今回はいまさら人に聞けない、北野武監督の代表作10作品をご紹介いたします。観たことのない作品があったら、ぜひチェックしてみてください。
目次
その男、凶暴につき【1989年】
あらすじ
舞台は首都圏のとある街。我妻(ビートたけし)は暴力刑事として有名で、署内でも上からは疎まれる存在。それでも同僚とは軽口を叩いたり、酒を飲んだりして理解を得ていました。新人の刑事・菊池(芦川誠)とコンビを組むことになり、菊池は我妻の暴力的な態度にとまどいながらも、徐々に馴染んでいき捜査をこなしていきます。そんな中、麻薬密売組織の存在を知り、実態を暴くために立ち向かっていく我妻ですが…。
見どころ
第1回北野武監督作品。本当は深作欣二が監督を務めるはずだったものの、スケジュールが合わず北野武がメガホンをとることになったと言われています。セリフを最小限にまで削ぎ落とし、徹底した暴力の描写、ドライなタッチで公開当時から絶賛されました。
「第63回キネマ旬報ベスト・テン日本映画第8位」、「第11回ヨコハマ映画祭日本映画ベストテン第2位」にランクイン。松本人志は北野武作品で一番好きな作品と語っています。まだ若い寺島進や遠藤憲一も出演しているのが見どころのひとつです。
あの夏、いちばん静かな海。【1991年】
あらすじ
ゴミ収集のあるバイトをしている聴覚障害者の茂(真木蔵人)は、ある日、先端の折れたサーフボードを拾います。自分で修理をして、同じ障害を持つ彼女の貴子(大島弘子)を誘い海へ。茂は徐々にサーフィンが上達し、サーフィンの大会にも出場して入賞するまでになります。サーフィンのある生活が日常となっている茂と貴子。ある日、練習に海へいった茂を追って海へ行く貴子ですが、そこに茂はおらず、砂浜にサーフボードが打ち上げられていることに気づきます。
見どころ
北野作品としては、初めて自身が出演しなかった作品。作品の随所に青色が使用され「キタノ・ブルー」の原点とも言われています。主役に真木蔵人を抜擢したことでも話題となりました。
主人公の2人が聴覚に障害があるということで映画は終始サイレント調。その設定がこの作品をラブストーリーとしてより際立たせています。
Kids Return キッズ・リターン【1996年】
あらすじ
落ちこぼれ高校生のシンジ(安藤政信)と不良のマサル(金子賢)は毎日学校で問題を起こして過ごしていました。ある日、マサルはボクシングジムに通う若者にボコボコにされてしまいます。これを契機にボクシングジムへ通うようになるマサルでしたが、才能があったのは付き合いでボクシングを始めたシンジの方でした。
見どころ
北野映画の最高傑作との呼び声も高いこの作品。安藤政信と金子賢はこの映画の出演をきっかけに一気にスターダムにのし上がりました。北野組常連の寺島進、大杉漣も出演しています。シンジとマサルの最後のセリフは映画史に残る名セリフと言えます。
ソナチネ【1993年】
あらすじ
村川組組長・村川(ビートたけし)は、自身が所属する組内の権力抗争のワナにハメられ、東京から沖縄へ移転させられます。しばらくはやることもなく子分たちと遊んでいましたが、次々と子分が殺されて自分が身内からハメられていることに気づきます。
見どころ
海外では高く評価されましたが、国内では興行収入がわずか8,000万円しかなかったそうです。渡辺哲、寺島進、大杉漣、勝村政信といった北野組常連で、ベテラン俳優の面々も出演。ヤクザを子どもっぽく描いているのが北野武らしいです。「大人になりきれない男はアウトサイダーになる」という北野武監督の美学でしょう。
HANA-BI【1998年】
あらすじ
刑事の西(ビートたけし)は、数ヶ月前に娘を失ってしまいます。妻(岸本加代子)はそのショックで入院して、ほとんど喋ることができない状態に。さらに妻が不治の病に侵されていることも知ります。
自分の代わりに張り込みをしていた同僚の堀部(大杉漣)は、犯人に撃たれて一命はとりとめたものの車椅子生活に。西らは犯人を追い詰めて射殺しますが、その際に部下の田中も犠牲になり、西は辞表を出して妻と旅に出ます。
見どころ
「第54回ヴェネツィア国際映画で金獅子賞」ほか、各映画祭で絶賛され、監督・北野武の名を世界に知らしめた作品です。北野監督自身が描いた絵も劇中に使われたり、花火を使用したりとアートの要素と定番の暴力シーンが見事にマッチした秀作と言えます。また、久石譲の音楽も見事です。
菊次郎の夏【1999年】
あらすじ
小学3年生の正男(関口雄介)が、遠くで働いている母親に会いに行こうと計画します。そして、事情を知ったスナックのママ(岸本加代子)が自分の旦那・菊次郎(ビートたけし)を同行させることに。チンピラ中年の菊次郎は、旅費を競輪に使ったり、車を奪ったりとめちゃくちゃですが、徐々に2人の間に愛情が芽生えていきます。
見どころ
北野作品お得意のバイオレンスな要素は一切なく、歩くシーンがとにかく多いです。田舎のバス停で待ちぼうけをくらうシーンは、この映画の象徴的な場面と言えるでしょう。また、正男と菊次郎のやりとりにほっこりとし、涙を誘います。久石譲のテーマ音楽「Summer」も有名になりました。ちなみに「菊次郎」は、北野武の実のお父さんの名前なんです。
BROTHER【2001年】
あらすじ
武闘派ヤクザの山本(ビートたけし)は組から煙たがられ、異母兄弟のケン(真木蔵人)を追って舎弟の加藤(寺島進)とアメリカへ。そこでケンや地元のアフリカ系アメリカ人、メキシカンとともに白人マフィアを倒して勢力を広げていきますが…。
見どころ
テーマは兄弟愛です。血のつながった兄弟、ヤクザ社会のアニキと舎弟。北野組常連の寺島進、大杉漣はもちろん、石橋凌、加藤雅也が作品に品を与えています。
北野作品のヤクザは大体死んでいきますが、そこに「悪い奴が救われちゃいけない」という様な北野武の美学を感じます。
座頭市【2003年】
あらすじ
盲目の剣士・市(ビートたけし)はある宿場町を訪れます。そこは銀蔵一家が支配し、人々は貧しい生活を送っていました。偶然に知り合った、おうめ(大楠道代)の家に厄介になっていましたが、おうめの甥の新吉(ガナルカナル・タカ)や両親を殺され、芸者をしている姉妹おきぬ(大家由祐子)とおせい(橘大五郎)に出会います。
やがて、姉妹の仇が銀蔵(岸部一徳)と扇屋の主人(石倉三郎)だと分かり、市は姉妹と共に銀蔵の家に乗り込みますが…。
見どころ
言わずと知れた勝新太郎の「座頭市」を大胆にアレンジ。金髪にジーンズ、下駄でタップダンスと時代劇を大胆に変革しました。「第60回ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞」を受賞したほか、国内外で高い評価を受けました。鈴木慶一の音楽も最高です。
アキレスと亀【2008年】
あらすじ
富豪の息子だった真知寿(ビートたけし)は小さい頃から絵を描くことが好きで、学校の授業中に絵を描いていても許される生活を送っていました。しかし、父親の会社が倒産し、両親が相次いで自殺。真知寿は貧しい農家に預けられることになります。
青年になった真知寿は、アルバイトをしながら美術学校へ通う生活に。アルバイト先で知り合った和子(樋口可南子)は真知寿のことを理解してくれて、やがて2人は結婚します。子宝にもめぐまれますが、真知寿は芸術を追求するあまり、徐々に狂っていき…。
見どころ
北野作品の新境地ともいえるこの作品は、芸術家の生涯という退屈になりがちなテーマを、コミカルな演出やブラックユーモアをまぶすことで観客に見やすいように演出されています。賛否が分かれる作品ですが、一度は観ておきたい作品と言えます。
ビートきよし、大竹まこと、麻生久美子といった面々がキャスティングされている点も注目です。
アウトレイジ【2010年】
あらすじ
関東一円を支配する巨大暴力団・山王会とその傘下の池元組、大友組、村瀬組。
会長の関内(北村総一朗)は池元組と村瀬組が親密になっていることを快く思っていません。2つの組を仲違いさせるため、池元(國村隼)に村瀬(石橋蓮司)をしめるように要求します。村瀬をしめたくない池元は大友(ビートたけし)に村瀬を痛めつけるように要求。村瀬をしめることに成功しますが、展開は思わぬ方向へ動き出します。
見どころ
スプラッター的なバイオレンスは賛否両論ありましたが、興行的には成功しシリーズ化されています。三浦友和、石橋蓮司、北村総一朗、椎名桔平、加瀬亮といった大物俳優を惜しげも無くキャスティングしたことで評判にもなりました。
北野武監督作品が取り扱うテーマは多種多様です。また、セリフが少なかったり、画が青かったりと独特の世界観が広がっていて、まるで絵画を観ているような感覚になります。今回紹介した10作品をみれば、北野映画のポイントを抑えたと言えるでしょう。次はどんな映画を撮るのか、楽しみですね。
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