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今だからこそ観たい。切ない近未来を描くアニメ『イヴの時間』

今やあちこちにAIシステムが導入され、少し先の未来に思っていた人工知能との共存も本当の意味で可能となり"近未来"へと変わってきました。

そんな近未来を描いた作品として、ぜひチェックしておきたいアニメ作品が『イヴの時間(2008年)』です。今回は、知る人ぞ知る傑作アニメ『イヴの時間』の見どころや作品の概要をご紹介します。

『イヴの時間』作品情報

イヴの時間
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『イヴの時間』は、映像プロダクションDIRECTIONSが2008年から2009年にかけて制作した連作短編アニメーションです。1話30分弱の全6話がWEB上で公開されたことで話題を集め、シリーズ総再生数は300万回に到達するほど。そんな成功を機に『イヴの時間』の全6話に追加編集と再構成を施し、2010年には『イヴの時間 劇場版』で長編作品としてスクリーンデビューまで果たすことになりました。

吉浦康裕監督について

サカサマのパテマ
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『イヴの時間』を手掛けた吉浦康裕監督。吉浦監督は本作を機に名前を広く知られるようになり、その後オリジナル劇場アニメーション『サカサマのパテマ(2012年)』や、日本アニメ(ーター)見本市という企画で『パトレイバーREBOOT(2016年)』といった注目作に携わることになります。

吉浦康裕公式Twitterアカウント(@yoshiura_rikka)より

注目すべきは、いずれも原作や脚本などにも吉浦康裕監督が関わっているということ。ストーリー部分の構想にも大きく関わっていることもあり、異世界ファンタジーであったり、近未来を題材にした作品だったりと異質な設定が含まれた世界観でありながら、物語自体は素朴で親しみやすくなっています。

『イヴの時間』の広がり

短編連作アニメとして生まれ、映画化を果たした『イヴの時間』ですが、その他にも様々な形で広がりを見せることになります。当時こそ名の知れた人物ではなかった吉浦監督でしたが、『イヴの時間』が東京国際アニメフェア2010、第9回東京アニメアワード優秀賞OVA部門の受賞を果たし、第14回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査員推薦作品に選出されるなど大きな評価を得ました。

また国内だけでなく、海外でも誇るべき結果を残していきます。パリで行われたJAPAN EXPOでアニメーションの上映が実施されたほか、2013年には海外向け劇場版ブルーレイ制作のためのクラウドファンディングを開始。開始からわずか30日間で当初目標としていた1.8万ドルを大きく上回る20万ドルを得るという快挙を果たし、企画を実現しました。

イヴの時間 another act
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またアニメーションだけでなく、漫画雑誌ヤングガンガンでも「イヴの時間」の連載が実施され、小学館ガガガ文庫からは小説版「イヴの時間 another act」が刊行されました。これらのメディアミックス作品では、アニメーション版では描かれなかった部分なども明らかになって、アニメーションを観た人でもより深くストーリー楽しめる作品となっています。



『イヴの時間』あらすじと見どころ

吉浦康裕公式Twitterアカウント(@yoshiura_rikka)より

あらすじ

本当の人間と区別がつかないほどの精密な人間型のロボットが実用化された世界。高校生のリクオはそんな社会に適応し、自家用アンドロイドのサミィを活用していました。

しかしある日、リクオはサミィの行動記憶の中に不可解な記録を発見。親友のマサキとサミィの足跡を追うと、"人間とロボットを区別しない"というルールを持った喫茶店「イヴの時間」に行き着きます。2人はその喫茶店で人間なのかロボットなのか分からない人々と出会い、人間とアンドロイドの関係性を知ることになっていくのでした。

見どころ

イヴの時間の見どころは何と言っても、誰がアンドロイドで誰が人間なのかがわからないところ。作中の世界では、アンドロイドが高い精巧なビジュアルを持つ故に、人間たちにすぐ分かるようアンドロイドの頭上にリングの表示が義務付けられているという設定があります。

しかし本作の舞台となる喫茶店「イヴの時間」では、"人間とロボットを区別しない"というルールがあるため、アンドロイドもそのリングの表示を解いているという仕掛けが。この1つの仕掛けによって、主従関係にあったはずの人間とアンドロイドの関係が平等化され、作中のキャラクターだけでなく作品を観ている側もアンドロイドに共感してしまう瞬間が訪れます。

『イヴの時間』主要キャラクターと声優

向坂リクオ(CV:福山潤)

本作の主人公で両親と姉、そしてアンドロイドのサミィと生活する男子高校生です。アンドロイドに対しては道具としての接し方をして来ていたものの「イヴの時間」を訪れることで、サミィや周囲のアンドロイドへ対する考え方に変化が生まれていきます。幼い頃からピアノを弾いてましたが、コンクールでロボットの演奏が話題になったことで自身の場を奪われピアノをやめてしまった過去を持っています。

アクセルワンスタッフ公式Twitterアカウント(@axlone_staff)より

リクオ役を務めるのは、『暗殺教室』シリーズの殺せんせー役や『おそ松さん』シリーズで一松役を務めた福山潤です。

サミィ(CV:田中理恵)

リクオの家で、家事などの手伝いを行う女性型アンドロイド。普段は無表情で淡々とした、いかにもアンドロイドとすぐわかるような動作をします。しかし「イヴの時間」を訪れると普段の姿とは到底似つかない、いつもと違った一面を見せます。

田中理恵公式Twitterアカウント(@tanakarie)より

サミィ役を務めるのは『ローゼンメイデン』シリーズで水銀燈役を務めた田中理恵です。

真崎マサカズ(CV:野島健児)

リクオの同級生。リクオからはマサキと呼ばれ、ハウスロイドを所持していないと公言。過去にロボットに関係するある体験をしており、映画のクライマックスに重要なつながりを持ちます。

野島健児公式Twitterアカウント(@nojimakenji)より

真崎マサカズ役を務めるのは、『PSYCHO-PASS サイコパス』シリーズで宜野座伸元役を務めた野島健児です。

ナギ(CV:佐藤利奈)

「イヴの時間」の店員。明るい性格な一方、拗ねやすいといった一面も持っています。「イヴの時間」の"人間とアンドロイドを区別しない"という特殊なルールを強要する張本人でもあります。実は幼い頃に、倫理委員会からロボットを庇ったことで大怪我を負った過去を持っています。

佐藤利奈公式Twitterアカウント(@rinasatoh)より

ナギ役を務めるのは、『とある科学の超電磁砲』シリーズの御坂美琴役を務めた佐藤利奈です。

その他、本作では人間なのかアンドロイドなのか明示されないキャラクターが多数登場します。ストーリーを追うことで正体が明かされていくので、どのキャラクターが本当の人間で、どのキャラクターがアンドロイドなのか探りながら観るのも面白いかもしれません。

最後に

『イヴの時間』のキャラクター紹介やあらすじを簡単に紹介しました。今や作中で描かれているような世界や問題が、架空のものとは言えない時代に来ていると言っても過言ではありません。アンドロイドが身近な存在になるだろう未来に向けて、まだ観ていない人はぜひチェックしてみてください。