アンソニー・ホプキンス演じる本シリーズの主人公ハンニバル・レクター、原作小説の「レッド・ドラゴン」初登場時に脇役でした。しかし脇役にしておくにはもったいないほどの存在感を持っていたため、彼を主人公とした小説「羊たちの沈黙」が執筆されたのです。
今回はそんな『ハンニバル』シリーズを一挙にご紹介!レクター博士の魅力をお届けします。
羊たちの沈黙【1991年】
あらすじ
アメリカ・ミズーリ州のカンザスシティでは、連続殺人鬼"バッファロー・ビル"が世間を恐怖に陥れていました。殺人鬼の手がかりを捜すため、新人FBI捜査官であるクラリス(ジョディ・フォスター)は、収監中の殺人犯である精神科医ハンニバル・レクター(アンソニー・ホプキンス)に助言を求めに行きます。監獄内にいるにも関わらず、ハンニバルが全ての主導権を握り、コントロールしていくハンニバル。クラリスは彼の助言をもとに、やっとのことで犯人にたどり着きますが、その頃ハンニバルは…。
見どころ
シリーズ1作目を飾る本作は、シリアルキラーの登場する映画が好きなら一度は観ておくべきといえる名作です。アンソニー・ホプキンス演じるレクター博士の初登場時の佇まいや表情は圧巻で、その後も見事なまでに猟奇的な人間性を表現しています。警官の顔を食い破った後で、音楽に浸るシーンは不気味のひとことです。
ハンニバルの発言から感じる知性、行動の異常性、そしてその両方が醸し出すカリスマ性は観るものの目に否応なく魅力的に映ります。 ちなみにこの作品で、アンソニー・ホプキンスはアカデミー主演男優賞を、ジョディ・フォスターはアカデミー主演女優賞を獲得しています。
感想
クラリスの物語のはじめの一歩となる1作であり、名作中の名作といわれるだけの実力派ぞろいの映画です。俳優陣の名演技はもちろん、全体を通して流れているミステリアスな雰囲気と不安を醸し出すような映像美が印象的です。
そんな中で紅一点といえるクラリスがかわいいからこそ、一層ハンニバルの知的で悪辣な部分が引き立つのでしょうか。見終わった後にハンニバルの印象が強く残りますが。驚くべきは今作でのハンニバルはあくまでもわき役である点。事件は解決したはずなのに、苦いものを口に含んだような後味の悪さを引きずりながらも、確かに面白い映画だったと確信できます。
ハンニバル【2001年】
あらすじ
バッファロー・ビルの事件から10年。ハンニバルに懸かった懸賞金が目当てのレナルド・パッツィ(ジャンカルロ・ジャンニ―二)や、ハンニバルに顔の皮を剥され、車いす生活を余儀なくされたことを猛烈に憎んでいるメイスン(ゲイリー・オールドマン)らが、彼の行方を探していました。一方ベテランFBI捜査官になったクラリス(ジュリアン・ムーア)もある事件で揉め、名誉挽回のために10年前取り逃がしたハンニバルを再度捕まえることになるのでした。
見どころ
今回は前作の『羊たちの沈黙(1991年)』のようなミステリー要素はありませんが、ハンニバルの、どんどん増していく残虐性と圧倒的な異様さ、異常さが見どころ。特に当時衝撃を与えた、クラリス上司であるクレンドラ―(レイ・リオッタ)のシーンは強烈です。この作品でもアンソニー・ホプキンスはアカデミー主演男優賞を受賞しています。
前作でも描かれていましたが、ハンニバルと捜査官クラリスのラブシーンとも取れる部分が描かれています。例えばメリーゴーランドに乗っているハンニバルが手を伸ばしてクラリスに触れるシーンは、一般的なキスシーンなどではありませんが、サイコスリラーならではの世界観で描かれるラブストーリーのようですね。
感想
羊たちの沈黙のような映画を期待していたので、ミステリー要素がないことに驚かされました。どちらかというとグロ方面に特化しいてるので、見る人を選ぶかもしれません。ただその凶暴さを増しながらも確かな知性を感じられる場面、ハンニバルとクラリスが独特な関係性を築いていくところなど、見ていてどんどん引き込まれる内容だったと感じます。
ただメインの感想は異様なまでにどろどろとした人間の闇部分にあてられそうになるところ。ハンニバルはひどく残酷なことをしているはずなのに美しいと感じてしまうし、どんどん壊れていくウィルを見るのは切なく感じます。見終わった後もしばらくは不思議な感覚に襲われる映画です。
レッド・ドラゴン【2002年】
あらすじ
1980年。FBI捜査官であるグレアム(エドワード・ノートン)は、素晴らしい推理力と犯罪心理の知識が豊富な精神科医ハンニバル(アンソニー・ホプキンス)と協力して、ある事件の捜査を行うことに。ところが追っていた連続殺人犯がハンニバルということを突き止め彼を逮捕するグレアム。事件の数年後、グレアムは一家惨殺事件を解決するため、以前捜査に協力してくれていたハンニバルに再び助言をもらいに行きます。
見どころ
『ハンニバル』シリーズで3作目、時系列的には2番目の作品となっています。あの天才的で狡猾なハンニバルがどのようにして、捕まるのか、また捕まえた相手に協力するのかに注目です。
作品発表順に観るのももちろん良いですが、『レッド・ドラゴン(2002年)』を観た後に『羊たちの沈黙(1991年)』を観直してみてみると、ハンニバルと対面する人物の会話に、観ている側も緊張感が煽られます。原作小説に登場するハンニバルは脇役なのですが、映画『羊たちの沈黙(1991年)』の創作意欲を沸かせた彼の存在感はまさに圧巻です。
感想
羊たちの沈黙の少し前のお話なので、クラリスが出ないのが少し残念。ただ、最初からハンニバルの異様さがいかんなく発揮されているので、いきなり物語に引きずり込まれるように楽しむことができました。ハンニバルが捕まる前はどんな暮らしをしていたのか、といったところがうかがえるのも魅力的でしたね。
ただメインの感想となるのはやはり事件を追っている中での、プロファイリングや、今回相棒となっているウィルとの心理的な駆け引き。サスペンスを見る醍醐味として先の推理をしながら見る方法がありますが、良い意味で裏切られたように思います。特に羊たちの沈黙でファンになった人なら面白く見れる映画です。
ハンニバル・ライジング【2007年】
あらすじ
1944年、幼きハンニバル(ギャスパー・ウリエル)は戦争で両親を亡くし、隠れ家で妹と共に過ごしていました。そこへ6人の敗走兵が来ると、空腹のあまり妹を殺して彼の前で食べてしまいます。ショックで記憶を失っていたハンニバルは、学生となりついに真相を思い出します。8年が経ち青年に成長したハンニバルの、男たちへの復讐の物語です。
見どころ
前3作で異常性を存分に発揮してきたハンニバル。本作では普通の少年がどうやって食人鬼へとなっていくのか、その原点を知ることができます。1人また1人と復讐を果たしていくハンニバルの姿は、数十年後の食人鬼ハンニバル・レクターの姿を彷彿させます。
感想
見ていてそれは復讐したくもなるだろう。と思える若きハンニバルの復讐劇です。妹がかわいいですし、若いころのハンニバルも素敵です。ただ前作までの残酷でありながら美しい、知的な犯罪者であるハンニバルが好きな人にとっては、少し泥臭く感じてしまうのではとも思えました。
ただ映画としてのテンポは非常に良いです。不必要な説明がなく、また反して意味が通じないところもないので、映画のストーリーを追う点では見やすい映画ですし、単体の物語としてならストレスなく見られます。ハンニバル作品であることを強く意識しなければ、面白い映画だといえるでしょう。
最後に
セリフの1つ1つや行動を見ていると、その時は何を言っているのか分かりませんが、後々緻密に計算された言動だということに気付くでしょう。そして、そのときこそハンニバルの天才的な知性と猟奇性という極端な性質を併せ持つキャラクターに引き込まれる瞬間なのです。
ちなみにハンニバルはこの映画から躍進して、海外のテレビドラマにもなっています。気になったらぜひ今後も"ハンニバル・レクター"を追いかけてみてください。
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