そんな浅野忠信の過去作、あまり知らない方も多いのではないでしょうか。ということで今回は、過去のイチオシ映画10作をご紹介します。
目次
鮫肌男と桃尻女【1999年】
あらすじ
あるホテルで働く桃尻とし子(小日向しえ)は、ホテルを経営している叔父が嫌でホテルを飛び出してしまいます。そんな中、銀行強盗で奪ったお金を独り占めして逃げている鮫肌黒男(浅野忠信)と出会い、2人の逃避行が始まるのでした。
見どころ
望月峯太郎の漫画『鮫肌男と桃尻女』を映画化。監督は浅野忠信と何度もタッグを組んでいる石井克人です。北野武映画に常連組の俳優が多数出演しており、暴力表現も激しいですが、笑いもふんだんに含まれているブラックユーモアの効いた作品となっています。浅野忠信の演じる鮫肌がとにかくカッコ良いです。
ねじ式【1998年】
あらすじ
妻と離れて暮らしていたツベ(浅野忠信)は、妻が別の男の子どもを妊娠したことを知ります。ツベはショックを受けて自殺を図りますが死に切れず、妄想に明け暮れる日々を送るようになります。そんなある日、ツベはメメクラゲに噛まれて手の静脈を切ってしまいました。
ツベは医者を探して町を徘徊しますが、何故か産婦人科に入ります。そこで○×方式という手術を受けてしまい、傷口にねじを取り付けられてしまうのでした。
見どころ
つげ義春の漫画『ねじ式』を映画化。漫画のシュールな雰囲気が色濃く再現されており、浅野忠信の虚無感を表現したような演技は見る者に不安を与え感情を揺さぶります。本作はつげ義春作品の他のストーリーもミックスされていて、浅野忠信ファンだけでなく、つげ義春ファンも十分に楽しめる作品です。
SURVIVE STYLE5+【2004年】
あらすじ
石垣昌宏(浅野忠信)は妻のミミ(橋本麗香)を何度も殺した男。しかしミミは何度殺しても蘇ります。石垣は殺しても蘇る妻を恐れると同時に、憎しみにも似た愛情を抱き始めました。ミミもまた、無言のまま何度も石垣の前に現れ、不敵な笑みを浮かべ続けるのでした…。
見どころ
この映画は複数の物語で成り立つクライムサスペンスで、登場する人たちの奇妙ながらコミカルでもあるストーリーが同時に進行していきます。どのストーリーもなかなかスパイスが効いていてブラックジョークが鋭く、映像にも凝っているので飽きずに最後まで楽しめるでしょう。
また、劇中の音楽を手がけているアーティストも様々。中でも岡村靖幸と電気グルーヴの石野卓球が作った曲『come baby』は本作と雰囲気が非常にマッチしていて、こちらも必聴です。
ELECTRIC DRAGON 80000V【2001年】
あらすじ
主人公の竜眼寺盛尊(浅野忠信)は爬虫類専門のペット探偵で、幼い頃に電気事故に遭って以来、怒りっぽい性格になっていました。一方、昼間に電気修理工をしている雷電仏蔵(永瀬正敏)は、竜眼寺の中に眠る竜の存在に気付き、彼をキレさせて自分と戦わせようとします。
見どころ
『狂い咲きサンダーロード(1980年)』で名を知らしめた石井岳龍監督の作品。モノクロの映像の中、全編を通してノイズギターが鳴り響き、狂ったような漏電が背景につきまとうサイコ感が満載な映画です。浅野忠信と永瀬正敏は口数の少ない役柄ながら台詞はどれもカッコ良く、ストーリー展開は非常にスピード感があるので、とにかく難しいことは考えずに楽しめます。
地雷を踏んだらサヨウナラ【1999年】
あらすじ
1972年、内戦が激化するカンボジア。一ノ瀬泰造(浅野忠信)は戦場でカメラマンをしつつ、アンコールワットに熱い思いを寄せていました。国外退去を命じられベトナムへと移りますが、どうしてもアンコールワットへ行きたい気持ちを抑えられない一ノ瀬は、ついに密入国を果たします。
見どころ
戦場カメラマンの一ノ瀬泰造はカンボジアで捕縛され処刑されました。彼の残したメモなどを元に書籍化され、それが原作となった映画です。一ノ瀬泰造の行方不明が報道された日に浅野忠信は生まれ、顔も酷似していた事から彼以上の適役はいないと抜擢されました。子どもと触れ合うシーンで浅野忠信が見せる嬉しそうな表情がとても印象的です。
ヴィタール【2004年】
あらすじ
高木博史(浅野忠信)は交通事故の後遺症で、医学に携わっていた以外の記憶を無くしてしまいました。とりあえず医学部に入学をすることになり、そこで解剖実習が始まります。高木は死体を解剖している間だけ、どこか懐かしい気持ちに浸れるのでした。
見どころ
監督は『鉄男(1989年)』で名を知らしめ、その後も人間の本質に迫る作品を世に送り続けている塚本晋也。人体解剖と記憶喪失をテーマにした映画で、浅野忠信が記憶喪失の若者を演じていますが、まるで消えてしまいそうな儚さをまとった演技は妙なリアリティがあります。
茶の味【2004年】
あらすじ
春野一(佐藤貴広)は好きになった女の子が転校してしまって落ち込んでいました。自分の思いを伝えるどころか、結局一度も話ができなかったことを後悔する日々…。
東京から帰省していた春野アヤノ(浅野忠信)は、結婚した元恋人の寺子アキラ(中嶋朋子)に一言お祝いのメッセージを送りたいと思っていました。意気込んで相手の家に向かうのですが、どうしても途中で引き返してしまい…。
見どころ
石井克人監督作品で春野一家に起こる日常の些細な問題や悩みを描いた群像劇です。同監督の作品には、前述したバイオレンス映画『鮫肌男と桃尻女』がありますが、こちらは対照的に非常にほのぼのとした作風。浅野忠信が演じるアヤノもほんわかとした気の抜けた役で、現在の浅野忠信が多く演じる役に近い印象があります。
珈琲時光【2004年】
あらすじ
井上陽子(一青窈)は、台湾出身の音楽家・江文也の資料を探し求め町々を巡っていました。そして古書店で竹内肇(浅野忠信)と出会います。肇は陽子に恋心を抱き、どんなに面倒な調べ物でも喜んで引き受けていました。しかし陽子の取材に同行している時、彼女が妊娠していることを知り…。
見どころ
小津安二郎監督の生誕100年を記念して、同監督の『東京物語』をオマージュして作られた映画。ホウ・シャオシェン監督が「"珈琲を味わうときのように、気持ちを落ち着け、心をリセットし、これからのことを見つめるためのひととき"」と語る通り、陽子と肇の関係を優しく描いている作品です。浅野忠信の温かみのある演技もさることながら、一青窈の自然体の演技もいい味を出しています。
御法度【1999年】
あらすじ
新撰組に入隊してきた美しい青年・加納惣三郎(松田龍平)。同期で入隊した田代彪蔵(浅野忠信)は衆道(男色)の趣味があり、加納を衆道に引きずり込もうとします。加納は拒否をしますが、それ以来、惣三郎に対して様々な噂が立ち始めるのでした…。
見どころ
『戦場のメリークリスマス(1983年)』で有名な大島渚監督の遺作となる今作は、男色をテーマにした愛憎劇。浅野忠信のカッコ良さもさることながら、当時16歳だった松田龍平に色気がありすぎると話題になりました。松田龍平はこれが映画デビュー作で、相手役の浅野忠信が彼の演技をしっかりと支えています。
殺し屋1【2001年】
あらすじ
ヤクザを滅亡させようと企む謎の男ジジイ(塚本晋也)は、いじめられっ子だった少年イチ(大森南朋)を手懐けてヤクザを殺めるように依頼していました。ある日、安生組の組長が大金を持って姿を消します。それを調査していたヤクザの垣原(浅野忠信)はイチが殺したことをつきとめ仇討ちを画策しますが、だんだんイチという人間に興味を抱くように…。
見どころ
原作となる山本英夫の漫画『殺し屋1』を三池崇史監督が映画化。非常にエッジの効いた作風に仕上がっています。暴力描写や理解不能な性癖が描かれているので、万人に受け入れられる内容ではないかもしれませんが、浅野忠信のまさに怪演を目撃できる貴重な作品です。
最後に
若かりし頃の浅野忠信のオススメ作品をご紹介しました。石井克人、石井岳龍、塚本晋也、3人の監督作をピックアップしましたが、どの演技も今より捉えどころが無く、不思議な雰囲気。最近、浅野忠信にハマった方もぜひ過去作をご覧になってみてください。きっと彼の新しい魅力に気付けるでしょう。
スポンサーリンク