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『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』をより楽しむ10のキーワード

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『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式Instagramアカウント(@thepostmovie)より

アメリカの賞レース、ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞は、映画の普及促進団体として最古の歴史を持つ「ナショナル・ボード・オブ・レビュー」が主催する映画賞。この映画賞で監督賞・主演女優賞・主演男優賞の3冠を早々に獲得し、2018年の第90回アカデミー賞では作品賞と主演女優賞にノミネートした『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』の日本公開がいよいよ迫ってまいりました!

主演のメリル・ストリープとトム・ハンクスは、ともにオスカー俳優。激動の時代を戦う複雑な人物像が名優たちの演技により、緊張感溢れる一層ドラマチックな作品へと仕上がっています。

3月30日(金)の日本公開に先駆け、スティーヴン・スピルバーグ監督の最新作となる本作をより楽しむための予備知識を10のキーワードからご紹介します!

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』作品概要


eigafan編集部 YouTubeチャンネルより

あらすじ

1971年。ニューヨーク・タイムズは、流出したアメリカ合衆国政府の最高機密文書の一部を一面トップで報道。それは国全体を揺るがす大スクープでした。米大統領ニクソンは、それに対して司法省に差し止め命令の訴訟を起こすことに。

そんな中、ワシントン・ポストも機密文書のコピーを入手。ニューヨーク・タイムズに訴訟が起き、記事を掲載すれば国家反逆罪で逮捕の可能性もある中で、編集主幹ベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)と社主キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)は記事の掲載を巡る選択を迫られます。



『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』10のキーワード

キーワード①「ペンタゴン・ペーパーズ」

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式Twitterアカウント(@pentagon_movie)より

本作の原題は「The Post」という邦題とはまったく違うタイトルがつけられています。では邦題に使われている「ペンタゴン・ペーパーズ」とは一体何なのでしょうか。「ペンタゴン・ペーパーズ」とは、ベトナム戦争を分析・記録したアメリカ国防総省の最高機密文書の通称のこと。

国防総省の安全保障問題担当次官補のジョン・セオドア・マクノートンが命じて、後に国務省軍政局長となるレスリー・ハワード・ゲルブを中心にまとめられました。ベトナム戦争の介入のきっかけとなった「トンキン湾事件」を中心とした極秘報告書で、正式名称は「History of U.S. Decision-Making Process on Viet Nam Policy, 1945-1968」。

この文書は、後にベトナム戦争におけるアメリカ軍撤退決断の遠因となった重要な機密文書だったのです。そこには、アメリカ政府が当時の戦況が芳しくないことを知りながらも、4政権に渡って国民に隠し続けて多くの兵士を戦地に送り出してきた事実が記されていました。

1971年、この文書の一部を入手したニューヨーク・タイムズがスクープとして報道し、国家を巻き込んだ裁判事件となりました。本作ではその一連の物語について描かれています。長らく国家機密として全てのページの閲覧は不可能でしたが、本作で描かれた1971年からちょうど40年後の2011年、それまで未公開だった2384ページを含む全7000ページの閲覧が可能となりました。

キーワード②「ベトナム戦争」

インドシナ戦争後に南北に分裂したベトナムで発生した「ベトナム戦争」。「宣戦布告なき戦争」と言われ、開戦日が明確ではありませんが一般的に1955年11月から始まったとされ、南ベトナムが崩壊した1975年4月30日に終結を迎えました。

当時は北と南に分裂したベトナムでの内戦でしたが、ソ連やアメリカをはじめとした各国の思惑が入り組んで世界中の国々に影響を及ぼしました。約20年という長い期間の中で、民間人450万人以上を含んだ600万人以上もの犠牲者を出した壮絶な戦争です。

表面的には北ベトナム対南ベトナム・アメリカという構図で語られることが多い戦争ですが、根底には北ベトナムを支援していたソ連と中国も巻き込んだ「資本主義」対「共産主義」の争いが隠されています。

キーワード③「トンキン湾事件」

「トンキン湾事件」は1964年8月、北ベトナム沖のトンキン湾で北ベトナム軍の哨戒艇がアメリカ海軍の駆逐艦に2発の魚雷を発射したという事件。この事件をきっかけに、アメリカ合衆国連邦政府は本格的にベトナム戦争に介入し、北爆を開始。戦争は更に激化の一途をたどります。後に本編でも描かれる「ペンタゴン・ペーパーズ」により、この事件の一部がアメリカ合衆国の仕組んだものだったことが判明します。

キーワード④「リチャード・ニクソン」

第37代アメリカ合衆国大統領。1969年に大統領に就任し、当時すでにベトナム戦争に対する反戦運動が激化していました。ニクソンは大統領は、アイゼンハワーが行った軍事援助からケネディの本格的な軍事介入、後任のジョンソンにより拡大・泥沼化されたベトナム戦争に終止符を打つべく「名誉ある撤退」を公約に掲げました。

そして過激な反戦活動やそこに対立する保守派も嫌う"サイレント・マジョリティ"の支持を集めることに成功し、彼は晴れて大統領に選ばれたのです。功績は麻薬取締局の設置やアメリカ環境保護局の設立、米中友好化など、功罪の明暗がはっきりと分かれている大統領です。

大統領の陰謀
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ダスティン・ホフマンとロバート・レッドフォードが共演した『大統領の陰謀(1976)』、オリバー・ストーン監督、アンソニー・ホプキンス主演による『ニクソン(1996)』をはじめ何作もの映画で取り上げられてきた、今なお人気の高い大統領です。

しかし、流出したペンタゴン・ペーパーの報道差し止めを求めてニューヨーク・タイムズを訴え、その直後に起こるウォーターゲート事件で、アメリカ史上初の大統領任期中の辞任という不名誉な経歴を手に入れることになります。

キーワード⑤「ニューヨーク・タイムズ」

真っ先にペンタゴン・ペーパーズのスクープを掲載したニューヨーク・タイムズ。1851年に高級新聞というスタイルで創刊した「ニューヨーク・タームズ」は、リベラルな論調で知られ、アメリカ合衆国内での発行部数は現在3位。地方紙でありながらウォール・ストリート・ジャーナルなどと並び、アメリカを代表する高級紙としての地位を確立しています。アメリカでは"The Times"と呼ばれています。

キーワード⑥「ワシントン・ポスト」

『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式Twitterアカウント(@pentagon_movie)より

ワシントン・ポストが1877年に創刊した「ワシントン・ポスト」。こちらも地方紙でありながら世界的影響力を持つ有名紙で、発行部数はアメリカ合衆国内で5位。1971年に夫の死後、妻キャサリン・グラハムが編集主幹を引き継ぎ、アメリカの主要紙では初の女性新聞発行人を生んだ新聞社です。アメリカでは、"The Times"と並び"The Post"と呼ばれ、本作の原題となっています。

作曲家ジョン・フィリップ・スーザが依頼され、1889年に作曲した行進曲『ワシントン・ポスト』は世界的に有名。昨年2017年には、まるで本作のテーマのような「暗闇の中では民主主義は死んでしまう」を新スローガンに掲げました。

キーワード⑦「ウーマン・リブ」

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『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』公式Instagramアカウント(@thepostmovie)より

「ウーマン・リブ」は1960年代後半にアメリカ合衆国で起こった女性解放運動のこと。"性"による役割分担に不満を持った高学歴女性や女子学生を中心に、性別や人種の平等を訴える活動が、当時ベトナム反戦運動や公民権運動に呼応するかのように盛んになりました。

女性の参政権運動のことを「第一波フェミニズム」、ウーマン・リブは「第二波フェミニズム」と呼ぶことも。女性参政権はアメリカが1920年、日本はそこから25年後の1945年に認められたのですが、1960年代後半から起きたウーマン・リブの活動は1970年代初頭には日本にも伝わりました。

そして1979年には国連総会を動かし、「女子差別撤廃条約」が採択、男女平等社会の推進に大きく貢献しています。そんな時代の風潮の中、ワシントン・ポスト社の社主であったキャサリン・グラハムは、女性たちの目には希望の星として映っていたはずです。

キーワード⑧「ウォーターゲート事件」

1972年6月17日、ワシントンD.C.のウォーターゲート・ビル内にある民主党全国委員会本部オフィスへ不法侵入し、盗聴器を設置した容疑で5人が逮捕されました。それに端を発し、ニクソン大統領を辞任へと追い込んだのがこの事件。実行犯グループは現場で逮捕されたものの、ニクソン大統領再選委員会ならびに大統領の側近がこの計画に関与していたことが明らかになり、政権を揺さぶる大スキャンダルへと発展しました。

本作で描かれている一連の出来事は1971年6月13日を皮切りに巻き起こりますが、その直後に起きるのがウォーターゲート事件。まさに激動の時代でした。

キーワード⑨「アメリカ合衆国憲法修正第1条」

本作で重要なテーマとなっているのが「アメリカ合衆国憲法修正第1条」です。

「連邦議会は、国教の樹立、あるいは宗教上の自由な活動を禁じる法律、言論、または報道の自由を制限する法律、ならびに人々が平穏に集会する権利、およびック痛の救済のために政府に請願する権利を制限する法律を制定してはならない」

本作で語られる「報道は統治者のためにあるのではない。国民のためにあるのだ」というメッセージは、近年世界中が抱える問題でもあります。

キーワード⑩「スティーブン・スピルバーグ」

Wishing a very happy birthday to the legendary Steven Spielberg. #ThePost

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スティーブン・スピルバーグは、『シンドラーのリスト(1994)』、『プライベート・ライアン(1998)』でアカデミー賞を受賞した言わずと知れた名監督です。

世界的ヒットメーカーのスピルバーグは、『ジョーズ(1975)』、『E.T.(1982)』、『ジュラシック・パーク(1993)』といった娯楽映画の一方で、『カラー・パープル(1985)』、『アミスタッド(1998)』、『戦火の馬(2012)』、『リンカーン(2013)』といった社会派ドラマも意欲的に撮り続けています。作中で描かれる自由・平等・平和というメッセージからもその人柄が窺えます。

デジタル化が進む映画界で、未だフィルムを愛する真の映画好きであるスピルバーグは実は、親日家。本作は、日本人にとって馴染みの薄い複雑な題材でしたが、スピルバーグによって緊迫感溢れるスリリングなドラマに仕上げられています。

最後に

映画『ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書』で、重要なキーワードを10個ご紹介いたしました。これだけ知っておけば本作をさらに楽しむことが出来るはず。

メリル・ストリープ演じるキャサリン・グラハムは、最初は常に自信のない"普通の主婦"でした。当時の男性ばかりの社会に身の置き場所は無く、軽んじられてることにコンプレックスとプレッシャーを抱く弱い女性が、人生をかけた選択を迫られることで、自我と社会正義に目覚めます。

本作によってアメリカで最も影響力のある女性として有名になり、後に自身の自伝でピューリッツァ賞を受賞。この映画は報道のあり方を問う一方で、1人の女性の成長ドラマとしても描かれています。是非、劇場でスリリングな1時間56分を体験してみてください!