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観ると家族に会いたくなる。山田洋次監督のおすすめ映画10選

『二階の他人(1961年)』で映画監督としてデビューした山田洋次監督はその後、『男はつらいよ(1969年)』シリーズや『釣りバカ日誌(1988年)』シリーズ、『学校(1993年)』シリーズなどの大ヒット作品を長年にわたって数多く手掛けてきました。

山田洋次監督は"喜劇の名手"とも呼ばれ、その人情に訴えかける作品は観る人の心を自然と和らげ、同時に大きな感動を何度も巻き起こしてきたのです。近年では主に家族、特に"母"にスポットを当てて描いた作品が多く見られるようになりました。

今回はそんな山田洋次監督の、温かくも切ない家族を描いた珠玉の映画10選をご紹介します。

男はつらいよ【1969年】

男はつらいよ
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あらすじ

20年ぶりに故郷である東京の葛飾柴又に帰ってきた車寅次郎(渥美清)は妹のさくら(倍賞千恵子)たちと再会します。家族は寅次郎を歓迎しますが、順調に進んでいたさくらの縁談をぶち壊すなど色々な事をやらかし、再び出て行くことになった寅次郎。

その後、寅次郎は奈良で幼馴染の御前様(笠智衆)とその娘の冬子(光本幸子)に偶然再会し、御前様に恋をします。再び葛飾柴又に帰郷し冬子の元へ通うようになった寅次郎でしたが…。

見どころ

『男はつらいよ(1969年)』シリーズは最初、映画ではなくドラマとして放送されていました。しかしドラマでの結末に視聴者から抗議が殺到し、「寅さんをもう一度見たい!」という声が非常に多かったこともあり、ドラマを映画にしようと山田洋次監督が自ら企画し、制作することになります。

そして映画は見事大ヒットし当時の大衆の心をグッと掴んだことから、26年にもわたり下町人情喜劇として公開され続けていました。寅さんの愛称で知られる寅次郎の恋の行方に注目。



家族【1970年】

家族
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あらすじ

一家の大黒柱である精一(井川比佐志)は炭鉱の仕事に嫌気が差し、友人の誘いで北海道の開拓村に入ろうと決意します。そんな精一を献身的に支えてきた妻の民子(倍賞千恵子)は北海道への同行を渋りますが、精一は単身でも行くと民子の言葉に耳を貸さず、結局幼い長男と乳飲み子の次女を連れて家族で北海道に移住することに。

精一の父(笠智衆)を含めた家族5人の北海道へ向かう道中は、急行列車を乗り継いで連絡船に泊まるという、子どもや年寄りには辛い旅でした。そして万博で盛り上がる大阪の大都会に戸惑いながら、東京に到着した一家に試練が訪れます。

見どころ

本作は『故郷(1972年)』と『遥かなる山の呼び声(1980年)』を加えた民子3部作の1つとして、とても話題になりました。当時の高度経済成長期の東京や大阪をドキュメンタリータッチで描くシーンがあり、その時代が映画を通して見えてきます。

山田洋次監督が自身の乗り物好きを存分に活かし、鉄道を舞台にした作品です。長崎県の小さな島を離れ、北海道の開拓村まで旅する一家の姿を追った映像がリアルで、異色な仕上がりに。精一を支える民子の芯の強さに心を打たれます。

息子【1991年】

息子
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あらすじ

バブル絶頂期、東京でフリーター生活を続けていた哲夫(永瀬正敏)は、母の一周忌のため故郷の岩手に帰ります。東京での不安定な生活を父の昭男(三國連太郎)に戒められた哲夫は、下町の鉄工所に転職しアルバイトとして働くことに。

ある日、哲夫は取引先の会社で働いていた征子(和久井映見)という美しい女性に出会い、一目惚れします。彼女は聴覚に障害があることを知り哲夫は動揺しますが、それでも彼の恋する気持ちは日に日に募っていくばかりでした。翌年、哲夫は上京してきた父に「結婚したい女性がいる」と征子を紹介するのですが…。

見どころ

椎名誠の小説「倉庫作業員」が原作の本作は、日本アカデミー賞を始めとする数多くの映画賞を受賞。三國連太郎が演じる岩手県の山奥で暮らす父と、永瀬正敏が演じる都会でフリーターを続ける息子の心の葛藤や変化が繊細に描かれています。お互いが色々な思いを抱え、向き合っていく姿に胸が熱くなることでしょう。

十五才 学校IV【2000年】

十五才 学校IV
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あらすじ

中学3年生の大介(金井勇太)は、半年前から朝になると謎の腹痛に襲われ学校に行くことが出来ず、不登校生活を送っていました。学校を休むと昼頃に腹痛は収まるのですが、医者やカウンセラーに診てもらっても原因はわかりません。

そんなある日、雑誌に載っていた屋久島にある樹齢7000年とも言われる縄文杉に1度触れてみたいと思い、家出をしてしまった大介。母の彩子(秋野暢子)はそんな息子を心配しますが、父の秀雄(小林稔侍)は「意気地なしの大介がそんな遠くに行けるわけがない」とまともに取り合いません。そんな両親の心配をよそに大介はヒッチハイクをしながら屋久島へ向かい…。

見どころ

大ヒットした映画『学校(1993年)』シリーズの第4作目。これまでの作品は夜間学校や養護学校など"学校"そのものが舞台でしたが、今回の舞台は学校ではなく、学校に行かなくなった不登校の少年にスポットが当てられています。横浜から屋久島までのヒッチハイクの旅を描いたロードムービーだったため、全国各地でロケが行われ、4部作の中では異色の作品。旅を続けるうちに成長していく大介の姿に注目。

母べえ【2008年】

母べえ
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あらすじ

昭和15年(1940年)の東京、ドイツ文学者でユーモアを愛する父の滋(坂東三津五郎)は、家族に"べえ"をつけることが習慣になっており、子どもたちは母の佳代(吉永小百合)を"母べえ"、父を"父べえ"と呼んでいました。たくさんの愛に包まれて平穏に暮らしていた家族でしたが、日中戦争の激化によって生活は一変します。

ある日、帝国大学出身のドイツ文学者であることを理由に反戦を唱えた思想犯として逮捕されてしまった滋。残された家族は悲しみに暮れていましたが、佳代は滋を信じ小学校の代用教員として一家を支え始めます。

見どころ

映画スクリプターの野上照代の実話に基づいたエッセイを山田洋次監督が映画化。野上家の大黒柱である父べえが投獄されたことをきっかけに、それまでの生活が一変して苦しい生活になるも、一家を懸命に支えようとする母べえの強さに心が動かされます。夫がいない不安や寂しさを乗り越えて息子たちを守る母の姿に注目。

おとうと【2010年】

おとうと
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あらすじ

結婚してすぐに夫を亡くし、小さな薬局を営みながら女手ひとつで娘の小春(蒼井優)を育ててきた姉・吟子(吉永小百合)と、役者としての成功を夢見ながら無為に歳を重ねてしまった風来坊の弟・鉄郎(笑福亭鶴瓶)。

鉄郎は吟子の夫の十三回忌の席で酔っ払って大暴れをしてしまい、親戚中の鼻つまみ者となっていました。それから10年近くが経ち鉄郎は吟子とすっかり連絡が途絶えていましたが、娘のように可愛がっていた姪の小春が結婚することをたまたま耳にした鉄郎は、彼女の披露宴に駆けつけ…。

見どころ

時代劇を多く手掛けていた山田洋次監督にとって『十五才 学校IV(2000年)』以来10年ぶりの現代劇となりました。この作品で、姉・吟子を演じる吉永小百合と弟・鉄郎を演じる笑福亭鶴瓶の演技が話題に。また、1960年に『おとうと』を撮った市川崑監督に捧げられた作品でもあり、姉弟の絆を描いた感動のストーリーです。

小さいおうち【2014年】

小さいおうち
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あらすじ

昭和11年、田舎から出てきた布宮タキ(黒木華)は、東京の郊外に建つ小さな家で女中として働き始めます。小さなおもちゃ会社に勤める主人の平井雅樹(片岡孝太郎)は、妻の時子(松たか子)と5歳になる息子の恭一(市川福太郎)とともに穏やかな日々を送っていましたが、雅樹の部下である板倉正治(吉岡秀隆)によって歯車が狂いだします。

それから六十数年後、晩年のタキ(倍賞千恵子)が大学ノートに綴った自叙伝を読んだ親類の荒井健史(妻夫木聡)は、それまで秘められていたその家の真実を知ることに。

見どころ

第143回直木賞を受賞した中島京子さんの小説を映画化した作品。時子を演じる松たか子と晩年のタキを演じる倍賞千恵子の演技が光る中、若き日のタキを演じた黒木華さんが第64回ベルリン国際映画祭で最優秀女優賞(銀熊賞)を受賞しました。また国内でも第38回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞し、この作品も大きな話題に。

"おうち"というのは家族そのものであり、この映画はそんなどこにでもある小さな家族が抱える問題を女中のタキを中心に繊細に描いています。家族を支え続けるタキの強さに胸が熱くなるでしょう。

母と暮らせば【2015年】

https://www.youtube.com/watch?v=hvrs_103jRw

あらすじ

助産婦を営む伸子(吉永小百合)の前に、3年前に長崎の原爆で死んだはずの息子・浩二が亡霊となって現れます。浩二は恋人だった佐多町子(黒木華)のことが心残りでしたが、伸子が町子に新しい道へ進んでほしいと告げたことで2人の関係は変わっていくのです。

そんなある日、伸子が病に倒れてしまいますが、医学生だった浩二は亡霊であるがために知識はあっても手を差し伸べることができず…。

見どころ

井上ひさしが晩年に構想していた"ヒロシマ"、"ナガサキ"、"沖縄"をテーマにした「戦後命の三部作」の遺志を山田洋次監督が継ぎ、"ナガサキ"をテーマに制作された作品。

この世とあの世の人間が織り成す不思議な世界観をファンタジックに描きつつ、原爆という重いテーマをもとに戦争の悲惨さを伝えるストーリーは涙を誘います。母の伸子を演じる吉永小百合と息子の浩二を演じる二宮和也の共演が話題になりました。

家族はつらいよ【2016年】

家族はつらいよ
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あらすじ

夫の周造(橋爪功)はもうすぐ誕生日を迎える妻の富子(吉行和子)にほしいものはないか尋ねますが、返ってきた答えは何と"離婚届"でした。この出来事をきっかけに、子どもたちを中心とした熟年夫婦の離婚をめぐる大騒動が起きます。家族それぞれが抱えてきた不満が爆発し、崩壊していく平田家に待ち受ける運命とは…。

見どころ

本作は山田洋次監督にとって、『男はつらいよ 寅次郎紅の花(1995年)』以来約21年ぶりの喜劇映画となりました。近年増加している熟年離婚をテーマに、家族の大騒動を笑いを交えて描いています。翌年には続編となる『家族はつらいよ2(2017年)』が公開。主演の橋爪功を始め、蒼井優や妻夫木聡など実力派俳優が脇を固めます。

家族はつらいよ2【2017年】

家族はつらいよ2
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あらすじ

父の周造(橋爪功)はマイカーでの外出をささやかな楽しみにしていましたが、車に傷が目立つようになったことから高齢者の危険運転を心配し、彼の運転免許を返上させようとする家族たち。それに気づいた周造は大激怒し、平田家は不穏な空気に包まれてしまいます。

そんなある日、妻の富子(吉行和子)が旅行に出かけたことで束の間の独身貴族を楽しむ周造は、行きつけの居酒屋の女将・かよ(風吹ジュン)を乗せて車を走らせますが…。

見どころ

熟年離婚がテーマの『家族はつらいよ(2016年)』に対し、今回は無縁社会がテーマになっています。熟年離婚と無縁社会はどちらも多くの人が目を背けてきた現代社会が抱える家族の問題であり、その問題を喜劇として明るく問いかけるストーリーに多くの人が共感するでしょう。

最後に

喜劇の名手と言われた映画界の偉人・山田洋次監督が手掛けてきた"家族"をテーマにした珠玉の作品をご紹介しました。古いものから新しいものまで、様々な年代の映画を取り上げてきましたが、母を思う子どもの気持ちや妻を思う夫の気持ちなど、"家族"に対する愛はいつの時代も同じです。

ぜひ今回ご紹介した山田洋次監督作品を観て、家族の温かさを感じてみて下さいね。