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『ハンガー・ゲーム』の登場人物を「色」で徹底解析してみた

『ハンガー・ゲーム2』は3部作の中で唯一、カラフルな彩りで作品が描かれています。

では、なぜ『ハンガー・ゲーム2』だけこんなにも色鮮やかなのでしょうか。今回は登場人物の心理描写を巧みに表現している「色」を、ストーリー展開の伏線として読み解きます。

『ハンガー・ゲーム』は期待はずれ?

『ハンガー・ゲーム』シリーズは1000万部越えのベストセラーの原作を元に、当初から3部の構想で制作されていました。
ハンガー・ゲーム
amazon.co.jp

そのためか、伏線が多く登場人物の心理描写が分かりづらいという声が日本では多く聞かれます。そこで、各場面で使用されている「色」や、登場人物の好きな「色」、身につけている「色」から心理状態を読み解くことで、キャラクターの個性を知り、今よりも少しだけ楽しく『ハンガー・ゲーム』を観ることができる手助けとなればと思い、筆を取りました。



『ハンガー・ゲーム』の背景

独裁国家パネムでは、富裕層が暴利をむさぼる首都キャピタルと、キャピタルの豊かさを支える12の地区によって構成されていました。パネムでは過去に起きた反乱の戒めとして、毎年各地区の12〜18歳までの男女1人ずつが選出され、「ハンガー・ゲーム」と呼ばれる殺し合いのゲームに参加することが義務付けられています。

主人公のカットニスは幼い妹の代わりにハンガー・ゲームへの参加を志願します。しかし、人に心を開くことが苦手で、森を愛するカットニスは殺し合いのゲームへの不安と恐怖に苦しみます。そんな彼女とは裏腹に、民衆は長年彼女に想いを寄せる同郷のピータと心を通わせるカットニスの姿や、自身の命が危険にさらされていても、人の「命」を大切にする姿に心を動かされていきます。そして独裁国家パネムを揺るがす革命へと物語は展開していくのです。

『ハンガー・ゲーム2』は革命へと物語が動く転換点でもあり、それぞれの人物や物語が深掘りされている作品でもあります。

色でみる『ハンガー・ゲーム』キャラクター像

カットニスは対照的な2つの色を持つ人物

ハンガー・ゲーム映画公式Instagramアカウント(@thehungergames)より

・性格

カットニスは小さい頃に鉱山の事故で父親を亡くし、現実を受け止められない母親と小さな妹のために狩りをしながら生計を立てています。そのため常に気を張り詰めており、疑い深く、堅物で反骨精神を強く持っています。

・本来のカットニスは「緑」

カットニスの好きな色は「森のような緑」です。緑が持つ意味とは「生命力」、「平和」、「癒し」、「受動的」など。

また、緑を好む人は争いごとを好まず、他人から頼まれるとノーと言えない優柔不断な特徴があります。本来のカットニスは人に安心感を与え、落ち着きと安らぎをもたらす「緑」のような人物なのです。

・周りから見えるカットニスは「赤」

一方で、世間からカットニスは「炎の少女」の愛称で親しまれ、「赤」のイメージを持たれています。赤が持つ意味とは「情熱」、「自己主張が強い」、「注目」、「破壊」です。

また、赤を好む人は生きようとするエネルギーが強く、リーダーシップを取ることに向いている特徴があります。赤は怒りや負のエネルギーを増長させたり、人の根源的なエネルギーや生きる意欲を掻き立てたりします。このような印象は、まさに、カットニスが民衆から革命のシンボルとして求められていることを示していると言えるでしょう。

・カットニスの本質は赤に染まってしまったのか?

ここまで論じたところで、どこからか「安らぎをもたらす人物には見えない」と異論が聞こえてきそうですね。しかし、カットニスは最後まで緑の心を持ち続けています。第1作『ハンガー・ゲーム』の「子守唄」を思い出してほしいのです。

ハンガー・ゲームに怯える妹のプリムや、死を目前にしたハンガー・ゲーム参加者のルーのために子守唄を歌って安心させてあげるシーンがありましたよね。また、ピータがカットニスに想いを寄せるきっかけも授業で子守唄を歌ったことです。子守唄には本来的に人を安心させる行動であるということを考えれば、カットニスが緑の心を持っていることにも納得がいくと思います。

ピータには本来の「緑」のようなカットニスが見えているのかもしれません。

「そばにいる」ことで皆の不安を和らげるピータ

ハンガー・ゲーム映画公式Instagramアカウント(@thehungergames)より

・性格

ピータはパン屋の末息子で、絵などペイントを得意としています。危機管理能力は高くなく、怪力の持ち主ではありますが腕が立つとはとても言えません。しかし、誰にでも心を開き、相手を信頼することのできる心根の優しい青年です。小さい頃からカットニスに想いを寄せ、彼女を精神的に支えています。

・哀愁を感じさせる「オレンジ」

ピータの好きな色は「夕焼けのようなオレンジ」です。オレンジが持つ意味とは、「自由」、「深い知恵」、「思いやり」、「親しみやすさ」です。

また、オレンジを好む人は陽気で社交的ですが、物事に対するこだわりが少なく、あきらめが早いという特徴があり、また洞察力に優れている部分も。オレンジは人から恐怖やプレッシャーによる心の不安や抑圧を取り除き、心身のバランスを整える効果があります。

・ピータの人柄がわかるエピソード

ハンガー・ゲーム参加者のモルフリングがピータをかばって命を落とすときに、ピータは「いいものがある。上を見て。きれいだろう。いろんな色があって」と日が沈む空を指しながら、モルフリングの死の恐怖を取り除きます。ピータは「オレンジ」のように、カットニスを始め、周りの人間の心の不安を取り除き、殺し合いのゲームの中でも人に安らぎを与えることのできる人物だったのではないでしょうか。

パネムの独裁者スノー

ハンガー・ゲーム映画公式Instagramアカウント(@thehungergames)より

・性格

スノーはパネムを支配する独裁者であり、カットニスの行動で反乱軍が勢いづくことを恐れ、彼女を殺そうと企んでいます。しかし「無駄な殺しはしない」、「嘘はつかない」という信念を持って国を統治している人物でもあります。

・イメージカラーは「白」

スノーはsnow(雪)を連想させるように、常に衣装は白です。白が持つ意味とは「始まり」、「神」、「未来」、「正義」です。白を好む人は、正義感が強く曲がったことを嫌い、自分に不必要だと思ったことは潔く切り捨てる特徴があります。スノーは悪役であるにも関わらず、「国家の安定のために」という強い信念を持ち、彼自身の正義を通す人物なのです。

反乱軍のリーダー、コイン

ハンガー・ゲーム映画公式Instagramアカウント(@thehungergames)より

・性格

『ハンガー・ゲーム3 FINAL レジスタンス(2015年)』、『ハンガー・ゲーム3FINAL レボリューション(2015年)』で反乱軍の指導者として活躍する女性です。

・水色のような「グレー」

彼女のイメージカラーはグレーです。グレーが持つ意味とは「調和」、「曖昧さ」、「不屈の精神」、「崇高な精神」。グレーを好む人は、バランス感覚に優れ人との関わりが上手であり、感情をあまり表面に出さないクールさが特徴です。

・グレーは白と黒を混ぜた色

詳しくは後述しますが、スノーたちキャピタルの色は「白」を基調にされており、対してカットニスたち反乱軍は「黒」が基調。

では、黒と白を混ぜたグレーとはどのような意味が込められているのでしょうか。コイルのイメージカラーは「グレー」であることを念頭に入れて『ハンガー・ゲーム3』をご覧いただければ、より深く作品を楽しんでいただけると思います。

色から見る『ハンガー・ゲーム』の伏線と見どころ

チームカラーの「ゴールド」

ハンガー・ゲームの勝者は生涯の生活が保証されているはずでした。しかし、『ハンガー・ゲーム2』ではゲームメーカのプルタークの企みにより、過去の勝者による第75回記念大会が開催されることになります。そこでエフィーの発案で12地区のカットニス、ピータ、過去の勝者のヘイミッチ、キャピタルから来た案内係のエフィーは4人でゴールドをチームの印として持つことになります。

ゴールドが持つ意味とは、「自分の価値」、「自信」、「成功」、「深い幸せ」です。そしてゴールドは自分の価値を認め、目標を持ち長い時間努力を続けることが必要だという意味があります。『ハンガー・ゲーム3』の革命に向けて辛く、長い生活が待ち受ける4人への伏線としても見ることができるでしょう。そして、ヘイミッチのゴールドを受け取ったハンガー・ゲーム参加者フィニックもその1人かもしれません。

12地区・反乱軍の「黒」

12の地区の人々が着ている服や、反乱軍は「黒」が基調となっており、スノーらキャピタルの「白」と対比されています。

また「刈り入れの日」や凱旋ツアーの最後に官邸を訪れたときなど、カットニスがスノーの前に姿を表すときは黒や紺など暗い色の服を着ています。黒が持つ意味とは、「頑固」、「意志の強さ」、「力強さ」、「孤独」です。

カットニスが黒を身につけるときは、いつも強い覚悟を持っているときです。そして、反乱軍が革命を成功させようと一致団結する姿にも意志の強さがあるように感じます。反乱軍(黒)の心を燃やすカットニス(炎の赤)はシンボルとして求められていくのです。

キャピタルの「白」

スノーのイメージカラーが白であるように、反乱軍の敵は「白」や「シルバー」が基調となっています。兵士、街並みや住居、スノーの衣装など身につけている物は白が多く用いられています。白の持つ意味などは、前に触れたので省略します。

対極なカットニスの「緑」と「赤」

革命のシンボルとして担ぎ上げられたカットニスですが、本来は争いを好まず、革命の渦中から逃れて平和に暮らしたいと誰よりも願っています。しかし周りからの期待に応えようと努力し、心身をボロボロにしながら戦います。それは炎が森を燃やすように、カットニスが革命のシンボルとして行動すればするほど、自身を燃やし、心が壊れていく様に重なって見えてきます。

総括

冒頭で触れたように登場人物の気持ちが伝わりづらかったときは、人物を色に置き換えてみと理解の手助けになるかもしれません。最も気持ちが分かりづらいカットニスは、本来の自分(緑)と周りから見える自分(赤)とのギャップが正反対なので当然ともいえますが…。

『ハンガー・ゲーム2』は最も色が多く使用されていることもあり、それぞれの思惑や人物の気持ちを色から見ることができます。ハンガー・ゲームは決して殺し合いのゲームではなく、人の心の機微が物語の主旋律なのかもしれません。

1人でも多くの方が、『ハンガー・ゲーム』シリーズを観て、キャラクターの気持ちをより感じてもらえるようになれば幸いです。