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『ベイビー・ドライバー』は映像と音楽の緻密なシンクロが最高にクール

若き天才ドライバーが主人公の映画『ベイビー・ドライバー』。

2017年8月に公開された本作は、ハラハラドキドキするクライム・サスペンス映画ながら、ゴキゲンな音楽にあふれていて、カーチェイス版『ラ・ラ・ランド』とも評されている作品です。歌い上げつつ踊る、というシーンはありませんが、ミュージカル作品以上に音楽と動きがシンクロしているという、とても斬新な作品です。

『ベイビー・ドライバー』あらすじ


天才的なドライビングテクニックをもつ青年、通称「ベイビー」(アンセル・エルゴート)は、強盗の逃走をサポートをする「ゲッタウェイ・ドライバー」。

とにかくぶっちぎりのハンドルさばきを見せる凄腕ドライバーですが、iPodを手放せず、どんなときも音楽を聴いています。車の追っ手を振り切るときも、音楽の力でそのドライビング能力を限界まで高め、毎回最高にイカしたカーチェイスを展開するのです。

そんなベイビーですが、実はこの仕事をしているのは、続けざるを得ない理由があるからだったのです。音楽は、幼いころに遭った交通事故の後遺症である耳鳴りをかき消すため。また、そのときの事故で、実の親も亡くしています。

こうして闇の世界に生き、青春の輝きも知らずに生きてきたベイビー。しかし、ある日理想の女の子・デボラと出会ったことをきっかけに、彼の運命は大きく変わりはじめます…!



『ベイビー・ドライバー』で話題の2大シーン!見どころ解説

音楽が素晴らしい映画作品は数あれど、本作は「座って観ていても、ついつい体がリズムにノッてしまう」というほど。各シーンにピッタリの選曲というだけでなく、なんと登場人物らの動きが、音楽に完全にシンクロしているんです!これがが驚くほどカッコいい!

①ハートを鷲掴みにされる!オープニングのカーチェイス

https://www.youtube.com/watch?v=6zuamtyFyKs

オープニングの6分間は、本作の見どころのひとつ。激しいカーチェイスシーンが始まる前の、車が止まっているところからすでにゾクゾクするほどカッコいいんです。

まず冒頭から、ジョン・スペンサー・ブルース・エクスプロージョンの『ベルボトムズ』という楽曲が流れます。そこへ、強盗に入るメンバーがスタンバイする仕草が。そして曲を聴きながら待っているベイビーのリズミカルなアクションや、DJやドラマーのような動きのすべてが、キメキメに音楽にシンクロ。これがミュージカルで見るダンスの振り付け以上に、緻密な動きなんです。

そもそも監督が、本作の着想を得たのが、この『ベルボトムズ』。これを聴いた監督の頭にカーチェイスのイメージが湧いたことが、この作品のスタートだったそう。

作品全体のかっこよさを予測させるこのオープニングは、車好き・音楽好き・ダンス好きの、あらゆる映画ファンを魅了する最高のシーンと言えるでしょう。

②コーヒー片手に街を踊り抜ける『ハーレム・シャッフル』

強盗メンバーの会議中、パシリ扱いを受けているベイビーが、街にコーヒーを買いに行く3分間・ワンカットのシーン。ここではボブ&アールの『ハーレム・シャッフル』という楽曲が流れます。

「右に動いて」「もっとゆっくり」と体の動きが歌詞になっているのですが、この歌詞に合わせて、ベイビーはくるくると踊るように街を駆け抜けて行くのです。

この動きは、ライアン・ハフィントンという著名な振り付け師によるもの。ベイビーがドアを開け、コーヒーをオーダーし、受け取って、という流れが自然に組み込まれていて、思わずうっとりする心地良さを生み出しています。

もともと英語の曲には「ベイビー」が単語として使われやすいけれど、この『ハーレム・シャッフル』にももちろん登場。まるで主人公に「ベイビー」と呼び名で語りかけているように錯覚してしまいますね。

さらにこのシーン、街の中で神の存在を叫ぶ宗教家の男や、のちに出会う恋人のデボラなど、メタファー的な人物が姿を見せていることもあり、作品の中でも特に印象深いシーンになっています。

濃厚な人間ドラマを見せる!『ベイビー・ドライバー』キャスト

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音楽性の高さだけでなく、濃厚な人間ドラマも魅力の本作。主人公ベイビーを演じるのは、青春映画『きっと星のせいじゃない。』(2014年公開)で人気が急上昇し、モデルとしても活躍中の俳優アンセル・エルゴート。

本作ではリズミカルなハンドルさばきや、踊るように街を歩く秀逸なリズム感を見せていますが、それもそのはず。彼は音楽業界でミュージシャンとしても活躍しているのです。

ベイビーの恋人・デボラ役には、ディズニー映画『シンデレラ』(2015年)の主演でブレイクした、リリー・ジェームズ。キュートで親しみやすく、主人公を変える「運命の女の子」として、非常に説得力ある魅力を見せています。

強盗グループ役として脇を固めるのは、ケヴィン・スペイシーとジェイミー・フォックス。どちらもアカデミー賞・主演男優賞の受賞経験がある名優。

その他、強盗メンバーに美しいメキシコ系女優のエイザ・ゴンザレス、アメリカのテレビドラマシリーズ『MAD MEN マッドメン』で人気を得たジョン・ハムなど!

このように強盗グループに味のあるベテラン陣をそろえ、「敵か? 味方か?」と変化するベイビーとの関係性の揺らぎが、作品のドラマ性を高めている要素の1つでもあります。

『ベイビー・ドライバー』の原点は監督過去作品にあった!?

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本作を撮ったエドガー・ライトは『ショーン・オブ・ザ・デッド(2004年)』、『ホット・ファズ -俺たちスーパーポリスメン!-(2008年)』、『ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!(2014年)』など、英国的センスあふれるコメディタッチの作品で、コアなファンが多い監督。

丁寧で無駄のない演出で知られていて、本作『ベイビー・ドライバー』同様、過去の作品でも音楽を効果的に使っています。

奇想天外なコメディ・ゾンビ映画『ショーン・オブ・ザ・デッド』にも、音楽と俳優の動きをシンクロさせたシーンが登場。ゾンビに囲まれた主人公たちが、たまたまジュークボックスから流れてきた、クイーンの名曲『ドント・ストップ・ミー・ナウ』に合わせた動きで、ゾンビを撃退して笑を誘う名シーンがあるのです。

多くのエドガー・ライト監督ファンの間で愛されているこのシーンが、このあと『ベイビー・ドライバー』の緻密な演出に育っていくと考えると何だかワクワクしませんか!

『ベイビー・ドライバー』の評価は?

本作は、エドガー・ライトのハリウッド本格進出作。多くの関係者やファンの期待値が高まった中での公開となれば、注目すべきは作品満足度です。

日本では公開直後から「ぴあ・クチコミ満足度ランキング」で上位に食い込み、公開から数カ月が経過しても3位をキープしているほど(2017年10月5日時点)。

また、アメリカの映画情報サイト「Rotten Tomatoes」でも同様に、観賞後の満足度で、かなり高い評価を得ているとのこと。根強いファンに支えられ、息の長い上映や上映館の拡大などもがあるかもしれませんね。