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青年から悪魔役まで!個性派の重鎮アル・パチーノ出演作8選

アル・パチーノと言えば、まず思い浮かぶのは代表作『ゴッドファーザー(1972年)』におけるマフィアのボス役ですが、他の出演作を観ていない方も多いのではないでしょうか?演じた役柄は刑事、弁護士、繊細な若者、盲目の紳士、悪魔役まで多彩です。その実力を遺憾なく発揮し、ファンを常に興奮させてきました。

2017年公開『ブロークン/過去に囚われた男』では、円熟味を増した演技でヒーローでもアウトローでもない"普通の老人"を好演しています。そんな名優アル・パチーノが主演する映画8選をご案内します。

ゴッドファーザー【1972年】

ゴッドファーザー
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あらすじ

1945年、海兵隊大尉のマイケル(アル・パチーノ)は恋人ケイ(ダイアン・キートン)を連れ、実家であるニューヨークの広大な邸宅へ帰還します。邸宅では、妹コニー(タリア・シャイア)の結婚パーティーが盛大に行われているのでした。

マイケルはケイに、自身の父ドン・コルレオーネ(マーロン・ブランド)はマフィアのボス"ゴッド・ファーザー"であるが、自身はマフィアにならないと告げます。父親ドンもマイケルには堅気の生活を送る事を望んでいたのですが、そんな矢先、コルレオーネ一族の運命を変える一大事が起こります。

見どころ

ゴッドファーザー三部作の記念すべき第一作。当初は、駆け出しのフランシス・フォード・コッポラ監督×無名の新人アル・パチーノ×落ち目とされていた名優マーロン・ブランド出演だった事もあり、映画会社より打ち切りの憂き目に度々さらされました。不朽の名作となった今となっては、信じられないエピソードです。

マフィアの内情だけでなく、イタリア移民の日常や肉親間の結束と分裂も描き空前の大ヒット。シリーズ化されて3作すべてにパチーノは出演しています。優等生気質の普通の若者が、マフィアのボスに相応しい冷徹な人物へと変貌を遂げる様が、鮮烈な作品です。



狼たちの午後【1976年】

狼たちの午後
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あらすじ

酷暑のある日、ニューヨーク市ブルックリンの銀行に3人の男たちが強盗目的でやって来ます。しかし犯罪に不慣れな男たちは、首尾よく事を進める事が出来ません。怖じ気づいた仲間の1人は途中で逃げ出してしまう始末。

残ったソニー(アル・パチーノ)とサル(ジョン・カザール)の2人で、なんとか金庫を開けさせたものの肝心の大金は輸送された後でした。警察もすでに銀行を囲んでいたため、銀行内で人質と共に籠城するというソニーたちにとっても想定外の事態となってしまうのでした。

見どころ

本作は実際にあった事件がベースとなっており、主人公にあたる実在の人物の風貌が、アル・パチーノに似ていたため主演となりました。出口なしの生活から抜け出そうと、起死回生の大勝負にでた若者たち。その悲哀は現代の閉塞感にどこか通じ、色褪せない普遍性を感じさせます。

70年代アメリカ映画を代表する作品のひとつで、相棒を演じたジョン・カザールは前述の"ゴッドファーザー"でも共演し、当時を代表する名優の1人となっています。原題「Dog Day Afternoon」は"犬も舌を垂らす程の酷暑の午後"を意味します。誰もが正気を失うある夏の1日、その"暑さ"にもご注目下さい。

セルピコ【1974年】

セルピコ
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あらすじ

ある夜、1人の若手刑事フランク・セルピコ(アル・パチーノ)が撃たれ救急搬送されます。彼はニューヨーク市警の麻薬課の刑事ですが、仲間内の警察官に発砲されたため負ったものでした。警察内部にはセルピコを殺したいと言ってる者が6人いる…ニュースを聞いた彼の上司はそう語ります。

社会秩序の番人たる警察官が、なぜ同僚の刑事に痛手を負わせる事となったのか。セルピコが意欲あふれる新米警察官だった時期へと物語はさかのぼり、彼と警察組織の関係性がひもとかれて行きます。

見どころ

正義感だけを武器に、腐敗した警察組織の中で孤立無縁に生きる刑事セルピコ。署内に居場所のない鬱屈を、繊細かつ型破りな魅力たっぷりに若きパチーノが演じていきます。実話をベースにしており、こんな酷い事が!と驚かずにいられないエピソードがドキュメンタリータッチで描かれていきます。

特筆すべきは、私服で現場へおもむくパチーノのファッションです。現在のストリートカジュアルに通じる着こなしの数々。セルピコの部屋も、さりげないセンスが魅力的で参考にしていただきたいスタイリングが満載です!

ジャスティス【1980年】

ジャスティス
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あらすじ

曲がった事を嫌う弁護士アーサー(アル・パチーノ)はその性格ゆえ裁判官フレミング判事(ジョン・フォーサイス)と対立しがちです。えん罪の疑いのある者や重すぎる刑を処された者の減刑が出来ないか?など、熱血弁護士として日々奔走するアーサー。

そんな中、あのフレミング判事が強姦罪で訴えられるという事件が起こります。日頃から反目しあっていた2人ですが、なぜか今回の弁護をアーサーにまかせたい、とフレミング判事から指名がはいります。

見どころ

法曹界にはびこる腐敗と自身の正義感の間で揺れ動く若き弁護士を描いた本作。組織と自身の良心の板挟みとなり、ある意味アル・パチーノお得意の役柄となっています。

しかし本作では前述の『ゴッドファーザー』や『セルピコ』の悲壮感さえ漂うトーンとは異なり、"当たって砕けろ感"があって観ている側に不思議な活力を与えてくれます。爽やかで観やすく隠れた名作です。名シーンと名高いクライマックスの長台詞はアル・パチーノの真骨頂ですので、ぜひお楽しみ下さい!

ディアボロス/悪魔の扉【1998年】

ディアボロス/悪魔の扉
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あらすじ

64勝無敗を誇るフロリダの弁護士ケビン・ロマックス(キアヌ・リーヴス)は、その手腕からニューヨークの大手弁護士事務所へ特別待遇で引き抜かれます。ボスであるジョン・ミルトン(アル・パチーノ)に見込まれ、大富豪の家庭で起きた殺人事件をまかされる事になり、フロリダの頃とは比べ物にならない程忙しくなったケビン。

一方、慣れないニューヨークで淋しさをつのらせて暮らす妻メアリー・アン(シャーリーズ・セロン)は、その言動が次第に怪しくなっていき精神を病んでいくようになります。

見どころ

法廷劇は重厚すぎて苦手…という方におすすめのサスペンス・ホラーとでも呼びたい快作です。虚飾に満ちたビジネスの世界に、中世ホラー的な要素が絶妙に絡んでいきます。しかし珍妙な味付けにはなっておらず、キアヌ×パチーノの演技合戦が鮮やかです。2人でダウンタウンやチャイナタウンを散策するシーンはユニーク。ミルトンは常人とは違う?と説得力を持たせ観客を引き込んで行きます。

パチーノが世の中の矛盾を次々と論破してゆくラストシーンは、シェークスピアの舞台劇のようで、台詞回しから手の使い方まで圧巻です。悪魔主義を公表している?!ローリング・ストーンズの名曲「黒くぬれ!」が使用されているのはご愛嬌、ラストまでぜひご覧下さい。

スケアクロウ【1973年】

スケアクロウ
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あらすじ

5年越しの船乗り生活を終えたライアン(アル・パチーノ)は、まだ会った事のない我が子に会うためデトロイトを目指しています。一方、6年間服役していたマックス(ジーン・ハックマン)は心機一転、洗濯屋を始めるためピッツバーグを目指しています。2人はヒッチハイクで出会い、共に目的地まで旅する事になります。

道中マックスの妹の家へ立寄った際、酒の席で喧嘩沙汰をおこし2人は更生施設送りとなってしまいます。ようやく出所した後、とうとうライアンの妻と子がいるデトロイトへたどり着くのですが…。

見どころ

主人公たちの心の交流が映画ファンに長く愛されているロードムービー。得意のアクションを封印し、人生につまづいた若者をリアリティーあふれる演技で体現していくパチーノ。相棒を演じるジーン・ハックマンは、極度の寒がりで孤独にさいなまれる男を好演しています。当時最高のコンビと言っても過言でない、名優2人による珠玉の名作です。

スケアクロウは「かかし」を意味し、みすぼらしい人物などを指しています。劇中で「かかし」について2人がかわす会話にもご注目ください。

セント・オブ・ウーマン/夢の香り【1993年】

セント・オブ・ウーマン:夢の香り
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あらすじ

名門高校へ奨学金で入った苦学生チャーリー(クリス・オドネル)は、休暇に故郷へ帰る旅費を稼ぐため、とあるアルバイトを始めます。それは盲目の退役軍人フランク・スレード中佐(アル・パチーノ)の世話をするという仕事です。中佐は家族をも拒絶し、離れで1人暮らす非常に偏屈な人物でした。

一方、学校生活では同級生たちが校長の愛車に落書きするところを目撃してしまい「実行者の名を告げれば一流大学へ推薦し、告げなければ退学」を学校側より突きつけられます。思い悩むチャーリーを伴って、中佐はニューヨークへ旅に出ます。次第に心を通わせて行く2人ですが、この旅には"中佐のある計画"が待ち受けているのでした。

見どころ

悩める若者を体現してきたパチーノですが、中年期に入ってからの代表作として外せない本作。無冠の帝王であった彼に、初のアカデミー主演男優賞をもたらした記念すべき作品です。盲目の退役軍人という癖のあるキャラクターを素晴らしい演技で体現しています。

"盲目"という特徴を映像化する事により、観客に見えないはずの心の闇が手に取るように感じられる演出にもご注目ください。中佐が美女と踊るタンゴは名シーンと語り継がれており必見です。

カリートの道【1994年】

カリートの道
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あらすじ

刑務所から出所したばかりのカリート・ブリガンテ(アル・パチーノ)は元麻薬王。出所早々、ディスコ店の経営という仕事にもありつきますが、街で暮らす人々は変わり義理や仁義は通用しない社会になっていました。

自身の実力も地位も以前とは違うと自覚し、ひっそりと堅気になる夢を温めるカリート。南国バハマで、昔の恋人ゲイル(ペネロープ・アン・ミラー)と暮らしたいと金を貯めるのでした。そんな折、借りのある弁護士デイヴ(ショーン・ペン)から、マフィアのボスを脱獄させる手助けを頼まれてしまいます。

見どころ

パチーノのハードなバイオレンスがヒップホップカルチャーに多大な影響を与えた、ブライアン・デ・パルマ監督の怪作『スカーフェイス(1984年)』。その続き⁈とも取れる世界が繰り広げられる同監督作品が『カリートの道』です。ラブストーリーの切なさも胸に迫り、中年パチーノの不器用な魅力たっぷりです。

特筆すべきは、同じくデ・パルマ監督の名作『アンタッチャブル(1987年)』の"階段越しのアクションシーン"に勝るとも劣らない、迫力のクライマックス。自由を渇望するアンチ・ヒーローのワイルドさに酔いしれていただきたい良作です。

最後に

もはや生ける伝説!ともいうべきアル・パチーノが放つ様々なキャラクター、いかがでしたでしょうか?古い映画はあまり…という方にこそ触れてほしい、名作が勢揃いしています。フランシス・フォード・コッポラやブライアン・デ・パルマといった名監督と渡り合って来た演技派ゆえに、今回あげた作品以外にもおすすめ映画が、まだまだあります。

正統派二枚目でもなく、小柄な俳優が、なぜ現在に至るまで人々を魅了し続けるのか?作品の中で、ビビッドに輝き続ける名優の姿をぜひご堪能ください。