CuRAZY-cinema[クレイジーシネマ]
CuRAZY-cinema[クレイジーシネマ]は映画・ドラマに関するニュースや気になる情報・感想・評価・ネタバレや画像、動画を掲載しています。

カメレオン俳優ジョニー・デップの半生に迫る!主演作の魅力とは?

見るたびに違う一面を知ることができる七変化俳優ジョニー・デップ。コメディからシリアスな演技まで幅広く演じ分ける性格俳優と言われる一方で、ジャック・スパロウやマッド・ハッターのような爆発的な人気を誇るキャラクターも生み出してきました。

ファンサービスを大事にし寄付にも積極的で子ども好きなことも知られている反面、数々の女優たちと浮名を流してきた恋多き男でもあります。ミュージシャンとしてキャリアをスタートしたロック・スピリットを持つ人物で、ロック・ミュージシャンとの親交が深いことも有名。

そんな不思議な魅力にあふれたジョニー・デップの人生と作品を、詳しく掘り下げていきたいと思います。

【生い立ち】40回以上も転居を繰り返した少年時代

ジョニー・デップは1963年生まれのアメリカ人俳優で、ケンタッキー州オーウェンズボロ出身です。父のジョン・デップは土木技術者、母のベティ・スーはウェイトレスをしていました。

兄妹は兄のダニー、姉のデビーとクリスティの3人。ジョニーは末っ子でした。母方の祖父がチェロキー族だったため、ネイティブ・アメリカンの血を引いています。自らのルーツに興味と誇りを持ち、後に尊敬するマーロン・ブランドを招聘して初監督作『ブレイブ(1997年)』を製作しました。

デップ一家はジョニーが7歳の時にフロリダへ移り、その後40回以上も転居していたといいます。15歳の時に両親が離婚し、母に引き取られます。11歳からドラッグを覚え、14歳頃にはあらゆるドラッグに手を出していた問題児でした。



【初期のキャリア】ミュージシャンの夢を追ってロスへ

12歳の頃に母からギターを買ってもらい、すっかり音楽に入れ込んでいたジョニーはバンド活動に夢中になります。

リード・ギタリストを務めていたパンクロック・バンド「The Kids」は、イギー・ポップの前座をするほどに成功しました。16歳で高校を中退していたジョニーは、本格的な活動をするためロサンゼルスへ拠点を移します。

転機となったのは、バンド時代に知り合った俳優のニコラス・ケイジからの助言。次第にミュージシャンから俳優へシフトチェンジしていきます。

【映画デビューと初期の佳作】デビューから4年で主演に抜擢!演技力を磨いた90年代

俳優の道を歩き出したジョニーは、ホラー映画『エルム街の悪夢 1984年(1986年)』でキャリアをスタートさせます。テレビにも進出し、刑事ドラマ『21ジャンプ・ストリート(1987年)』では潜入捜査官トム・ハンソン役で人気を博し、一躍ティーンのアイドルとなりました。

クライ・ベイビー【1991年】

クライ・ベイビー
amazon.co.jp

初主演映画はジョン・ウォーターズ監督のラブコメ作品『クライ・ベイビー』。ミュージカルの要素もある一風変わった青春映画で、主役の不良の「クライ・ベイビー」ことウェイド・ウォーカーを演じました。バンド時代から親交のあるイギー・ポップやポルノ女優トレイシー・ローズも出演しています。

ギルバート・グレイプ【1994年】

ギルバート・グレイプ
amazon.co.jp

ラッセ・ハルストレム監督によるヒューマンドラマ『ギルバート・グレイプ』に主演し、さらに演技の幅を広げました。共演はレオナルド・ディカプリオとジュリエット・ルイス。ディカプリオの障害児役の演技力に注目されがちですが、ジョニー・デップ初期の出演作では記憶に残る好演でした。

ラスベガスをやっつけろ【1999年】

ラスベガスをやっつけろ
amazon.co.jp

90年代は強い作家性を持つ監督たちの元で実力をつけてきましたが、テリー・ギリアム監督の『ラスベガスをやっつけろ』では役作りでハゲ頭にする徹底ぶり!実在のジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンになりきりました。

原作者でもあるトンプソンとは親友となり、後にトンプソンの自伝的小説を、ジョニーが設立した映画製作会社「インフィニタム・ニヒル」の第1作目『ラム・ダイアリー(2012年)』として製作・主演しています。

ティム・バートンとの出会い

ジョニー・デップを語る際に、ティム・バートン監督との出会いを外すわけにはいきません!1990年に『シザーハンズ』で出会ってから、2016年の『アリス・イン・ワンダーランド/時間の旅』まで、実に9作もの共作が行われてきました。

公私ともに深い親交を築き上げてきた2人だからこそ実現する魅力的な世界観。ここでは主な作品をプレイバックしてみたいと思います。

シザーハンズ【1991年】

シザーハンズ
amazon.co.jp

初めてティム・バートン監督作で主演を務めた『シザーハンズ』では、両手がハサミでできた悩める人造人間エドワードを繊細に演じきりました。

この作品の演技で大いに注目が集まり、演技派俳優として認知度も上がっていきます。当時エドワードが恋するキム役のウィノナ・ライダーとは実生活でも恋人であり、この共演も話題となりました。

エド・ウッド【1995年】

エド・ウッド
amazon.co.jp
次に主演したバートン作品は、伝説の映画監督エドワード・D・ウッドJr.の半生を描いた『エド・ウッド』。「アメリカ史上最低の映画監督」と言われ、製作した映画はすべて興行的に失敗という悲惨な状況の中でも、映画製作への情熱を人一倍持っていた人物です。

ティム・バートンはエド・ウッドのファンとしても有名。ジョニーはこの作品でエドの女装癖をも完全に再現しています。

スリーピー・ホロウ【2000年】

スリーピー・ホロウ
amazon.co.jp

ゴシック・ホラーの『スリーピー・ホロウ』では、ニューヨーク市警の捜査官イカボッドを演じています。18世紀末に怪しげな科学捜査を行う変わり者といった役柄で、その繊細な風貌も相まってバートンのゴシック作品にぴったりのハマり役でした。

この作品でバートン×デップの世界観の共有は、完璧に一致するようになっていったのではないでしょうか。

ウィリー・ウォンカとマッドハッター

ワーナー・ブラザース公式Instagramアカウント(@warnerbrosentertainmentVerified)より

ロアルド・ダールの児童小説を原作としたファンタジー作品『チャーリーとチョコレート工場(2005年)』では、工場主ウィリー・ウォンカというキャラクターを徹底的に作り上げました。

その変人ぶりも徹底しており、これまでに見たことのない新しい一面を引き出すことに成功しています。不思議でシニカルな世界観も完璧で、これぞバートン×デップの真骨頂と言える作品かもしれません。

ディズニー・スタジオ公式Instagramアカウント(@disneystudios)より
同じく完璧な世界観を作り上げたファンタジー作品『アリス・イン・ワンダーランド(2010年)』に、独特な風貌のマッドハッター役で出演しています。ルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」をベースにし、バートンならではの不思議の国を構築しました。

スウィーニー・トッドとバーナバス・コリンズ

2007年に壮絶な復讐劇『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』で主演を務め、デビュー作以来のミュージカルに挑戦しています。この迫真の演技でゴールデングローブ賞最優秀主演男優賞を初受賞しました。

ワーナー・ブラザース公式Instagramアカウント(@warnerbrosentertainment)より

バーナバス・コリンズは、2012年のゴシック作品『ダーク・シャドウ』の主人公で、ジョニーにとっては初のヴァンパイア役。この作品で共演したヘレナ・ボナム・カーターとは『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』、『アリス・イン・ワンダーランド』など、他のバートン作品でも共演しています。

ウィリー・ウォンカを蒼白な顔で演じてからは、マッドハッター、スウィーニー・トッド、バーナバス・コリンズ、トントなど白塗りキャラが定着してきていますね。

恋多き人生!でも結婚したのは2回?

数多くの恋愛を経験してきたものの、実は結婚したのは2度だけ。20歳の時、ニコラス・ケイジの元恋人ロリ・アン・アリソンと結婚しますが、早すぎた結婚は2年しか続きませんでした。しかしロリの紹介でニコラス・ケイジと出会い、俳優に転身することになったことを考えると良縁だったのかもしれません。

1986年にシェリリン・フェンと婚約するも2年後には破局してしまいます。ジェニファー・グレイとも8ヶ月間交際していました!

1989年に運命的な出会いをしたウィノナ・ライダーとは、交際して5ヶ月後に婚約しましたが、4年後に破局。

1994年にニューヨークで出会ったスーパーモデルのケイト・モスとも4年後に破局しています。

1999年に『ナインスゲート』撮影時、パリで出会ったヴァネッサ・パラディと事実婚の関係になります。2012年に関係を解消するまでに、2人の間に娘のリリー=ローズ・メロディーと息子のジャックが生まれました。リリー=ローズは『Mr. タスク(2015年)』で女優デビューを果たし、父ジョニーと共演しています。

2012年に『ラム・ダイアリー』で共演した女優アンバー・ハードと交際を開始し、その3年後に結婚。ところが、2016年にアンバーがジョニーからのDVを訴え離婚騒動に発展!和解のため約7億円をアンバーに支払ったといいます。

いずれにしても相変わらずの恋多き人生で、常に話題を提供してくれるスターであることには変わりないようです。

世界一有名な海賊!ジャック・スパロウ

ウォルト・ディズニー・ジャパン公式Instagramアカウント(@waltdisneyjp)より

ヴァネッサ・パラディと南フランスで子育てに明け暮れる幸せな日々を送っていた2003年、ジョニーはそれまでの彼からは考えられない役柄に挑戦することになります。

それが、世界一有名になったカリブ海の海賊ジャック・スパロウ!この頃は子どもに見せられる作品に出ることを考え、ピーターパン誕生秘話を描いた『ネバーランド(2005年)』や『チャーリーとチョコレート工場』に出演していたようです。

ジャック・スパロウのキャラクターは、ジョニーの友人であるローリング・ストーンズのキース・リチャーズからインスパイアされたもの。キースはジョニーに請われて、ジャック・スパロウの父親キャプテン・ティーグ役として共演を果たしています。

大コケの2010年代?浪費癖と高額ギャラに驚き!

2009年から2010年にはハリウッド高額ギャラ俳優として上位をキープしていましたが、実は彼の資産管理をしていたザ・マネージメント・グループから破産を回避するよう注意されていたようです。この会社とは訴訟が行われ、逆にジョニーの浪費癖と高額なギャラが明らかになってしまいました。高額ギャラと主演作の興行成績が釣り合わず、コスパの悪い俳優として2年連続1位という残念な結果になっています。

2011年には姉のクリスティとともに、映画製作会社「インフィニタム・ニヒル」を設立し、その翌年には同名の出版レーベルを立ち上げました。しかし『ラム・ダイアリー』で出会ったアンバーとの結婚と離婚は、あらゆる意味で大きな痛手となったようです。

『ローン・レンジャー(2013年)』や『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密(2015年)』などの主演作興行が軒並み振るわなかったこともあり、2010年代前半は公私ともに厳しい時期だったと言えるでしょう。

親交のあるミュージシャンたちが超豪華!

キース・リチャーズ公式Instagramアカウント(@officialkeef)より
ジョニーはロック・ミュージシャンとしての一面を持ち、多くのミュージシャンたちと親交があることも有名です。特にイギー・ポップとキース・リチャーズとの交流はよく知られていますが、他にも豪華な顔ぶれのミュージシャンたちと共演しています。

リアム・ギャラガーとはダブルデートもした仲で、オアシスのアルバム「ビー・ヒア・ナウ(1997年)」の「フェイド・イン-アウト」にギターで参加していました。また、バットホール・サーファーズのギビー・ヘインズとのバンド「P」では、アルバム「P(1995年)」も発売しています。

2012年にはマリリン・マンソンのアルバム「ボーン・ヴィラン(2012年)」にゲストとしてギターとドラムで参加しています。2人は『21ジャンプストリート』からの古い仲だそう。この年にはポール・マッカートニーのミュージック・ビデオにも出演しています。その後、ポールはジャック・スパロウの叔父役で『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊(2017年)』にカメオ出演しました。

2015年に結成したロック・グループ「ハリウッド・ヴァンパイアーズ」のメンバーは、アリス・クーパーとエアロスミスのジョー・ペリー!アルバム「ハリウッド・ヴァンパイアーズ(2016年)」もリリースし、その年のグラミー賞に出演して演奏も披露しています。

性格俳優ぶりは健在!

ブラック・スキャンダル映画公式Twitterアカウント(@BlackMassMovie)より

ジョニーは『ブラック・スキャンダル(2016年)』では実在のギャング、ホワイティ・バルジャー役を衝撃的な2度目のハゲ頭で役になりきって演じ、相変わらずの性格俳優ぶりを見せています。また『オリエント急行殺人事件(2017年)』でも後ろ暗いアメリカ人富豪のエドワード・ラチェットを演じ、並み居る名優たちの中でも強い印象を残しました。

2016年には『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』に闇の魔法使いゲラート・グリンデルバルドとして出演し、続編となる『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生(2018年)』にも同役にキャスティングされています。どうやらしばらくは悪役が続きそうですね。

最後に

これまで共演した俳優たちや一緒に仕事をしたスタッフたちからも、すこぶる評判の良いジョニー・デップ。彼の人となりは彼自身が選んできた作品そのものが表しているように、非常に多岐にわたっています。その一方で、自分がやりたいと思った役を選ぶという信念も一本筋が通っています。

カメレオン俳優という言葉もぴったり(実際『ランゴ(2011年)』ではカメレオンのランゴの声を担当)ですが、これからも常に共演者やスタッフ、そしてわれわれ映画ファンを驚かせてくれるクールでファニーなジョニーでいてほしいものです。

参考文献:『PIA VINTAGE COLLECTION#01 Johnny Depp』