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海外でも高評価!業界の異端児・園子温監督の映画作品10選

海外でも多くの映画賞を受賞するなど高く評価されており、日本映画界を牽引する現役監督の一人でありながら、送り出す作品は常に賛否両論の的となる園子温監督。近年は徐々にイメージも向上してきたようですが、まだまだ苦手意識を持っている方も多くいらっしゃると思います。「クセは強いが癖になる」、まさしく珍味といったところでしょうか。今回は、食わず嫌いはもったいない、知れば知るほど面白い園子温映画10選をご紹介します。

自殺サークル【2002年】

自殺サークル
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あらすじ

新宿駅で54人の女子高校生が笑顔を浮かべ、なんでもないことのようにあっさりと、同時に飛び込み自殺を行いました。この事件を捜査する刑事の黒田(石橋凌)は、あるタレコミからインターネットサイトに目を付けますが、事態は次々と飛び火して各地で同様の集団自殺が巻き起こります。やがて被害は黒田の家族にまで及び始め…。

見どころ

園子温初のとなる商業的な映画です。バイオレンス描写が過激で目を背けたくなるようなシーンが多く、鑑賞後には園子温の持ち味である何とも言えない後味の悪さが残ります。人と人とが理解し合えない様子とそれにより巻き起こる悲劇が凄惨に描かれており、鬱々とした気分を楽しみたい方にうってつけです。



愛のむきだし【2009年】

愛のむきだし
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あらすじ

高校生のユウ(西島隆弘)は、愛人(渡辺真起子)に捨てられ性格が豹変した神父である父親(渡部篤郎)に、毎日懺悔を強いられるようになります。やがてユウは懺悔をするために罪を犯すようになり、盗撮をして懺悔する事で父の怒りを買い、父とのつながりを確認するというサイクルに。しかし、ある日から父はユウの懺悔を拒否するようになるのでした。

見どころ

ベルリン映画祭で国際批評家連盟賞とカリガリ賞を受賞したほか、世界各国で賞賛された究極の純愛映画。満島ひかりが女優として飛躍するきっかけになった作品でもあり、安藤サクラや綾野剛など、現在映画界で活躍する俳優も多く出演しています。監督がしばしば映画に込める「父と子の隔絶」というテーマが分かりやすく描写されている点にも注目です。

冷たい熱帯魚【2010年】

冷たい熱帯魚
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あらすじ

古びた熱帯魚店を営む社本(吹越満)は家族間の折り合いが悪く、居心地の良くない生活を送っていました。ある日、娘(梶原ひかり)が万引きを咎められてしまい、社本が困惑していると大型熱帯魚店を経営する村田(でんでん)が救いの手を差し伸べます。それを機に社本は村田との付き合いを始めますが、村田には恐ろしい裏の顔がありました。

見どころ

園子温監督の代名詞ともなった傑作映画。「父と子の隔絶」、「家族の崩壊」の描写はやはり鮮烈で、残虐な演出が監督の専売特許とばかりに散りばめられています。作品の一番の見どころはなんといっても、他人を無感動に侵略し殺害してしまう狂気の怪物・村田役を務めたでんでんの演技でしょう。優しそうに微笑む気の良いおじさんのイメージが覆る瞬間などはまさに怪演といった迫力で、日本屈指のサイコパスキャラクターが誕生したと言えます。

恋の罪【2011年】

恋の罪
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あらすじ

亭主関白の夫(津田寛治)に支配されていた菊池いずみ(神楽坂恵)は、寂しさから外とのつながりを求めてパートを始めるも、騙されてAVの世界に足を踏み入れてしまいます。最初は嫌がっていたいずみでしたが、自分をアピールする術を模索していくうちに、次第に明るさを取り戻していくのでした。ある時、そんな彼女のもとに大学で文学を教えつつ売春をする美津子(冨樫真)が現れます。

見どころ

激情に駆られながら堕ちていく3人の女性の姿が描かれています。露悪的な映像に拒否感を持つ人もいるようですが、水野美紀の大胆な演技や監督の妻でもある神楽坂恵の演技は圧巻です。人の醜さが全面に押し出された映画ですが、そうした人の性を簡単には否定しない監督独自の価値観が垣間見えます。

希望の国【2012年】

希望の国
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あらすじ

酪農家の小野泰彦(夏八木勲)は家族とともに平穏な生活を送っていましたが、ある日大地震が起こりその影響で原発事故に見舞われます。小野の家にも避難勧告が出されますが、妻(大谷直子)の体調が悪かったことを理由に小野は勧告を無視。国からの強制退去の期日が迫り、窮した小野は…。

見どころ

園子温が製作にあたって「今描くべきものを見つけた」と語った原発事故をテーマにした作品で、架空の県が舞台となっています。フィクションではありますが、実際に原発事故があった福島で入念な取材を行ったうえで撮影されたそうです。タブー視されていた問題に映像作品を用いて斬りこんだことで各方面から非難され、賛否が分かれましたが、監督の転換点ともいえる映画となりました。

地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?【2013年】

地獄でなぜ悪い Why don’t you play in hell?
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あらすじ

いつものように街で自主製作映画を撮影していた映画オタクの平田(長谷川博己)は、暴力団組長である父から逃亡中のミツコ(二階堂ふみ)と出会います。成り行きでミツコの父親・武藤(國村隼)に彼氏として紹介された平田は、刑務所にいる妻のためにミツコを主演とした映画を撮るよう武藤から脅されるのでした。

見どころ

園子温作品では群を抜いて鑑賞しやすい映画ですが、世間の評価は「感銘を受けた」という人と「よく分からなかった」という人で真っ二つに分かれているようです。登場人物が大切なもののために馬鹿馬鹿しいほど命を張る様子が地獄として描かれており、その中で懸命に生きる姿を称えています。

新宿スワン【2015年】

新宿スワン
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あらすじ

新宿でくすぶっていた無職の白鳥龍彦(綾野剛)は、真虎(伊勢谷友介)という名うてのスカウトマンに拾われたことで彼の所属するスカウト会社バーストで働き始めます。その頃バーストはライバル会社ハーレムの縄張りを狙っており、新入りの白鳥にある仕事を任せるのでした。

見どころ

新宿でスカウトマンとしてのし上がる男の姿を描いた同名漫画の実写化。クセのある映画製作者として知られていた園子温が、いわゆる商業的な映画を引き受けたことで、ファンを驚かせたという背景があります。オーソドックスな不良映画ですが、監督の巧みなキャスティングにより登場人物がそれぞれにうまく機能しています。

リアル鬼ごっこ【2015年】

リアル鬼ごっこ
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あらすじ

修学旅行中のバスが突然破壊され、バスから投げ出されたミツコ(トリンドル玲奈)。同級生たちの屍が累々と転がる中、何者かに追われるミツコ。必死に逃げ、なんとか学校にたどり着きますが、そこではいるはずのない同級生たちがいつもと同じように過ごしていました。ミツコは不可思議な世界をさまようことになります。

見どころ

女子高生たちが次々と無秩序に殺されていく様を、不条理な物語で描いています。一部海外では賞も獲りましたが、園監督が山田悠介による原作小説をまるで読まずに仕上げたという問題作だけあって、当然ながら世間の評価は賛否両論でした。

ひそひそ星【2016年】

ひそひそ星
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あらすじ

遠い未来。幾度かの大災害と人類の自滅により、人という種は絶滅危惧種となり人工知能のロボットが宇宙を支配していました。人間への宅配便を運ぶアンドロイド鈴木洋子(神楽坂恵)は、同じ型のアンドロイドに会ってみたいと思いながら宇宙船の人工知能とともに惑星間を巡り、滅び行く人類に配達を続けます。

見どころ

園子温が独自のプロダクションを作ってまで製作を敢行した映画です。アーティスティックな監督のセンスが映像のみならずセットや小道具にも発揮され、独創的で美しい映画となりました。弱々しい存在となった人類が求めるものに、監督自身の渇望が重ねられているようにも感じる秀作です。

俺は園子温だ!【1985年】

あらすじ

カメラに向かって「俺は園子温だ」と叫ぶ一人の男(園子温)。80年代の風物を背景にしながら、彼は自分の名前をひたすら連呼し続けます。時には彼女らしき人物にちょっかいをかけ、時にはライブシーンをはさみ、そして時には丸坊主にされながら、ひたすら「俺は園子温だ」と周囲に向けて宣言し続けるのでした。

見どころ

17歳で天才詩人としてデビューした園子温は22歳の時、このショートフィルムでぴあフィルムフェスティバル入選を果たしました。「伝統ある映画賞を受賞しているんだから映画なんだろう」と判断するしかない、実験的で荒唐無稽な作品です。監督のむき出しの個性をフィルムに叩きつけたような作風で、園子温ワールドを体験できます。

最後に

表現が抽象的でありながら生々しく、リアリティと童話性が混在する園子温映画。万人に受けるものとは言い難いのも事実ですが、抜きんでた感性と視線を持った監督だからこその作品と言えます。まだチャレンジしていない方はこれを機会にぜひご覧になってみてください。