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記録的ロングラン!『この世界の片隅に』が愛されるワケ

『この世界の片隅に(2016年)』は、第二次世界大戦前後の広島を舞台に、ごく普通に生きるヒロインや周りの人々の生活を描いた感動のアニメ作品です。

監督・片渕須直が惚れ込んだ、こうの史代の漫画が原作。ヒロインの声を担当するのは女優・のんです。また細谷佳正や小野大輔などのイケメン声優、潘めぐみ、尾身美詞といった実力派がキャスティングされています。2016年11月12日に封切りされたにも関わらず記録的ロングランとなり、1年近く経った現在も上映中です。

絶賛の声が多く集まる本作品、なぜここまで全国的に人気が広まり、ロングラン上映となったのでしょう。『この世界の片隅に』の魅力をお伝えします。

『この世界の片隅に』あらすじ

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広島で暮らす、絵が得意でちょっぴりぼんやり、のんびりした性格の少女・すず(のん)。昭和19年、18歳になった彼女は故郷から20km離れた港町・呉に嫁ぐことになります。意地悪な小姑もいますが、彼女は新しい家族に少しずつ馴染みながら、日々の楽しみを見つけつつ、主婦として一家を切り盛りするようになります。

戦争が続き、あらゆる物資が減っていく中で、すずは生活の知恵を絞って、工夫しながら毎日を大切に生きていきます。しかし激化した戦争は、大切にしていたものを次々と奪っていくのでした。そして終戦を迎えたとき、彼女の胸にある強い思いが芽生えて…。



『この世界の片隅に』見どころ

戦前戦後の話で、平凡な人々の生活を描いていると聞くと、「退屈そう」と思う人もいるかもしれません。しかしこの作品には、観る人を飽きさせないような工夫や魅力がたくさんあります。

ヒロインは絵が上手な夢想家の少女。そのため本人の想像力を基にした、童話のようなエピソードや可愛らしい描写が多く出てきます。だからこそ、作品が持つ特徴のひとつである、"テンポの良さ"も活きてきます。

ドジなすずの思わず笑ってしまう失敗やハプニング、旦那さんとの恋愛にドキドキするラブコメ要素など、平凡な展開で退屈してしまうなどという隙はありません。加えて、戦争が激化していく中、残酷で激しい描写が始まると、恐怖と切なさで胸をぎゅっと締めつけられるという、とても振り幅の大きい感動を味わうことができるのです。

クラウドファンディングで圧倒的人気!

元々この作品の映画化プロジェクトは、クラウドファンディングでスタートしました。

実は原作『この世界の片隅に』に加え、片渕監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法(2009年)』も知る人ぞ知るスマッシュヒットの人気作品です。そして両作品とも「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門」で優秀賞を受賞しているのです。

すでに多くのファンを獲得し注目を浴びていた2人、漫画家・こうの史代と片渕監督。彼らがコラボする新作を支えたいというサポーターは3,000人を超え、4千万円近い制作資金が集まりました。また、作品制作の賛同者が集まったのも異例のスピードだったんだとか!

『この世界の片隅に』の魅力

ヒロインの声優として女優・のんを起用

のんさん公式Instagramアカウント(@non_kamo_ne)より

クラウドファンディングの成功により、劇場版アニメ制作がスタートした本作。片渕監督はヒロインのすず役として、当時まだ声優ではなかった女優・のんに出演交渉をしました。

女優・のんのキャラクターが、ぼんやり、おっとりしたヒロインのイメージにぴったりだったということもありますが、監督が彼女の出世作である連続テレビ小説『あまちゃん(2013年)』の大ファンだったことも起用の理由でしょう。縁があって連続テレビ小説『あまちゃん(2013年)』を観始めた監督は、このドラマの世界観に「どっぷり浸りこんでしまった」そうなんです。

ご存知の方も多いかと思いますが、女優・のんの元の芸名は、能年玲奈でした。しかし所属していた事務所の契約が切れた後は、本名でもある「能年玲奈」という名前で活動することを禁止されてしまいました。そんな辛い状況にいた彼女は、この作品でヒロインを見事に演じ切り、完全復帰の第一歩を踏み出したのです。

地元民も驚く、精巧でリアルな呉の街並み

もともと戦時中の事柄を細かく調べた上で漫画「この世界の片隅に」を描いていたという、原作者のこうの史代。原作漫画には、当時の服装や家の造りなどが、しっかりと反映されているそうです。

そして映画化にあたって監督は再度、当時の広島についてリサーチを重ねました。作品の中で、戦争ですっかり失われてしまった広島、呉の街並みを、忠実に再現しているのです。このように丁寧に作られたため、本作の製作には丸6年がかけられています。

監督が何度も現地に足を運んでいるうちに、広島の人たちから協力者も現れたそうです。戦争で壊れた街並みを思い出し、情報を提供してくれました。その情報を丁寧にすくいあげ、映画の中に精巧に、当時の街並みを再現しました。さらに情報を寄せてくれた人を、作品の中に登場させたりもしているのです。

丁寧さ、人の手による温かさが作品に滲み出ているのは、このような時間を惜しまない、手作業の賜物なのですね。

主題歌を歌うコトリンゴの歌声

kotringoさん公式Instagramアカウント(@kotringo717)より

この作品は戦時中の日本を描いているため、恐ろしい描写や、シリアスで辛い展開もあります。しかし、映画を観終わった後には、温かい気持ちを抱いて劇場を出る人がほとんどだと言えるでしょう。それは演出やテーマの素晴らしさもありますが、作品を包み込む音楽の力も大きく思えます。

この作品の代表曲とも言える「悲しくてやりきれない」のアレンジをし、全編を通して音楽を担当したのは、ミュージシャンのコトリンゴ。片渕監督からは、「最後は救われるものであってほしい」と言われたそうです。その言葉通り、可憐で包容力のあるコトリンゴの歌声が、じんわりと染み入る作品になっています。

最後に

劇場アニメ『この世界の片隅に(2016年)』は、ヒロイン役の女優・のん、主題歌を歌ったコトリンゴ、そして原作の魅力が、ぎゅっと詰まった片渕須直監督の作品です。おそらく日本のアニメや映画の歴史に残る名作でしょう。まだ観ていない方、もう一度観たくなったという方、まだ間に合います!ぜひ上映中の劇場に足を運んでみて下さいね!