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近未来SFアニメ『攻殻機動隊SAC』の魅力!難解なポイントを整理

今年4月に神山健治を監督に据えたSFアニメ『攻殻機動隊』新シリーズの制作が決定されました。『攻殻機動隊』とは士郎正宗原作のSF漫画であり、日本のSF作品における金字塔的な作品として映像化されています。

その中でも爆発的な人気を誇り、今もなお続編を望む声の止まない大人気アニメシリーズ第2弾『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(以下、攻殻機動隊SAC)シリーズの監督を務めたのが神山健治です。

今回はそんな『攻殻機動隊』シリーズの監督に返り咲き、ファンの胸を高鳴らせて止まない、神山監督のTVシリーズデビュー作『攻殻機動隊SAC』シリーズの魅力をたっぷりと紹介します。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX【2002年】

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX
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あらすじ

西暦2030年。人々はテクノロジーの発展によって、外部デバイスを必要とせず脳から直接外部のコンピューターネットワークにアクセスが可能となる「電脳化」技術や、身体の一部あるいは全身を人工的な機械に置き換える「義体化」技術を手に入れました。

しかし、同時にこれらの技術は過去には考えられなかった"脳のハッキング"や"義体の能力"を悪用した、凶悪犯罪を引き起こす原因ともなってしまいます。政府はこれらの凶悪犯罪に対する抑止力として戦闘だけではなく、情報戦にも堪能な人員ばかりで構成された少数精鋭の武力組織「公安9課(通称・攻殻機動隊)」を設立。

電脳戦のエキスパートでもある世界一の義体使い草薙素子(田中敦子)率いる公安9課は、天才的なハッカーの引き起こした「笑い男事件」をはじめ、高度な情報化社会が引き起こす数々の奇妙な事件の解決へと身を投じていくことになります。

 

見どころ

『攻殻機動隊SAC』の1作目は、魅力的なキャラクターや作品を彩るBGM、分かり易い演出に作りこまれた世界観。本作の魅力はいくつもあれど他のアニメ作品と比較してずば抜けて優れている点は、それらを上手に牽引し、視聴者をSAC世界の中にゆったりと引き込んでいってしまう、じっくりと練られたシナリオにあります。

本作には、2種類のシナリオが存在しています。1つは強大な敵との戦いを描く、SACの根幹を成す連載型シナリオ「笑い男事件」。もう1つはSAC世界の導入役でもあり、SAC世界の広がりを感じさせる役割を担った一話完結型のシナリオ。それぞれに違う役割が持たされており、双方が入り混じることで視聴者が飽きないような配慮がなされているのです。

連載型シナリオ

連載型シナリオでは、6年前に姿を消した「笑い男」と呼ばれる1人の凄腕ハッカーが再び出現した事件を巡って話が展開されていきます。腐敗した日本の体制に一石を投じるためハッカーとしてのスキルを用いる大衆のヒーローとしての彼と、その一方で自己利益の追求にその技術を使う「笑い男」の矛盾した姿。

一時は姿を消した彼が再び現れた理由、実像に塗りたくられた虚像をはがしていった先に見える「笑い男」の正体は必見です。謎が解明されるたびに新たな謎が発見される展開から、常に先が気になるような仕掛けが施されています。次から次へと見る者をいざなっていくのが、連載型シナリオの特徴です。

一話完結型のシナリオ

一話完結型のシナリオとして、中軸に高度なテクノロジーが生み出した弊害や疑問(主に電脳化や義体化など)に据え、「思考・学習する能力のある人工知能にゴースト(意識ないし魂のようなもの)は宿るか?」、「死ぬまで両親から義体化を許されなかった男が、死後に鋼鉄の体を手にして考えたことは何か?」などの命題を魅力的なシナリオに乗せて投げかけてきます。

もちろん9課の面々は組織としての立場から1つの結論を出して各々行動していきますが、投げかけてくる命題に対して作り手がその明確な答えをシナリオ内で明かすことはありません。終わったのに終わった気がしないような、満足感とも空虚感ともつかぬ不思議な余韻に浸してくれるのは、SACの一話完結型シナリオならではの魅力でしょう。

2つのシナリオが上手に混じり合い、飽きさせない構成は2期に当たる2nd GIGにも継承されていきます。神山健治のTVアニメ初監督作品であり、それぞれ違う魅力を孕んだ2種類のシナリオと、それを彩る演出は未だに視聴者の心を掴んで離しません。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 2nd GIG【2004年】

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX 2nd GIG
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あらすじ

公安9課の崩壊及び「笑い男事件」から2年。ある日「個別の11人」と名乗る武力集団によってビル立てこもり事件が発生します。警察の手に余ると判断した茅葺よう子総理大臣(榊原良子)は、とある理由から解散していた公安9課を一時的に再結成して事態の収拾を依頼。

テロリストの1人が死ぬ直前に不穏な発言を残すも、隊長である草薙素子の機転もあって事件を無事解決することに成功し、その能力の高さと必要性を認められた公安9課は正式に復活を果たします。

しかし、それは難民問題を巡る新たな戦いの始まりでした。一見無関係なはずの別々の事件でチラつく黒服の男たちの影、それぞれの現場で散見される「個別の11人」のシンボル。公安9課の行く先々に現れては権力を振りかざし、彼らの妨害行動を取る内閣情報庁所属の合田一人(西田健)。政治的な駆け引きにその身を縛り付けられながら、公安9課は再び犯罪の取り締まりを開始します。

見どころ

前作放送から2年。一目でわかる変化は、よりパワーアップした作画と演出でしょう。シリーズを通してOPを手掛けるロシアの歌姫Oligaの名曲『rise』に乗せて流れていく美麗なアニメーションに、前作のファンも新規の視聴者ものっけからくぎ付けにされてしまいます。

作品全体の構成は前作のものを丁寧に踏襲しており、形式としては前作における連載型シナリオである「笑い男事件」が「個別の11人事件」へと替わり、基本はこの「個別の11人事件」にまつわる回と、1話完結式の回が入り混じって進んでいきます。

前作からの変化

今作のストーリー傾向は前作から大きな変化を遂げます。前作では、起きる事件に対してほぼ蚊帳の外の存在である"公安9課"が依頼により介入していくシナリオばかりでした。

しかし今作では、9課のメンバーがシナリオの重要人物とガッツリ関連性があったり、9課のメンバーそのものが最初から事件の中心に立たされています。前作では(わざと自分たちをおとりにするパターンを除いて)犯罪者たちから標的にされることのなかった公安9課を、目的遂行の仇と認識した悪役が登場するなど、公安9課そのものが中心となってシナリオを牽引していくことに。

常にポーカーフェイスを浮かべている9課の面々が見せる意外な一面や、とあるメンバーが9課に所属するに至った経緯、そして磨き上げられた彼らのスキルの雛形、私情の混ざる余地のなかった前作では見ることの出来なかった9課の魅力をたっぷりと堪能することができます。

「新たに動き出した陰謀」「少数精鋭がための弱点とは何か」「上手に公私混同して仕事をこなしてきた草薙素子の素顔」「9課結成の経緯」など、前作2クールでは詰め込みきれなかった神山監督の描く攻殻ワールドの発展系がそこにあります。

攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX Solid State Society【2006年】

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あらすじ

草薙素子が公安9課を去って2年。彼女の後任としてリーダーに抜擢されたトグサ(山寺宏一)率いる公安9課は、梵字の刺青の入った男が次々と自殺する事件の調査をする中で、彼らがウイルスを使用した大規模なテロをたくらんでいることを突き止めました。

しかし、取り調べに応じていた重要参考人であるカ・ゲル大佐(天田益男)が、突如として国外退去をはかって空港に立てこもる事件が発生。トグサ達は犯人をあと一歩というところまで追いつめることに成功するも、錯乱した犯人は「傀儡廻が来る」と言い残して自殺してしまいます。

公的な手段での事件解決の糸口を失った公安9課課長の荒巻大輔(阪脩)は、テロの首謀者と思われるカ・ルマ将軍の潜伏先への突入を決意します。そして別行動していたバトー(大塚明夫)には、カ・ルマ将軍の隠れ家であるサイボーグ病院の調査を命令。病院に駆け付けたバトーが目にしたのは、多脚戦車と戦闘する1人の女性…。それは2年前に行方をくらませた草薙素子の姿でした。

見どころ

今作は前作・前々作と違い、劇場公開を当初から予定して制作されていました。そのため、以前の作品と比較して今作の作画のクオリティは劇的に向上しており、初見の方はその圧倒的な美しさにまず目を奪われることになるでしょう。また作画へのこだわりは単純な美しさにとどまらず、演出面にも見て取ることができます。

映像表現

例えば、平面で描かれているはずの登場人物が、カットはそのままに徐々に角度を変えていく演出によって立体的な躍動感を表現しています。他にも、とある人物が高所から飛び降りるシーンでは、顔のアップから始まり風圧でゆらゆらと揺れる全身へと徐々にカットが移って、広大な空中を漂う人物が重力に負けて落ちていく、といった描写がされています。このような映像表現は見るものを飽きさせません。

ストーリー展開

シナリオ面では、新たなる強敵「傀儡廻」を中心に話が展開していくことになります。「傀儡廻とは何か」、「ソリッドステイトとは何か」と今作も序盤から中盤にかけて謎が謎を呼び、終盤にかけて一気に紐解かれていく『攻殻機動隊SAC』シリーズお馴染みの気持ちの良いストーリーは健在です。

またエースかつ隊長だった草薙素子が公安9課を去ってしまっている点も旧作ファンは見逃せません。精神的な意味でも、戦力的な意味でも中心だった彼女の不在が9課にもたらしたものは何か。

そして今作も「変わるものと変わらないもの」「犯罪者でありながら正義の理念を掲げて行動する者と、悪人を裁く正義の味方でありながら自分たちでは救えない人々がいる社会にもどかしさを感じる者」など、明白な答えがない命題をアニメーションに乗せてコッソリと視聴者に提示してきます。

現代社会にも通じるそんな哲学的な問いかけは、観る者を作品の世界にどっぷりと引きずりこんでしまうのは言うまでもありません。神山監督の贈る『攻殻機動隊SAC』シリーズの終幕を飾る作品。映像もシナリオも、観る者の心を掴んで離さない魅力的な構成は健在です。

最後に

神山健治監督はアニメの中に空想と現実を繋ぐパイプを設置するのが得意な人物なのでしょう。わざと視聴者がアニメの世界に潜り込む余地を残しておき、アニメの考察に夢中にさせるのが大好きな人物なのです。そんな彼が監督として再び据えられることが発表された攻殻機動隊の新シリーズ。ファンの期待の声が多々上がっていますので、非常に楽しみですね。