ここでは、今なお精力的に活躍するイーストウッドの略歴やこれまで手がけてきた出演&監督作品の特徴や傾向、そして88歳を迎える2018年に公開される最新作『15時17分、パリ行き』に関する情報を網羅します。
目次
多彩な面を持つクリント・イーストウッド
イーストウッドは、1954年の『半魚人の逆襲』で端役として俳優デビュー。その4年後に放送開始となったテレビ西部劇シリーズ『ローハイド』でロディ・イェーツ役を演じ、お茶の間の人気者となります。その後イタリアに渡り『荒野の用心棒』に出演して国際的知名度を上げ、『ダーティハリー』で一気にスターの座を確立しました。
さらに『恐怖のメロディ(1972年)』で監督業にも進出。『許されざる者(1993年)』と『ミリオン・ダラー・ベイビー(2005年)』でアカデミー作品及び監督賞を受賞しました。音楽にも造詣が深く、自身の監督作で作曲や主題歌を担当しています。
イーストウッド作品の特徴・傾向とは?
これまでイーストウッドが俳優として出演したり監督として手がけてきた作品には、いくつかの共通点があります。傍目にはジャンルやテーマがバラバラのようでも、登場人物の背景や演出に、ある通底する要素が見え隠れしているのです。
法の秩序は絶対か?二転三転する善悪の価値観
初期の西部劇『奴らを高く吊るせ!(1968年)』では、牛泥棒に襲われるも九死に一生を得た男(イーストウッド)が、復讐のために保安官となり泥棒たちを追います。ところが泥棒たちにも悪事に走るだけの事情があることが分かり、保安官としての職務を全うするか苦悩するのです。こうした、法律によって人を裁くことの正当性や、善悪の価値観を問うといったテーマは、後々のイーストウッド作品でも見受けられます。
『ダーティハリー2(1974年)』では、法で裁けなかった悪人を裏で始末する警官グループとイーストウッド扮するハリー・キャラハン刑事の対決を描き、またアカデミー賞受賞作『許されざる者』では、元殺し屋の初老ガンマンや町を牛耳る保安官ら登場人物の行動が、善か悪かを観客に問いかけます。
過去に抱えたトラウマを持ち続ける主人公
また、イーストウッド監督作では「過去に負った苦悩やトラウマに苦しめられる」人物が主人公になることも多いです。
例えば『父親たちの星条旗(2006年)』では、第二次大戦時の硫黄島戦の英雄に祭り上げられた兵士たちの秘められた"心の傷"を描き、『グラン・トリノ(2009年)』では、イーストウッド演じる老人が、朝鮮戦争時の兵役行為を罪と考え、神父に贖罪を求めます。
そして『アメリカン・スナイパー(2016年)』では、イラク戦争でスゴ腕の狙撃兵として恐れられるも、戦地に赴くごとにPTSDに蝕まれていく男の苦悩が描かれます。
タフな男役が多い反面、女性に痛めつけられる役も多い?
『ダーティハリー』シリーズなどから、タフな男の役をこなすイメージのあるイーストウッド。ですがその一方で、女性に襲われたり痛めつけられたりする役も多かったりします。
例えば『白い肌の異常な夜(1971年)』では、イーストウッド演じるアメリカ南北戦争の兵士が、男子禁制の女学院の教師や生徒たちに拘束・支配されてしまい、脱走を試みます。監督デビュー作『恐怖のメロディ』でも、女性ストーカーにつきまとわれるラジオDJの恐怖を描いています。さらに『ルーキー(1991年)』では、ベテラン刑事に扮したイーストウッドが、イスに拘束されて犯人側の女性に陵辱される様子をビデオに撮られるという衝撃シーンも。
実生活では数々の女性との恋愛遍歴を持つイーストウッドですが、映画にはそんな彼の趣味や性癖が露わになっているのかもしれません。
平均撮影日数1か月!作品を量産できる秘訣は?
監督として数々の傑作を手がけてきたイーストウッドですが、特に2000年代に入って以降は、ほぼ1年に1本のペースで作品を発表しています。
そこまで作品を量産できる秘訣に、"早撮り"があります。イーストウッドは「何度もテイクを重ねると、次第に演技がパターン化する」といった理由から、リハーサルをせずにワンテイク撮影を行います。そうなると当然撮影日数も短くなり、『許されざる者』は39日、『ミリオン・ダラー・ベイビー』は37日という驚異的なスピードで撮了しています。
もっとも、そうした撮影方法に戸惑う俳優も。自身が納得する演技ができるまでリテイクを求めることで知られるレオナルド・ディカプリオは、『J・エドガー(2012年)』で主演を務めた際、イーストウッドのワンテイク撮影に終始慣れることはなかったとか。
子どもたちも優れた才能の持ち主!
イーストウッドは、売れない若手時代に最初の結婚をしたのを皮切りに、入籍未入籍問わず計5人の女性との交際をしてきたと言われています。そんな彼の子どもたちも、相次いでショービズ界で活躍中です。
カイル・イーストウッド
カイル・イーストウッドInstagramアカウント(@kyleeastwood)より
イーストウッドが最初の結婚でもうけた長男カイルは、父が主演を務めた『アウトロー』や『ブロンコ・ビリー(1980年)』、『センチメンタル・アドベンチャー(1983年)』で子役として出演。その後ジャズミュージシャンとなり、『硫黄島からの手紙(2006年)』や『グラン・トリノ』などで音楽提供をしています。
アリソン・イーストウッド
アリソン・イーストウッドInstagramアカウント(@aliwood72)より
カイルの妹アリソンは女優として『タイトロープ(1984年)』や『真夜中のサバナ(1998年)』といった父の監督・主演作に出演。さらには、『レールズ&タイズ(2007年)』で監督デビューもしています。
スコット・イーストウッド
スコット・イーストウッド公式Instagramアカウント(@scotteastwood)より
イーストウッドと客室乗務員の女性との間に産まれた(未入籍)スコットも俳優として活躍中。若かりし頃の父を彷彿とさせるルックスが特徴的で、2018年公開の『パシフィック・リム: アップライジング』にも出演するなど、今注目のスターとなっています。
他にも、テレビドラマシリーズ『ヒーローズ・リボーン』に出演するフランチェスカ・イーストウッドなど、イーストウッドの子どもたちは各方面でスキルを発揮しています。
2018年公開の最新作『15時17分、パリ行き』とは
そして2018年3月には、イーストウッド監督の最新作『15時17分、パリ行き』が公開されます。これは2015年に発生した、アムステルダム発パリ行きの高速列車内でのイスラム過激派によるテロ事件を映画化したものです。
アメリカ兵とオレゴン州兵、そして2人の幼馴染である大学生の3人がテロ犯人に立ち向かうという内容ですが、この3人を、なんと当事者本人が演じたとして大きな話題となっています。この作品では他にも、事件時に実際に列車に乗っていた客もエキストラとして出演しています。
こうした事件当事者を起用するキャスティングは『ハドソン川の奇跡(2016年)』同様、リアリティを追求するイーストウッドならではと言えるでしょう。
今後のイーストウッド監督作は?
『15時17分、パリ行き』に続いて、1937年の『スタア誕生』の4度目のリメイクに着手するのではと言われています。これはハリウッド界を舞台とした男女スターの恋を描いたもので、イーストウッドの次回作として何度となく製作候補に挙がっていた作品です。
実現すればイーストウッドのキャリアとしては初のリメイク作品となるだけに、続報に期待したいところです。
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