CuRAZY-cinema[クレイジーシネマ]
CuRAZY-cinema[クレイジーシネマ]は映画・ドラマに関するニュースや気になる情報・感想・評価・ネタバレや画像、動画を掲載しています。

人を惹き付けるダークな世界観!ディストピア映画名作おすすめ8選

近頃よく目にするようになった「ディストピア」というこの言葉、その世界観をご存知ですか?2017年に『ブレードランナー2046』が公開された頃から、頻繁に使われるようになった感があります。

"ユートピア=UTOPIA"とは楽園、理想郷を指し、その反対にあたる"ディストピア=DYSTOPIA"は暗黒郷などを意味します。SF的に解釈していくと『人間性を排除した近未来の管理社会』といったところが代表的な世界観です。

現代社会へのするどい示唆と警鐘に富んでいることから、名作映画の多いジャンルとも言えます。見たくないけど見てみたい?!そんなディストピア映画の名作8選をご紹介します。

ブレードランナー【1982年】

ブレードランナー
amazon.co.jp

あらすじ

レプリカントと呼ばれる人造人間たちが謀反を引き起こし、地球へ乗り込み逃走していると情報が入ります。彼らの目的は不明。元レプリカント捜査を専門に行なっていたデッカード(ハリソン・フォード)は、追跡を開始するよう依頼を受けます。

問題を起こしたレプリカントの製造元であるタイレル社にデッカードは調査に行きます。そこで出会ったのが秘書レイチェル(ショーン・ヤング)ですが、実際は最新型のレプリカントです。彼女自身、自分は人間だと信じているのですが、デッカードと出会ったことでその自信が揺らぎ悩みを深めていくのでした。

見どころ

ディストピアとは何なのか?一般的な理解とイメージを決定づけたであろうSF映画の金字塔です。先頃続編が公開されたので、見返した方も多いのではないでしょうか?人間は手をつけたくない、いわゆる汚れ仕事に従事するアンドロイドたちが反旗をひるがえす物語です。

取り締まるべきアンドロイドたちに次第に感情移入してしまう…それこそがディストピア映画の醍醐味と言えます。持つ者と持たざる者、支配する者とされる者という『ブレードランナー』の世界観を使って、現在の社会そのものや人間が抱える根源的な不安を描き、共感を得ています。沢山のバージョンがある本作、初見の方はオリジナル劇場公開版から見ると比較的分かり易く、おすすめです。



マッドマックス 怒りのデス・ロード【2015年】

マッドマックス 怒りのデス・ロード
amazon.co.jp

あらすじ

過去のトラウマから幻覚に見舞われている元警官マックス(トム・ハーディ)。さまよい続けるうちに、水と農作物を牛耳る独裁者イモータン・ジョー(ヒュー・キース・バーン)に支配された砂漠のコミュニティ「ウェイストランド」に迷い込んでしまいます。イモータンの暴力的な手下であるウォーボーイズらに囚われ、自由を奪われたマックス。

そんなある日、運転の名手フュリオサ(シャーリーズ・セロン)が給油の任務のため、トラックでウェイストランドを出発します。しかし彼女の本当の目的は、自身とイモータンに囲われていた女たちと共に、ウェイストランドから逃走することでした。計画に気づいたウォーボーイズたちはマックスを伴い、彼女たちの追跡を開始します。

見どころ

『ブレードランナー』が、静のディストピア映画だとすれば、本作は圧倒的に動のディストピア映画と言えます。通常見せ場にもちいるカーチェイスを、ほぼ全編に配した名作にして怪作、観るドラッグと称され熱狂的に受け入れられています。

特筆すべきは、子どもを孕んだ女たちと老婆、そして女性ドライバーのフュリオサらの本作での扱いです。弱者である彼女たちが、主人公以上にフューチャーされ丁寧に描かれています。本作は彼らが自由を獲得するための逃走劇ですが、そのストーリーは言わば「行って帰るだけ!」という潔さ。爆音のヘビーメタル、馬鹿馬鹿しいまでの笑いのセンス、時折みせるハードボイルドな人間模様が秀逸です。

ガタカ【1998年】

ガタカ
amazon.co.jp

あらすじ

胎児のうちから遺伝子の優劣による選別が行なわれ、すべてが徹底的に管理されている近未来社会。弟アントン(ローレン・ディーン)と比べ、兄ヴィンセント(イーサン・ホーク)は、遺伝子的に劣った"不適正者"として常に劣等感を抱えていました。

ある時ヴィンセントは、適正者のデータを就職時に不正利用し、"適正者"と偽って社会に潜り込み働くという抜け道があることを知り、ブローカーに接触します。適正者のデータ等を提供してくれるのは、車いすの青年ジェローム(ジュード・ロウ)で世界でも指折りの水泳選手だった人物でした。

見どころ

人体そのものがナンバリングされ、その出自から才能のあるなしに至るまで徹底管理された近未来社会の物語です。エリートはどこまでもエリートであり、持たざる者はどこまでいっても這い上がれない、この構図。遺伝子操作もしかり、鋭い先見性に驚かれるのではないでしょうか?

そんな不条理な世界の中で秘密裏に行動し、夢を実現しようと、あらゆる手段を使って挑む主人公ヴィンセント。その葛藤は、たかがSF映画と切って捨てるにはあまりにも切なく、リアリティを持って迫ってきます。後に破綻してしまいますが、本作出演のイーサン・ホークとユマ・サーマンは一時夫婦関係でもあったので、その点においても興味深い映画です。

12モンキーズ【1996年】

12モンキーズ
amazon.co.jp

あらすじ

突然大発生した謎のウィルスのため、人類のほとんどが死に絶えた21世紀初頭。生き残った人々は汚染がひどい地上を逃れ、地下での暮らしを余儀なくされています。科学者たちは服役中のジェームズ・コール(ブルース・ウィリス)を、タイムトラベルで過去へ送り込みウィルス発生の原因を追求させます。

ジェームズが地上での調査をすると、不気味な猿のマーク"12モンキーズ"を発見、それが人類滅亡に関係があることを知ります。それを受け1996年の世界へタイムトラベルするはずが、ジェームズは1990年へ送られてしまいます。そして彼のその言動は誤解を招き、とうとう精神病院へ収容されることとなってしまいます。

見どころ

本作はディストピア映画の金字塔『未来世紀ブラジル(1986年)』を手がけた、テリー・ギリアム監督×ブルース・ウィリスという布陣で臨んだ傑作映画です。SF作品でありながら、アルフレッド・ヒッチコック監督作『めまい(1958年)』特有の二重構造を引用している点も見どころの1つとなっています。形式だけ取り入れたのでなく、作品の着地に深みを加える素晴らしいオマージュです。後半トーンが、がらりと変わる場面で用いられていますので、ぜひご確認下さい。

ゼイリブ【1989年】

ゼイリブ
amazon.co.jp

あらすじ

荒廃した社会で、仕事探し中の男ネイダ(ロディ・パイパー)は、家も無いためホームレスのコミュニティでキャンプをしながら暮らしています。そんなある日、ふと入った教会で不思議なサングラスを発見します。そのサングラスをかけて街を見渡すと世界は一変、"ある真実"がたちどころに見えるようになります。

社会を支配する者たちの邪悪な素顔、広告にかくされた「従え!買え!考えるな!」という本当のメッセージなど、いたる所に潜んでいるサブリミナル・メッセージ(洗脳標識)が見えるようになるサングラスでした。驚愕の事実を知ってしまったネイダは、そのサングラスを配り、気づいていない者たちの目を覚まさせようと奮起するのですが…。

見どころ

ゼイリブとは「THEY LIVE」。つまり、「奴らは生きている!」を意味します。サングラスによって"奴ら"の素顔や、広告のサブリミナル・メッセージ(表面上分からない別のメッセージ)が見えてしまう名シーンは強烈なインパクトで必見です。支配層や富裕層、思考停止した一般市民へのシニカルな批判が全編に貫かれ、根強いファンをもつ名作です。

裸眼=思考停止に警鐘を鳴らしながら、あくまでエンターテイメントであろうとする社会派作品⁈ジョン・カーペンター監督の手腕が光ります。長すぎるケンカのシーンが有名ですが、「思い込みを取り去ることの難しさ」を描くため必要な尺だと監督は語っています。どれほど長いのか?ぜひご確認ください!

アルファヴィル【1970年】

アルファヴィル
amazon.co.jp

あらすじ

感情や思想の自由をいっさい排除、否定された都市アルファビルへ潜入することとなった私立探偵レミー・コーション(エディ・コンスタンティーヌ)。彼は記者イワン・ジョンソンと名乗り捜査をはじめます。姿を消したアンリ・ディクソン(エイキム・タミロフ)を探すことが目的です。

それだけでなくアルファビルを建設したフォン・ブラウン教授の逮捕もしくは抹殺と、アルファビルを総合管理している人工知能"アルファ60"の破壊も、その任務となっています。レミー・コーションは、潜入した都市アルファビルで美しい女ナターシャ(アンナ・カリーナ)と出会います。

見どころ

政治的なメッセージをポップな映像で表現してきたジャン・リュック・ゴダール監督が放つ、異色のSF映画。ゴダールのミューズでありプライベートでもパートナーであった女優アンナ・カリーナが主演し、ラブストーリーの側面も持っています。ゴダール監督作の中では比較的分かりやすいのですが、飛躍も多いので想像力を働かせて見ていただきたい作品です。

無理にSFらしいセットや衣装を使用しないのがゴダール監督らしいところ。幾何学的な構図を用いる等で近未来感を巧みに演出。好きな人には堪らないスタイリッシュな世界観となっています。人間を支配する"マスター・コンピューター"など既視感を覚える、後のSFにかかせない装置にもご注目ください。

未来惑星ザルドス【1974年】

未来惑星ザルドス
amazon.co.jp

あらすじ

奴隷的な扱いをうける"獣人"は、不老不死を手にした支配層"エターナル"のために食料を生産しています。獣人とエターナルの世界分断されていますが、唯一2つをつないでいるのは"ザルドス"という名の空飛ぶ謎の石像です。獣人はザルドスを神としてあがめています。しかし実際は、獣人が収穫した穀物などをエターナルへと運ぶ道具に過ぎません。

ザルドスにはもう1つの役割があり、一部の獣人に銃を届け、増えすぎた人口を抑制するという名目のもと殺戮をさせています。そんな殺人部隊にいたゼッド(ショーン・コネリー)は、ひょんなことからザルドスに乗り込み、エターナルの住む世界"ボルテックス"へ辿りついてしまいます。

見どころ

殺人部隊がかぶる白いマスクが映画好きの間で現在も人気アイテムとなっている、カルト的なディストピア映画です。『007』シリーズ出演の大スター、ショーン・コネリーや『まぼろし(2002年)』などで、今なお演技派と称される女優シャーロット・ランプリングらが出演しています。

富を持つ者が少ない資源を独占し、何不自由なく暮らしている…その閉じた世界に風穴をあけるゼッド。本作は名作「オズの魔法使い」へのオマージュが重要な鍵となっていますので、「オズの魔法使い」を知らない方は、あらすじだけでも押さえておくと、より楽しんでいただけます。アンダーグラウンドな雰囲気を持っていますが、エターナルのファッションがかなりお洒落で、目を楽しませてくれます。

華氏451【1967年】

華氏451
amazon.co.jp

あらすじ

読書と本の所有が禁じられ、情報は音声や画像で全てまかなわれる近未来社会。本の所有が発見されればファイヤーマン=消防士らが出動し、本は焼却、持ち主は逮捕されることになっています。モンターグ(オスカー・ウェルナー)は、ファイヤーマンとして仕事に従事していますが、妻にそっくりの女クラリス(ジュリー・クリスティ)に出会います。

彼女は本を愛しており、感化されたモンターグはとうとう読書をしてしまいます。次第に本の魅力に心奪われていくモンターグですが、夫が読書していることを妻リンダ(ジュリー・クリスティ)が知ってしまい…。

見どころ

読む本=個人の嗜好や思想までが管理される、恐るべき近未来社会を描いたフランソワ・トリュフォー監督によるディストピアSFの名作です。H.Gウェルズ原作の同名小説の映画化作品でもあります。

読書から得る自由な想像力を愛するクラリスと、規則遵守の冷たい妻を同じ女優ジュリー・クリスティに演じさせることで、人間の持つ"ある側面"を描きだす演出が大変ユニークです。華氏451とは物が燃え上がる温度を指しています。

最後に

単にダークなだけのSFでなく、漫然と暮らす現代人に冷や水をかけ目を覚まさせてくれるのが、ディストピア映画の本質です。不安をあおるだけでなく、時に息苦しさを覚えるこの社会で、どう生きればよいのか?のヒントとなる要素を沢山描いています。

今回ハッピーエンドにあたる作品も、ほろ苦い終わり方をする作品もありますが、どんな形にせよ人間性を皆取り戻しているように見えるのが救いです。もうそこまで来てる?!感のある暗黒社会ですが、力強く生き抜く主人公たちから、明日への活力を分けてもらってはいかがでしょうか?