ハイテクスパイガジェットや洒落たスーツ、スタイリッシュなアクションにコメディタッチなやりとりなど、見どころがたくさんあり、過激で少しグロテスクな描写が多いにもかかわらず世界中で大人気な作品です。
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
『キングスマン』シリーズと言えば、挿入歌として使用される楽曲のセンス!「ここでこの曲使うの!?」と、一見アンマッチにも思える曲を大胆に各シーンにあててくる手腕には脱帽です。
今回は、『007』シリーズや『ミッション:インポッシブル』シリーズなどの有名スパイ映画シリーズに仲間入りしそうな勢いを見せる、『キングスマン』シリーズの凝りに凝ったサウンドトラックについてご紹介します。
『キングスマン』の劇中歌
物語中盤から終盤にかけ、舞台がイギリスからアメリカから移るにつれて、楽曲もしっかりイギリスのものとアメリカのものとを使い分けています。
Money for Nothing/Dire Straits
映画の冒頭で流れる"いかにもイギリス"な楽曲。70年代から90年代において活躍したイギリス人ロックバンド、Dire Straitsによる楽曲でコーラスにはイギリスを代表するミュージシャンの1人、Stingも参加しています。
Bonkers/Dizzee Rascal
キングスマンのエージェントになる前、父を亡くして自堕落な生活を送っていたエグジーが、バーで喧嘩を売られたギャングの車を盗むシーンで使用されています。イギリスの若者が好んで聴くヒップホップをチョイスすることで、エグジーがまだヤンチャをしていたころの心象風景がうまく表現されています。
ディジー・ラスカルはイギリスを代表するヒップホップアーティストの1人であり、来日公演も行ったことがあるほど、日本での知名度もあります。ヒップホップアーティストでありながら他ジャンルのアーティストとのコラボが多く、その活動の幅はイギリスに留まらずアメリカにまでも及んでいます。
Freebird/Lynyrd Skynyrd
Lynyrd Skynyrd on MV YouTubeチャンネルより
『キングスマン』において最も刺激的でかっこいいシーンといえば、アメリカの田舎にある教会にて、ヴァレンタインによって暴走させられたハリーが戦闘を行うシーン。
約4分間休むことなく繰り広げられるアドレナリン大放出のこちらのシーン。それに完全にマッチしているのが、同じく4分にも及ぶギターソロが含まれるアメリカのサザンロックバンド、Lynyrd Skynyrdによる名曲「Freebird」。1970年代の楽曲ですが現在もアメリカ南部では知らない人はいないというくらい有名な曲です。
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
シーンがアメリカの田舎町に移ったことで、楽曲までもがアメリカ南部のカラッとした空気感が伝わるものに変化しています。「Freebird」は7分にも及ぶ楽曲で前半はカントリー・ミュージックの要素を感じさせながらも、後半の長いギターソロに向けて曲調が激しくなっていきます。
「Freebird」はこのシーンのためにあるんじゃないかと思ってしまうほどぴったりで、『キングスマン』を観た後にこの曲を聴くといつも"無双するハリー"を思い出してしまいます。
Pomp and Circumstance/Sir Edward Elgar
ヴァレンタインの秘密基地に潜入した後のクライマックスシーン、あのグロテスクでありながら美しいシーンで使用されるのは日本人にも「威風堂々」として馴染みの深い「Pomp and Circumstance」です。
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
イギリス人であるキングスマンが世界を救うという意味を込めてか、こちらの楽曲はもちろんイギリスが生んだもの。ちなみに作曲者のSir Edward Elgarは初代準男爵の肩書を持っています。
Give It Up - KC & The Sunshine Band
こちらもまた物語終盤でヴァレンタインがある装置を起動してから流れ出す、クライマックスシーンには似つかわしくない能天気なディスコチューン。
こちらはアメリカのアーティストですが、「Give it Up」を1983年にリリースしたときに売り上げ1位を獲得したのはなんとイギリス。イギリス人に愛されるディスコナンバーなのです!
『キングスマン:ゴールデン・サークル』の劇中歌
『〜ゴールデンサークル』ではイギリスのキングスマン本部が危機的状況に陥り、同盟関係であるアメリカのスパイ組織"ステイツマン"が登場。
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
また敵のポピーは1950年代のアメリカに夢中で、本拠地は古き良きアメリカを色濃く反映したものとなっています。それに合わせる形で、劇中の挿入歌も前作より明らかに"アメリカ色"が濃くなった印象。
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
Let's Go Crazy/Prince and The Revolution
今作の舞台の多くがアメリカで繰り広げられるため、最初のイギリスでの戦闘シーンにも1作目とは打って変わってアメリカの大スター、今は亡きPrince and The Revolutionの楽曲を使用しています。
Prince and The Revolutionは全盛期であった1980年代から現在に至るまで、アメリカで最も有名なアーティストの1人でもあります。「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のシンガー」のみならず、「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100組のアーティスト」や「ローリング・ストーン誌の選ぶ歴史上最も偉大な100人のギタリスト」において上位を獲得しています。
Annie's Song/John Denver
ケンタッキー州の小さなバーで、エグジーがスパイの嗜みであるマティーニを注文すると、"ウチではこれがマティーニによ"とバーボンのストレートを出されるシーンで、お店のBGMとして流れているのがJohn Denverの「Annie's Song」です。
マティーニを注文してバーボンを出されるのも、ゆったりとしたカントリーミュージックが流れているのも、まさに田舎のアメリカならでは。
ちなみに今作において重要な楽曲となる「Take Me Home, Country Roads」は様々なアーティストが歌ってきましたが、ジョン・デンバーもその1人であり非常に有名です。
John Denver VEVO公式チャンネルより
Saturday Night's Alright for Fighting/Elton John
今作において欠かせないキャラクターと言えば、悪党ポピーに誘拐されてしまったアメリカの大スター、Elton John。なんと本人が本人役で出演しています。
彼の楽曲も劇中で大活躍。この「Saturday Night's Alright for Fighting」は映画の終盤、キングスマン一行がポピーのアジトに乗り込んだ際に流れます。スピード感溢れるアメリカン・ロックンロールはスパイガジェットを駆使した戦闘シーンにぴったり!
ちなみにアジトに誘拐してしまうほどのElton Johnファンであるポピーですが、所有するロボット犬べニーとジェットは1973年リリースのアルバム「Goodbye Yellow Brick Road」に収録された「Bennie & The Jets」にちなんで名付けられました。
Rocket Man/Elton John
こちらもElton Johnの名曲。ハリーとロボット犬の戦闘シーンにおいて流れます。ネタバレになってしまうので詳しくは書けませんが、絶妙なタイミングで流れる「Rocket Man」に思わずクスッと笑ってしまうシーンになっています。
The BossHoss - Worn Up
前作の「Freebird」の役割を果たす、クライマックス戦闘シーンに使用されたのは「Word Up!」です。こちらの楽曲、元はアメリカのファンクバンド、キャメオが1986年にリリースしたもので、当時大ヒットしたんだそう。
Cameo VEVO公式チャンネルより
今作で使用されたキャメオの原曲よりもカントリーやブルーグラス調のアレンジを加えたバージョンはなんと、ドイツのバンドThe BossHossによるカバー!
国は違えど、カウボーイ好きの彼らのプレイスタイルはアメリカ人カントリーミュージシャン顔負け。これまでにも、ヒットしたポップスやヒップホップをカントリーアレンジし、カバーしています。
The BossHossのカントリーアレンジはエージェント、ウイスキー繰り出す投げ縄の妙技にマッチしていますね。
前作は英国紳士としてのキングスマンを『威風堂々』などの音楽で表現、今回はカウボーイなステイツマンがうまく音楽で表現されています。
『キングスマン』の続編やスピンオフ情報
現在マーベル・シネマティック・ユニバースやDCエクステンデッド・ユニバースなど、同じ世界観のもとで多くの映画を制作するスタイルが流行中のハリウッド。
大ヒットアクション映画『ジョン・ウィック』もユニバース化を発表し、ますます流行が大きくなる中で、『キングスマン』もユニバース化するのではと噂されています。
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
米サイトCinema Blendによると、監督のマシュー・ヴォーンは次回作に意欲的で、エグジーやハリーについてはもちろん、『ゴールデン・サークル』で初登場であったステイツマンの面々の新たな活躍を今までとは違った形で描きたいとコメントしているそうです。
また、ScreenRantでは『キングスマン』シリーズでVFXのスーパーバイザーを務めるアンガス・ビッカートン氏がBlu-rayの発売(日本での発売は未定)時に
“We’ve had the briefest of conversations with Matthew [Vaughn] about it…he’s got plans.”
ScreenRant
とコメントしています。
チャニング・テイタムが演じるエージェント・テキーラを中心としたスピンオフを作る噂もあるので今後もおしゃれで痛快なスパイ映画『キングスマン』シリーズを観ることができそうです!
キングスマン映画公式Instagramアカウント(@kingsmanmovie)より
最新作『キングスマン:ゴールデン・サークル』は現在全国で大ヒット上映中!まだ観てない方も、もう一度観たい方も、ぜひ映像だけでなく音楽の側面からも楽しんでくださいね。
参考:Kingsman: The Secret Service (2014)Soundtracks、Kingsman: The Golden Circle (soundtrack)、NEWS What Kingsman 3 Could Be About, According To Matthew Vaughn、Matthew Vaughn Is Planning Kingsman 3
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