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アカデミー賞作品『ムーンライト』における"月明かり"の意味

アカデミー賞作品『ムーンライト』における"月明かり"の意味

バリー・ジェンキンス監督作品『ムーンライト(2017年)』は、アメリカの黒人社会で気弱な少年が大人になっていく様子を描いたヒューマンドラマ。人種差別だけではなく、同性愛"LGBT"の問題も取り上げた本作は、第89回アカデミー賞の作品賞、脚色賞、助演男優賞の3部門を受賞しました。

今回は、人種差別やLGBTといった社会問題について深く考えさせられる映画『ムーンライト』を考察していきます。

『ムーンライト』作品情報

ムーンライト
amazon.co.jp

あらすじ

アメリカのマイアミ。内向的な黒人少年シャロンは学校でいじめに遭い、家庭でも薬物中毒の母親から虐待を受け、居場所のない生活を送っていました。そんなシャロンが唯一心を許せたのは友人のケヴィン。自分のことを理解してくれるケヴィンに、特別な感情が生まれていくのでした。思春期を迎えた2人はある夜、月の光に照らされた浜辺で思いを交わしますが...。

見どころ

悲境の中で、必至に自分の居場所を探す主人公の姿に胸が締め付けられる感動作。本作は、アカデミー賞作品賞、脚色賞、フアン役のマハーシャラ・アリが助演男優賞、さらに同じ年のゴールデン・グローブ賞では作品賞を受賞しました。

主人公シャロンの少年期、青年期、そして大人になった3つの時代を分けて描いた構成となっており、3人の俳優が複雑な心情を抱えるシャロンを熱演しています。

■キャスト情報

【シャロン】  
少年期:アレックス・ヒバート
青年期:アシュトン・サンダース
成人期:トレヴァンテ・ローズ

【ケヴィン】 
少年期:ジェイデン・パイナー
青年期:ジャレル・ジェローム
成人期:アンドレ・ホーランド

【ポーラ】 ナオミ・ハリス

【フアン】 マハーシャラ・アリ

人種差別を打ち消す『ムーンライト』の意味とは

『ムーンライト』がアカデミー賞作品賞を受賞したアメリカの社会的背景

白人ばかりの映画が立て続けに受賞したことで"白いアカデミー賞"と揶揄された2016年のアカデミー賞。その翌年、黒人の住む街が舞台となり黒人キャストで製作された『ムーンライト』が、アカデミー賞3部門で受賞を果たす快挙を成し遂げます。カリフォルニアを舞台としたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド(2017年)』と作品賞を争ったことでも大きな話題となりました。

『ムーンライト』の受賞に大きな影響を与えたのは、ドナルド・トランプのアメリカ大統領就任だったと言われています。トランプの就任直後、オバマ元大統領の政策と真逆をいく、トランプのLGBTへの発言や人種差別的な言動がアメリカ国民へ大きな不安を与えていました。

第89回アカデミー賞の式典でも、司会者がトランプ氏を批判するような皮肉交じりのコメントを堂々としています。(以下、実際の発言)
「僕はトランプに感謝したいんです。昨年のアカデミー賞は人種差別的だという雰囲気でしたが、今年は彼のおかげでそうはならなかった。」

さらに、式典が行われるカリフォルニアでは、元からトランプ支持者は圧倒的に少なかったこともあり、『ムーンライト』の作品賞受賞に繋がったとも考えられました。

もちろん政治的な背景を抜きにしても、作品自体の詩的な美しさ、映像の"間"の取り方など受賞に至る魅力に溢れていますが、そんなアカデミー賞の裏側を見ても、マイノリティについて考えさせられる社会的な作品と言えるのではないでしょうか。

月明かりの下では差別や偏見も消える

 
【黒人社会が舞台】
黒人差別の歴史は、アメリカの建国以来の奴隷制度と相まって続いてきました。本作は、黒人ばかりが住む街、麻薬地区を舞台としており、白人社会とは全く交わることのない特殊な社会を見せつけられます。

【ムーンライトの元で黒人がブルーに輝く】
少年シャロンが、いじめっ子から逃げている最中に偶然出会った麻薬の売人フアン。彼はシャロンに父親のような愛情を注いでいました。ある日フアンは、子供の頃にある大人から「月明かりで黒人の子どもが"ブルー"に見える」と言われたことをシャロンに話し、「自分の道は自分で決めろ。人に決めさせるな」という言葉をかけます。

タイトルである『ムーンライト』とは、日本語で"月明かり"。ブルーは、宇宙空間で見た地球の色、全ての根元である海の色でもあり、人類にとって普遍的な色の象徴です。そう考えると、黒人の肌が月明かりの下で"ブルー"に見えるというのは意味深く、偉大なる月の光に照らされると色の違いなど小さなことであると訴えられている気がします。

作中では、月の光が実際に映像として映ることはありませんが、画面の外を想定してそれぞれの人が美しい月をイメージすることでしょう。また、社会的な強いメッセージや、何かのプロパガンダを押し出している訳ではないのに、差別や偏見がすっと消えていくような感覚が残ります。

最後に

PHANTOM FILM公式YouTubeアカウントより

この作品を通して、黒人の少年が友人・家族・恋へ葛藤しながら成長する姿を目の当たりにすると、人種・性別関係なく同じ人間であるということを思い知らされます。人種差別やLGBTの問題も、実際には多くの人が自分とはあまり関係ないことだと感じてしまっている部分があるのではないでしょうか。

社会問題としてではなく、自分自身の考え方を見直すきっかけとなる作品となりえるかもしれません。『ムーンライト』をまだ観たことのない方は、ぜひこの機会に観てみてくださいね!

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