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「ハウルの動く城」を深く理解するためのトリビア集!原作との違いは?

 

「ハウルの動く城」は2004年に放映され、10年以上も人気が続く名作となっています。魔法も冒険も恋愛も登場するドラマ性の高さからジブリ作品の中でも熱狂的なファンが多い作品になっています。

そんなハウルの動く城ですが、トリビアや裏設定も満載です。実は原作があるだけでなく、映画化に際して加えられた変更点なども多いのです。今回は知ってなるほどと思えるトリビアや裏設定をまとめました。「ハウル」を深く理解するために必読の内容となっていますので、是非最後まで読んでみてください!

1.ハウルの動く城には原作がある!

ハウルの動く城の原作になっているのが『魔法使いハウルと火の悪魔』です。イギリスの作家ダイアナ・ウィン・ジョーンズのファンタジー小説で、1986年に発表され1997年に日本語訳が登場しています。ハウルの動く城と同じ世界を舞台に、ソフィーとハウルが登場する続編小説も存在します。3巻はハウルの動く城が放映された4年後の2008年に発表されています。

原作のダイアナ・ウィン・ジョーンズは宮崎駿監督のファンでした。『指輪物語』のJ・R・トールキンや『ナルニア国物語』のC・S・ルイスに師事したこともあり、魔法を描いたファンタジー作品を多数発表しています。

ソフィーの設定はダイアナさん自身の体験から生み出された

ソフィーが老婆になるという設定は、ダイアナさんが突如牛乳アレルギーになり、体が思うように動くかなくなるという体験から誕生しました。読売新聞に掲載されたインタビューに誕生の経緯などもまとめられています。

・「ハウル」原作者 ダイアナ・ウィン・ジョーンズさんに聞く—前編(読売新聞、2004年10月5日、YOMIURI ONLINE > エンタメ > ジブリをいっぱい > 100人のジブリ)

https://web.archive.org/web/20120628233953/http://www.yomiuri.co.jp/entertainment/ghibli/cnt_interview_diana.htm

ダイアナさんは多くのファンに惜しまれながら2011年に死去しています。76歳でした。



2.原作と映画では違いが多い!

ハウルの動く城は原作と映画では多くの違いがあります。これは原作のダイアナさんが宮崎駿監督に「ハウルの性格を変えないように」という注文だけを行い、監督が自分の表現や解釈に基づいて作品を制作したためです。原作と映画の主な違いをまとめてみました。

ハウルの城はもともと西洋で一般的にイメージされるような城が浮遊して移動するという描写がありました。スチームパンク風のデザインで歩く城というのは映画化する際の大きな変更点の一つで、ビジュアル面でもインパクトを与える内容になっています。映画と原作の大きな違いの一つが、原作は戦争のシーンがなかった点です。原作では戦争は起こっておらず、荒地の魔女を恐れて逃げるハウルが、最終的に荒地の魔女に勝利することでハッピーエンドを迎えます。映画では荒地の魔女と仲良くハッピーエンドを迎えますが、原作ではハウルとの敵対関係が続いたことになります。戦争が加わったのは宮崎駿監督が「戦火の恋」を描きたかったためと言われています。

カカシのカブとサリバンも原作では...?

カカシのカブは愛らしいとぼけたイメージですが、原作では恐ろしい存在としてソフィーから避けられています。戦争という恐怖のイメージを引き立たせるためか、荒地の魔女のイメージやカブのイメージも大きく変えられているのがわかります。実は王宮の魔女であるサリバンも原作では女性ではなく、ハウルの同期の男性でした。原作では荒地の魔女に敗北している状態になっていて、王宮側はサリバンを上回る才能を持ったハウルに荒地の魔女を退治させようと躍起になっている状態なのです。動く城のデザインや数々の変更について原作者のダイアナは好意的に受けとめていて、映画の感想を「とても素晴らしかった」と表現しています。

3.キャラクターに秘められたトリビア&裏設定

ハウルの動く城の魅力の一つが生き生きとしたキャラクターたちですが、実はさまざまな裏設定などがあります。原作で設定されていたものが深く言及されていないものや、映画で付け加えられた設定などオリジナル要素もあるのです。物語に重要な影響があるもののあえて隠された情報もあるため、トリビアや裏設定を知っているとより映画を楽しめます。

ソフィーは「生命を吹き込む魔法」が使える?!

実はソフィーは魔法の力を持っています。原作でも言及がされていて「生命を吹き込む魔法」が使えるのです。原作でも最初は無自覚でしたが、映画では最後まで本人に自覚があるかどうかも言及されない状態になっています。そのため、映画ではソフィーが助けようとした人が奇跡的に助かるといった描写が多くなっています。

たとえば、カカシのカブにキスをして呪いを解いたり、死に瀕したハウルとカルシファーを助けたシーンは、魔法などの奇跡がなければ説明がつかない状態になります。宮崎駿監督は魔法の存在をあえてぼかし、魔法使いではなく普通の女の子が冒険をする物語にすることで、自分自身がどう意志を持つことができるかで物事が変わるというメッセージを込めているのです。

ソフィーにかけられた呪いも実は...

ソフィーにかけられた呪いの設定にも裏設定があります。実は、原作ではハウルが出会って早々にソフィーの呪いを解いてしまいます。しかし、ソフィーが自分ができない人間だというコンプレックスを持っていて、老女の姿をうけいれてしまっていたがために「自己暗示で老婆になってしまう」状態になってしまうのです。

映画では呪いはハウルが解くわけではなく、ソフィーの感情が動く時に若返ったり、より歳をとったりという描写になっています。これによって、ソフィーのもともと持つ魔法の力を無意識に使って呪いを弱めているのか、それとも人の心や意思が呪いよりも強いものなのかという解釈の余地を作っているのです。最後にソフィーにかけられた呪いが解ける理由が明確でないのも、宮崎駿監督の仕掛けの一つなのです。

ソフィーは自分に強いコンプレックスを抱いていて、映画の中でも「私なんか美しかったことなんて一度もないわ」と言う台詞にもその気持ちが良く出ています。ソフィーが自分のことをそうした存在だと思い込んでいるのは、童話などの物語で「兄弟姉妹の長男、長女が失敗し、末の弟や妹が成功する」というプロトタイプを盛り込んでいるからです。三匹の子豚などで有名ですね。原作ではソフィーが三姉妹の長女で自分が不出来な存在であると思い込んでいるという描写があります。映画では三姉妹の長女ではなく、姉妹のお姉さんという形になっているため原作と切り離され、劣等感が強い普通の少女として描かれています。

サリマンの従者の正体は?

原作から性別が変わってしまい、ハウルの同僚から師匠になったサリマン。荒地の魔女にのろいをかけてしまうなど力関係も大きく変わっていますが、王宮での暮らしぶりで注目するポイントがあります。サリマンの世話をしている金髪の少年がいますが、これは実はハウルの若い時の姿です。映画のサリマンは自分の元を去ったハウルを呼び戻したいと思っているだけでなく、溺愛しています。そのため、自分の世話役を魔法で作る際にハウルの若い時の姿を模しているのです。

ソフィーと一緒にさまざまな冒険を繰り広げるサリマンの犬、ヒンにはモデルが存在します。宮崎駿監督と親交のある押井守監督がモデルになっているのです。押井守監督はバセットハウンドという胴の長い犬が好きで、映画作品で度々登場させています。バセットハウンドの飼い主しか参加できないイベントを開催するほどの犬好きです。犬と言えば押井守監督のイメージで結びついた面があるのです。

4.ハウルにまつわるトリビアや裏設定を知ると凄い!

ハウルの動く城にはさまざまなトリビアや裏設定がありますが、特にハウルには多くの設定が盛り込まれています。設定が多い分、一度映画を見ただけではわかりにくい部分が存在するのもポイントです。ハウルのトリビアや裏設定も知っておくと更に映画を楽しむことができます。

なぜハウルの城はずっと移動しているのか

そもそも、なぜハウルの城が動くのか疑問に思ったことはないでしょうか。これは実は、ハウルが浮気性だからです。たくさんの女性を口説いてしまっているため、一つの場所にとどまっているとトラブルの元になってしまうのです。一方で、ハウルの城の中にたくさんのドアがあるのは女性を口説きに行くためという見方もできます。自分は口説きに行くけど逃げたいというのはなんとも困った性格です。荒地の魔女から逃げる、サリバンから逃げる意味もありますが、浮気性の部分を切り出してしまうとちょっと残念な感じに見えてしまいます。

ハウルが浮気性な理由

ハウルが浮気性であることにも理由があります。これはカルシファーに心臓をあげてしまったためです。心臓は心の象徴で、心臓をあげてしまったことでハウルは心理的に不安定な状態になってしまったのです。女性を口説くのは他人の心で自分を生めようとしているためと解釈することができます。作品ではハウルが心臓を食べるというデマがながれていますが、これもハウルの浮気性が原因です。女性を口説く、つまりハートを盗むという行為を繰り返していたため、いつの間にか心臓を食べるという噂に変化していったのです。ソフィーの帽子店のお針子たちが噂をしている「心臓を食べられた女性」マーサも、ハウルに口説かれた女性と推察できます。

ハウルはずっとソフィーを探していた?

ハウルの初登場はソフィーが兵隊に絡まれているシーンで、「やぁやぁごめんごめん、探したよ」というセリフから出会いが始まります。ほかの男性に絡まれている女性を助けるためのお決まりの口上にも聞こえますが、実はこのセリフにも深い意味が込められています。これは物語のクライマックスまで見てから、もう一度見直してわかる点です。ソフィーは物語のクライマックスでハウルを救うためにハウルの過去を覗き見ることになります。ソフィーはハウルの過去を知る中で、ハウルとカルシファーが契約する場面を目撃し、ハウルがカルシファーに心臓と命を与え、カルシファーは引き換えに魔力を与えたことを知るのです。カルシファーは元々炎の悪魔ではなく、地上に落ちて命を散らす運命を持った星の子でした。ハウルは星の子の持つ魔力を求めている面と、星の子の命を救いたいという優しさの両方を持っていて、それに魅かれ、生きたいと願ったカルシファーと契約をすることになったのです。しかし、お互いの命を結ぶ契約により、ハウルもカルシファーもどちらかが死ねば二人とも死ぬという状態にもなってしまったのです。その状況を知ったソフィーは二人を助けるとハウルとカルシファーに告げ、現代に戻ってきます。ハウルはカルシファーと契約した時からソフィーを知っていて、ずっと彼女を探し続けていたのです。運命の女性であるソフィーを探し続け、寂しさが埋まらない結果に浮気性になったと考えるのであればまた物語の解釈が広がります。同時に、ハウルの動く城が恋愛を描いたロマンチックな作品であることも伝わってくるのです。

まとめ

ハウルの動く城にはまだまだ数え切れないほどの設定やトリビアがあります。映画を見る時に想像を巡らせながら見ればどんどん楽しみが広がります。その奥深さがいまだに多くの人を魅了するポイントにもなっているのです。