態の方に仕事を提供することで自立を応援する「有限会社ビッグイシュー日本」(以下、ビッグイシュー日本)を母体に設立された団体です。
ビッグイシュー日本は路上で雑誌を販売する仕事を提供し、その売り上げの50%以上を彼らの収入にするというしくみです。しかし、一度でも路上に出てしまうとふつうの暮らしに戻るためのハードルはとても高くなり、雑誌販売の仕事を提供するだけではなかなか生活の再建が難しいということがわかりました。
そこで、ビッグイシュー基金では健康や法律、住まいや仕事など生活全般についての相談を受け、サポートをしています。
永井さんの話によると、団体では生活相談やサポートの他にも、人とのつながりを取り戻すためのスポーツ交流プログラムなど、様々な角度からホームレスの方の自立を応援しているそう。
つまり、そうしたアプローチのうちの一つとして、「路上脱出ガイド」の発行があるわけですね。
さて、その「路上脱出ガイド」ですが、現在は東京・大阪・京都など、全国7地域で作成中。2009年に第1弾を配布して以来、東京版だけでも65,000部も発行されているというのだから驚きです。
ところで、ここで気になるのは発行のきっかけについてですが、これについて永井さんは、2008年に起こった世界的な金融危機「リーマンショック」を挙げています。
ガイド作成に関わった当時のスタッフによるとリーマンショック以降、比較的若い世代の方がホームレス状態になるという問題が顕在化したとのことです。
就労経験や人生のキャリアもある50 代、60 代のホームレスの人の間でも、社会資源の適切な利用について、まだまだ理解が進んでいなかった中、若い人にはなおさらそうした情報が届きにくかった。
全くゼロの状態から路上生活を強いられることになるので、これは情報をまとめる必要があるだろう、 ということで生まれたのが『路上脱出ガイド』だと聞いています。
リーマンショックという時代の要請が生んだ「路上脱出ガイド」。もちろん、社会の情勢や制度の変更に合わせて適宜内容を更新しています。前回の改訂は2015年、今年の冬には再度版を改める予定なのだと、永井さんは言います。
これまで、私たちが配布する冊子は「路上脱出ガイド」という名称だったのですが、昨年10月には大阪版を「路上脱出・生活SOSガイド」として改訂し、路上生活から生活を再建するための情報に加え、現在は路上化していないものの生活が苦しい方にも役立つ情報を加えました。
厚労省が公表している路上生活者の数は年々減少傾向にありますが、他方では相対的貧困率は改善されず、ネットカフェ難民など、ホームレス状態と地続きに困難を抱えた方はむしろ 増加していると思っています。そういった社会情勢をふまえ、文字通りの“路上”生活者だけでなく、貧困に苦しんでいる人たちみんなに手に取ってもらいやすいように、ガイドの名称の変更も含め、今後検討を進めていきたいと思っています
問題の本質を的確にとらえて、次の一手を考えるNPO法人ビッグイシュー基金。彼らが取り組む問題のために、私たちにできることはあるのでしょうか。最後にお2人はこう言っています。
貧困問題に対してできることはたくさんあります。それこそ「路上脱出ガイド」を置いていただくことだったり、配っていただくことだったり――団体にメールで連絡をくだされば、必要な分の冊子を(送料のみご負担いただき)お送りしています。
もし、近くに気にかかる方がいて、そこに「路上脱出ガイド」があれば、話しかけやすさはかなり違ってくるのではないでしょうか。そういう形で、路上の方に関わっていただければと思います。
ちなみに「路上脱出ガイド」(pdf版)はビッグイシュー基金の公式HPでも配布を行っています。貧困問題を考えるきっかけに、皆様も一読してみてはいかがでしょうか。
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