今回は車についてのマニアックな知識を若干多めに、ジェイソン・ステイサムが出演して出世作となった『トランスポーター』シリーズの3作品を紹介していきます。
トランスポーター【2003年】
あらすじ
銀行強盗の逃走車のドライバーを請け負っていたフランク(ジェイソン・ステイサム)は、見事な運転技術で依頼された仕事を淡々とこなしていました。
ある日、逃走車がパンクしたことをきっかけにトランクの中を確認すると、依頼品の入ったバックが動いていることに気づきます。中を開けると、手足を縛られ口はテープでふさがれた中国系の美女ライ・クワイ(スー・チー)が捕らえられていました。そのまま彼女を依頼主に届け、新たな依頼を受けたフランクでしたが、その後なぜか愛車のBMWが大爆発。依頼主に殺されかけたと怒り心頭でアジトに乗り込むも、ボスは不在でした。
仕方なくアジトから奪った車には、なぜかライが乗っていました。置いて行くわけにもならなくなったフランクは、ライを連れ帰ることに。ライから、子どもたちの人身売買を行っている組織の壊滅を依頼され、悪の組織に敢然と立ち向かうことになるのでした。
見どころ
『トランスポーター』シリーズの記念すべき1作目。本作でのフランクの愛車はBMW 735iです。
『トランスポーター』シリーズで主人公が乗るクルマはアウディの印象が強いかもしれませんが、アウディが登場するのは2作目以降になります。BMW 735iは、BMWを代表する通称7シリーズと呼ばれる超高級セダンです。日本では超高級輸入車なので、『トランスポーター』ばりの走りをしているのはまず見ることはできません。そう考えるとBMW7シリーズはやはり、車にステータスを求める金銭的に成功した人にしか所有できない車と言えるかもしれません。
パリを疾走する爽快感は映画ならでは
銀行強盗の犯人から依頼された逃走のため、パリの街中を疾走するBMW。車一台やっと通れる小道を疾走しながら、パリ市警であるプジョーが差し向けるパトカーの追撃を次々とかわしていきます。あまりの激走ぶりに、後部座席に同乗していた依頼主の強盗が車酔いするほど。
しかし、手に汗握るチェイスをお求めのカーアクションフリークにとって嬉しいのは、『トランスポーター』が激走の序章にすぎないということです。
トランスポーター2【2006年】
あらすじ
運び屋稼業から足を洗うつもりで、アメリカのマイアミに休養に来ていたフランク(ジェイソン・ステイサム)。今回の依頼は、大富豪のお抱え運転手が休み中の代わりのドライバーでした。依頼主は、連邦麻薬対策委員長のジェファーソン・ビリングス(マシュー・モディーン)であり、主な仕事は依頼人の息子ジャック(ハンター・クラリー)の通学の送迎。
しかし、平穏な依頼内容にも関わらず、突然フランクとジャックはテロリスト集団に襲われてしまいます。一度はテロリストから逃れる2人ですが、後に彼らからの呼び出しにやむなく応じ、凶悪なウイルスに感染させられてしまうジャック。フランクはテロリストのアジトに乗込み、見事に解毒剤を手に入れます。しかしテロリストの目的は、ジャックのウイルスを空気感染させ、麻薬撲滅サミットに出席する予定だったジェファーソンを経由して、サミットで大量の人々を死に至らしめることだったのです。
多くの感染者が出る中、テロリストのボスであるジャンニ(アレッサンドロ・ガスマン)は解毒剤であるカプセルを体内に隠し、飛行機での逃走を図ります。そこへフランクがスーパーカーで離陸寸前のジェット機に追いつき、ジャンニとの決闘に挑むのでした。
見どころ
2006年6月に日本公開された『トランスポーター』シリーズ第2弾。映画冒頭に「AUDI」の大きなロゴがクレジットされており、2作目以降からはアウディがフランクの愛車になっています。日本で言うところのトヨタや日産のようなスポンサーです。ちなみに悪役車両には、メルセデスベンツが使用されています。
2作目の愛車アウディA8は、アウディの象徴とも言える車体。
エンジンは6000cc・W12気筒クワトロ、つまり排気量6000ccでW型エンジン12気筒、駆動方式は4WDのハイパワーモンスターセダンです。W型エンジンは、フォルクスワーゲンを本家とする直列エンジン+V型エンジンという、世界的に見ても珍しいエンジンで、フォルクスワーゲンと提携関係のあるアウディならではの特殊なエンジンと言えます。国産車には存在しない、珍しいW型エンジンの咆哮!まさに国外カーアクション映画の真骨頂を堪能出来ます。
進化したカーアクションと肉体美
パトカーとアウディA8との浜辺でのカーチェイスに始まり、お決まりはやはり見ごたえのある、お釈迦車両の大量生産。何よりの肝は、立体駐車場のビルから飛び出して隣の立体駐車場に大ジャンプするという、ド派手なアクロバットでしょう。しかもその直後、駐車場の端ギリギリでストップするというまさに神業を披露してくれます。
カーアクションのみならず、ジェイソン・ステイサムの格闘シーンも見どころ満載であり、マニア垂涎の豪華な作品に仕上がったと言えます。
トランスポーター3 アンリミテッド【2009年】
あらすじ
自宅で安らぎのひと時を過ごすフランク。突然、轟音とともに自宅に飛び込んできた車は、運び屋稼業の仲間のものでした。救急車を呼び、彼を助けたと思ったのもつかの間、仲間が車から20m離れた瞬間、付けていたブレスレットが爆発します。さらに、どさくさに紛れて奇襲を仕掛けてきた謎の組織にフランクは意識を奪われ、連れ去られてしまいます。
爆死した仲間同様、車から20m以上離れると爆発するブレスレットを付けられ、強制的に依頼を請け負わされたフランク。依頼品は大きなバックと、首に「安」のタトゥーが入ったそばかすだらけの女。やがてフランクは、大きなバックがダミーであり、本当の依頼品はタトゥーの女だと知ることになります。女はウクライナの環境大臣の娘であり、夜な夜な遊び歩いていたディスコから組織に連れ去られ、人質にされて環境大臣との交渉材料となっていたのでした。
見どころ
『トランスポーター』シリーズにおいて、ジェイソン・ステイサムが演じる最後の作品となります。引き続き主人公フランクが乗車する車はアウディA8ですが、ノーマルではなく映画用に特別なパーツを多用したスペシャルマシンに仕上がっており、前作以上のパフォーマンスを発揮してくれます。「アンリミテッド=限界なし」というタイトル通り、底抜けのカーアクションに度肝を抜かれるはずです。
映画史に残るカーアクション!
漆黒のベンツとアウディが猛スピードで疾走するシーンは鳥肌もの。もちろんアウディはフランクの愛車、ベンツは悪の組織の追手が乗っています。片側1車線しかない田舎道をメーター140kmから220kmで並走するカーチェイスはまさに走る凶器という様相で、時には舗装をはみ出しダートを激走します。並走して進路を塞ぐ2台のコンボーイが現れると、フランクは驚きの片車輪走行(片車輪走法なんて、いすゞのジェミニのCM以来!?)で、コンボーイの間をすり抜けベンツを引き離すのです。息つく間もなく組織は追いすがり、お次は林道に突入してラリーカーさながらのオフロード走行。崖のギリギリ手前でフルブレーキングしたアウディを追い越し、谷底へまっさかさまに落ちて行くベンツ。そしてお馴染みの大爆発!一連のカーアクションは映画史に残る激戦と言っても過言ではないでしょう。
他にも、ダムの上で追い詰められ一度は湖底に沈んだA8がトラクターに引っ張ってもらい湖底から復活するなど、車の可能性の限界を試すような挑戦的な演出にあふれている『トランスポーター3 アンリミテッド』。何より終盤の、車ごと列車に飛び乗るという想像を絶するカーアクション!カーマニアとしての巨匠リュック・ベンソンの趣向には脱帽するばかりです。
今作では自転車でも爆走するジェイソン・ステイサム
悪の組織の大ボスであるレナードの刺客に何度も襲われ、ついには車を奪われ自転車で激走するなど、ジェイソン・ステイサム自身の弾けっぷりにも挑戦的な勢いが感じられます。列車に車を突っ込んで挑んだレナードとの最終決戦は、シリーズからの引退を控えた最後の大立ち回りにふさわしい迫力です!
映画の最後には、シリーズ3作品に登場したタルコーニ警部と仲良く釣りをするフランク。そのそばには、「安」のタトゥーのある女、ヴァレンティーナの姿も。どうやら、めでたく夫婦になったようです。ちなみにヒロイン役のバレンティーナ役を演じたロシア出身のナタリア・ルダコーワは、ニューヨークで美容師をしていたところ巨匠リュック・ベンソンに路上スカウトされ女優デビューを果たしたそう。タトゥーの「安」にはあまり意味がなく、単に漢字がカッコよく思われているだけなのだとか。
最後に
続編の『トランスポーター イグニッション』もカーアクションや決闘シーンは素晴らしいものがありますが、なによりもニヒルでクールな運び屋に徹する姿にピッタリなのは、ジェイソン・ステイサムでしょう。まだご覧になっていない方は、ぜひ彼が主演を務める『トランスポーター』シリーズをどうぞ!
3作目で結婚したフランクは、はたして危険な運び屋稼業=トランスポーターから足を洗ったのでしょうか?カーマニアの映画ファンであれば、巨匠リュック・ベンソンがまた新たにジェイソン・ステイサムを起用して続編を製作してくれることを期待してしまいますよね。
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